ただの横断歩道だよね?
夏川
リバーシのように周りに同調する?しない。
ただの横断歩道だよね?
「ミーンミンミンミンミーン。」
セミが鳴いている。今日は暑いな。
そんなことを思いながら僕は信号を待っていた。まだ青に変わる気配はない。
「ふわぁぁ〜」
と軽く欠伸をして退屈さを信号機にアピールするが効果はでない。つまんねぇの。
そんな退屈凌ぎを考えてる僕の横に1人、スーツを着ているスラッと背の高い男性が。
会社員だろうか?
そんなことを思っていると2人目が来た。買い物袋を持っているので主婦のようだ。
そんな感じで時間の流れに比例して人が増えてきた。右に。左に。そして、後ろにも。
意図してなのか、はたまた偶然か、僕の周りには囲いが。
おいおいやめてくれよ、僕は人混みが苦手なんだ。
いつもは人通りの少ない道を行くのだが、残念なことに今日から工事を始めるそうなので仕方なく、この道を通る。
そんな僕の不満をよそに、人がたくさん来たのでそろそろだと感じたのか信号機は合図を出した。それに伴い僕らは歩き出した。
順調に歩き出したかのように思えたのだが、
僕は気づいてしまった。
僕と周りとで歩幅がまるで噛み合わない。彼らは僕と違う価値観をお持ちのようだ。
苦手だ。僕は周りに合わせることが苦手なのだ。
彼らから逃げるように端へ向かう。
しかし、そこには先客が…
どうやら僕は無理にでも自分の意見を押し殺して周りに合わせるしかないようだ。この横断歩道を渡り終えるまで。。。
渡り終えた頃には、僕の身体は疲れ果てていた。必死だったのだろう。
そんな僕の前にいつの間にか長くてモコモコした白髭を貯えた老人が立っていた。
正直、気味が悪い。だが、疲れているので全力で走って逃げるという選択肢はない。
どうしたものかと悩んでいると、
「お疲れ様」
え?喋りかけてくるの?というか誰ですか?
と困惑している僕を差し置いて、老人は続けざまにこう言った
「君が歩いていたのはただの横断歩道ではなく、人生の縮図だよ。」と。
その後、眩い光とともに綿飴が溶ける様子を再現したかの如くトレードマークの白髭が消えてゆき、次に体、頭の順に。
数秒のうちに老人はすっかり姿を消してしまった。
背筋が凍った。今日の猛暑に反比例して。
ただの横断歩道だよね? 夏川 @Abnomahou
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