第2話 トロリーバス

 北京ペキンに着いたならば、交通手段はトロリーバスだ。

 路地は緩やかに曲がっている。その緩やかに曲がっている先は暗くなっているが、そこに細かい網目のフェンスが張ってある。フェンスの色も灰色だし、あまりに目が細かいのでそれだけで暗く見える。

 そこまで歩いて行ってみる。

 すると、そこにたくさんの人たちが群れているのがわかった。

 みんな灰色の影のような人たちだ。

 その人たちが動き出す。いっせいに一方向に、一か所に向かって流れ出す。

 トロリーバスが着いたのだ。

 どこへ行くトロリーかはわからない。でも、要は、乗るか乗らないかだ。

 乗らないならば、私はこの灰色の街角にずっと残っているしかない。

 だから、私も、灰色の影たちといっしょにトロリーバスに吸い込まれて、その車上の客となった。

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