第10話 俺、義妹をガッツリへこませる。
「じゃあリコ、料理当番よろしくな」
「まかせて! 愛情いっぱいのオムライスを作るから!」
「……あ、ああ」
俺たち兄妹の両親は新婚旅行で絶賛紛争地に滞在中だ。
なもんだから、家事はふたりで分担している。
洗濯はリコ。(さすがに俺がリコの下着を洗ったり干したりするのははばかれる)
掃除は、リビングと風呂と玄関が俺。トイレはリコ。自室はそれぞれ自分でやる。
そしてご飯は、朝飯と昼食(弁当)が俺、夕食はリコが担当をしている。
なんだけれども、リコの料理には少々問題があった。
世界中の紛争地を放浪しているカメラマンの親父のせいで、ほぼほぼ一人暮らしだった俺とは違い、リコは家事ど素人だった。
なかでも料理は壊滅的で、初めて食べたオムライスは、黒焦げでタマゴの殻まで全部入りの、なんとも歯ごたえのあるシロモノだった。
それに比べると、今はずいぶん上達した。ただ……
「はぃ。おにぃが大好きなリコ特製のオムライスだよ♥」
エプロン姿のリコが、満面の笑顔でタマゴのうえにケチャップで『おにぃLOVE』と書かれてあるオムライスを俺の前に置く。
「いだだきます」
俺はスプーンを持ってオムライスをすくい取ると、そのまま口へと運ぶ。
リコは俺の一挙手一投足を、一切のまばたきをせずに「じぃぃぃぃ」と喰いいるように見つめてる。
「どう? どう?! どう!?! どう?!?! どう?!?!?」
俺は口中のオムライスをゴクンと飲み込むと、毎度決まり切った感想を言う。
「うん、おいしいよ!!」
「やったぁ♪ おにぃ、ごほうびになでなでしてぇ♥」
確かに、リコのオムライスは美味しい。初めての頃に比べると、ずいぶんと上達した。ただ……
「明日も、とびきり美味しいオムライスを作るからね♪」
同居初日に、リコにスキな食べ物を『オムライス』と答えてからというもの、リコはただひたすら愚直にオムライスを作りづづけている。
さすがに、毎日毎日オムライスだと飽きてしまう。
とはいえ……一生懸命なリコを見ていると、なかなかそのことを言い出せないでいた。
ピンポーン!
突然、リビングでインタホンの呼び出し音が鳴る。
「はいはーい♪」
リコはゴキゲンでインタホンに駆け寄るが、玄関にいる人物を確認するとあからさまに不機嫌な声になる。
「は?
『肉じゃががあまったからさ、おすそ分けに来たの』
「え? 肉じゃが?? すぐ行く!!」
俺は、インタホン越しの
幼少の頃、俺はちょくちょく、
肉じゃがは、
俺は足早に玄関に向かい、ガチャリとドアを開けた。
目の前に、両手に鍋をもった
「おじゃましまーす」
「温めなおしたいから、キッチン借りるね!」
鍋をIHコンロにかけると、キッチンには、肉じゃがの甘い香りが漂ってくる。
「はい。
「これこれ!
リコも、丁寧に面取りをされたじゃがいもと、出汁がよく染みた牛肉をつまみあげると、おずおずと口に運ぶ。
「なにこれ!? めっちゃ美味しい!!」
リコが目をくりくりとさせて驚く。
「リコちゃんにも気に入ってもらえてよかった! ねぇ、
「ああ! 最高に美味しいよ! なんなら今まででイチバン美味しくなったくらいだ!!」
「本当? よかったぁ。頑張って作った甲斐があったよ」
「え?? ひょっとして、この肉じゃが、
「そ。最近は母さんと一緒に料理してるから。野球部の合宿で作ったときも大評判だったよ!」
「マジかよ。
そこまで言ったときだった。
「は? けっこん?? だれが?!? だれと?!?!」
リコが禍々しいオーラを放っている。
「……じゃ、じゃあ、あたしは帰るね。お鍋を返すのはいつになってもいいから」
身の危険を感じたのだろう、
「くやしい……くやしい……でも、めっちゃ美味しい……ううう……くやしいよぅ」
あまりの悔しさに、リコは泣きじゃくりながら、それでも
なるほど、これが
■次回予告
手料理勝負に大敗北を喫したリコがとった行動とは……?
お楽しみに!!
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