第13話 美少女、ライバルのセンパイの家におじゃまする。

*今回は、ヤンデレ妹の視点でおとどけいたします。


 アタシは、茜子あかねこセンパイの腕にからみつきながら下校する。

 話題はさっきからずっと、ちっちゃい頃のおにぃの話だ。


「おねしょは、小三のころまでだったかな? だよね、流斗りゅうと

「そ、そんな昔のこと忘れたよ!!」

「んふ♪ 照れちゃってる? おにぃカワイイ♥」

「じゃあ、リコちゃん。あたしん家はこっちだから。また後でね」

「はぁい♪」


 アタシはかわいく返事をすると、茜子あかねこセンパイにからめた腕を解き、かわりにおにぃの腕にからみつく。


流斗りゅうとくん。リコちゃんがいないと寂しいだろうけど、今日だけは我慢してくれたまえ」

「な、なんだよそれ!」


 茜子あかねこセンパイは、おにぃの困った顔を満足そうに眺めると、頭の上で手をヒラヒラと振りながら帰路につく。


「まったく、茜子あかねこのやつ……」

「んふ♪ おにぃの秘密、たくさん聞けちゃった」


 アタシは、おにぃと一緒に家に帰ると、まっすぐ自分の部屋にかけこで、リュックに1泊分の下着と部屋着を詰め込む。

 でもって、リビングでくつろぐおにぃに話しかけた。


「じゃあね、おにぃ。寂しいと思うけど我慢してね♪」

「了解。女の子どうし、楽しんでくれよ」

「んふ♪ おにぃの子どもの頃のはなし、もっともっと聞いちゃおうっと」

「ほどほどにしといてくれよ……」


 帰り道で、すでに茜子あかねこセンパイに、ガッツリとちっちゃい頃のあれこれを暴露されたおにぃは、すでにグロッキー状態だ。


「でもまあ、それでリコと茜子あかねこが仲良くなってくれるなら、俺は嬉しいよ」


 やっぱりおにぃは優しい! 好き!! 大好き!!

 でも、裏返すと茜子あかねこセンパイとも仲良くしないと、おにぃの好感度を下げるって事になる。気をつけないと。


 アタシは、なんとも言えない複雑な感情を飲み込んで、


「じゃあ、おにぃ行ってきまーす」


 と、満面の笑顔で茜子あかねこセンパイの家という、戦場におもむいた。


 ・

 ・

 ・


 ここが、茜子あかねこセンパイのお家かぁ。

 アタシの家とおんなじ、三階建ての建売っぽい住宅だ。


 ピンポーン


 インタホンを押すと、ほどなく、茜子あかねこセンパイの声が聞こえてくる。


「早いね! リコちゃん。カギは開けてるから、そのまま入っちゃって」

「はぁい♪」


 アタシは言われるがまま、横開きの玄関のドアを開ける。すると、


「まぁ。まぁ。まぁ。あなたがリコちゃん? ホーントお人形さんみたいねー」


 パジャマ姿で、薄手のカーディガンを羽織っている40代くらいの女の人が、にこやかな笑顔でアタシを出迎えてくれた。茜子あかねこセンパイのおかあさん……かな?


「お母さん! 今日、体調悪いんだから横になっておかないと!!」 

「でも、せっかくお友達が来たのよ。それも流斗りゅうとちゃんの妹さんっていうじゃない♪ もうお母さん楽しみで楽しみで!」

「はいはいはい、わかりました! 今日は、あたしとリコちゃんで晩御飯作るから、お母さんはゆっくり休んで!!」

「まぁ。まぁ。まぁ。お客様を厨房に立たせるなんて申し訳ないわ……」


 アタシは、気配り全開の茜子あかねこセンパイのお母さんに、事情を説明する。


「おきづかいなく! 今日は茜子あかねこセンパイにお料理を教わりにきたんで!」

「まぁ。まぁ。まぁ。茜子あかねこが人様に料理を教えるだなんて! 明日は雪が降るんじゃあなくって?」

「もう! なによ、その言い草! いいから!! お母さんは横になってて!!」

「はい。はい。はい。わかりました。わかりました。ゆっくりしてね、リコちゃん」

「はい! 本当に、おかまいなく」


 アタシが答えると、茜子あかねこセンパイのお母さんは、少し咳き込みながら1階の部屋にもどっていった。


「ごめんねー、リコちゃん! とりあえず荷物、アタシの部屋に置いてこっか!!」


 そう言って、茜子あかねこセンパイはアタシの手を引いて階段を登っていった。


 ……茜子あかねこセンパイのお母さん、病気なんだ。 

 アタシは、茜子あかねこセンパイの料理が上手な理由を、それとなく察した。


■次回予告

 家での茜子あかねこセンパイを見て複雑な心境になったリコ。

 次回、リコと茜子あかねこセンパイが一緒にお風呂に入って…………お楽しみに!!


――――――――――――――――――――――――――――


 最後までお読みいただきありがとうございます。

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