第18話 幕間劇 幼馴染の独白

 スースースー。


 真っ暗なあたしの部屋に、静かな寝息だけが聞こえる。

 眠れないアタシは、ベッドの横に布団をしいて眠っているリコちゃんを見る。

 天使のような美しい寝顔だ。


 スースースー。


 流斗りゅうとには悪いけれど、こんな可愛らしくていい娘に嫌われるってのはつらい。

 けれどもやっぱり、自分の感情のおもむくままに流斗りゅうとに想いを伝えられるリコちゃんがうらやましいし、嫉妬していないと言ったらウソになる。


 流斗りゅうとの過去を、何もしらないで。


 あたしがものごごろがついたときから、流斗りゅうとは、1歳年上のこよりちゃんのことがずっと好きだった。

 何をするにも、こよりちゃんの後をくっついてまわっていた。


 あたしもこよりちゃんが大好きだから、あたしと流斗りゅうととこよりちゃんは、いっつも3人でいた。


 小学3年のとき、流斗りゅうとはリトルリーグに入った。あたしも、お父さんとお母さんにせがんてリトルリーグに入れてもらった。


 野球のルールなんてまったくしらないのに、流斗りゅうとと一緒にいたいがために、男の子にまじって練習をした。

 いつしか野球が楽しくなって、あたしはエースピッチャの流斗りゅうととバッテリーを組む。


 キャッチャーのことを『女房役』っていうけれども、チームメイトからは『夫婦』だってよくからかわれていた。流斗りゅうとはものすごく嫌がっていたけれど、あたしは、まんざらでもなかった。


 歳を重ねるにつれて、あたしの流斗りゅうとへの想いは、雪玉のようにどんどんとふくらんで、自分では抑えきれないくらい大きくなっていた。


 だけど流斗りゅうとは、いつまでたっても、こよりちゃんのことばかり見続けていた。

 3人の関係が大きく動いたのは、小学5年の春休みのこと。中学生になるこよりちゃんは、家庭の事情で引っ越すことになった。


 こよりちゃんとのお別れの日は、今でもよく覚えている。

 あたしは、こよりちゃんが引っ越しをする前日に、流斗りゅうとに、リトルリーグのグラウンドに来てとお願いした。告白をするためだ。


 結果なんて、最初からわかりきっている。


 だってあたしが指定した時間は、こよりちゃんが引っ越していく時間とワザと重ねていたんだもの。


 来るはずがない。そう思っていた。


 でも、流斗りゅうとは約束から1時間遅れで、目をまっかに腫らしてグラウンドにやってくると、


「こよりねーちゃんが死んじゃった。引っ越しのトラックが、交通事故にまきこまれて」


 って、うわごとのようにつぶやいた。



■次回予告

 おにぃとラブラブのいつもどおりの日常が戻ってくると思っていたリコだけど……?

 お楽しみに!!


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