第53話 遅れてきた婚約
「和也くん、ファーストクラスって凄いね、こんな凄いシートなんだ」
実は俺も驚いている。
此処迄凄いなんて思わなかったな。
凄く豪華なリクライングシート、それに近い。
目の前にモニターがあって映画も見られるみたいだ。
「それじゃ、美沙姉窓側の方に座って」
「えっ、窓側は和也くんが座りなよ」
「俺は何回か飛行機に乗ったことがあるから、美沙姉が景色を楽しんで」
「そう……それならお言葉に甘えようかな?」
「うん、そうして」
エコノミーと違って凄く快適だった。
美沙姉と同じ映画を選び一緒に見た。
これはまるで、映画館でデートしているみたいだ。
映画の内容より美沙姉の表情が変わるのを見るのに一生懸命になり内容は覚えていないけどね。
美沙姉もこちらをチラチラ見ていたから案外同じかも知れない。
◆◆◆
「此処迄くると、流石に都心だね」
「そうだね」
しみな村から来たから、空港その物が凄く都会に感じる。
「折角だから、少し見て行かない?」
「うん、凄く色々なお店があるんだね。面白そう」
「それじゃ、色々見て回ろうか?」
「そうだね」
何が見たいという訳じゃないけど……二人して色々見て回った。
俺的には美沙姉に色々おねだりして欲しかったんだけど……
「美沙姉、欲しい物とか無いの?」
「見るだけで充分楽しいし、私が着てもね」
「美沙姉は綺麗だから、なんでも似合うと思うよ」
「そうかな?」
「そうだ、美沙姉の財布、結構傷んでいるから財布買わない?」
「お財布、確かに痛んでいるかも……それじゃ、お財布だけ買って貰おうかな。 さっき良さそうなのがあったの。それ買って貰って良い?」
「それじゃ、それを買いに行こうか?」
「うん」
美沙姉と一緒にお店に行ったんだけど……
「美沙姉、本当にこれが良いの?」
「うん、凄く丈夫だって前に聞いた事があるの……駄目かな?」
「美沙姉がこれが良いって言うなら良いよ」
もう少し豪華な物をと思っていたんだけど、美沙姉が選んだのは吉村カバンのフォーターだった。
「うん、これが良い」
「それじゃ、それにしようかな?」
「うん、ありがとう」
美沙姉らしいって言えば美沙姉らしいんだけど……もう少し豪華な物を考えていたんだけどな……まぁ美沙姉が喜んでいるから良いか。
「美沙姉、そんなに抱えていると転んじゃうよ」
「転んでも良いよ」
嬉しそうに財布の包を抱えている。
本当に買ってあげて良かったと思う。
「だけど、美沙姉、これから他にも買うんだからね」
「えっ、和也くん他にも買うの?」
「うん、これから水着を買いに行こうと思うんだ」
空港って凄く便利だ。
何でも売っているんだから。
「和也くん、水着? 今の時期は時期外れだから、水着買っても泳げないよ?」
「いいから、いいから水着売り場に行ってみようよ」
「あっ……鼻の下が伸びている」
「えっ……」
「嘘冗談! だけど、和也くん、私の水着姿みたいんだ……それなら良いよ? 行こうか?」
「うん」
二人して水着を扱っているお店に行った。
海外向けなのか、時期がずれていても空港は水着が売っているから便利だ。
お店に来た。
「凄いね、時期外れでも水着が売っているんだ」
「本当に、凄いね、ゴメン美沙姉、ちょっとトイレに行ってくるから水着を先に見ていてくれるかな?」
「解った……だけど、すぐに戻ってきてね」
「うん」
美沙姉と離れて、俺は急ぎ違うお店に行った。
あらかじめ予約していた物を受け取り、すぐに美沙姉の元に戻った。
「随分、時間が掛かったね」
「少しトイレが混んでいてね」
「それで、水着なんだけど、こんなのどうかな? 和也くん、こう言うの好きでしょう?」
オレンジのビキニでハイレグになっている。
「うん、確かに美沙姉に似あいそうだね、それにしようか?」
「だけど、この時期海に入れないし、そうか、温泉で水着着用の場所とかあるのかな?」
「うん……そうだよ」
「なんか怪しいな……まぁいいや。和也くんが見たいなら夜でも着てあげるよ」
「ありがとう……それじゃ行こうか?」
「うん」
タクシーで移動するつもりだったけど、美沙姉が電車に乗りたいっていうから電車に乗って渋谷に移動した。
◆◆◆
「え~と和也くん、なんで渋谷なのかな? しかも2泊もするんだよね?」
「まぁね、もう結構遅い時間だから目的地に行こうか?」
「何処に行くの?」
「内緒」
美沙姉と一緒に手を繋ぎ歩きだすと美沙姉の顔が赤くなっていった。
「和也くん、こういう所に来たかったんだ!ラブホテルって言うんだよね?最初から言ってくれれば良いのに! お姉ちゃん和也くんとなら喜んで来るよ」
「確かにそうだけど、ちょっと違うかな、ラブホテルと言えばラブホテルなんだけどちょっと特殊なんだよ」
「へぇ~どう違うの?」
「それはついてからのお楽しみ」
暫く美沙姉と歩くとお目当てのホテルに着いた。
「え~と豪華そうだけど、普通のラブホテルだよね」
「入ってからのお楽しみ」
「和也くんと一緒なら別に良いんだけど、こんな所初めてだから、なんだか緊張してきたよ」
「俺も……緊張してきた」
美沙姉をリードするように手を握りホテルに入っていった。
受付で予約していた事を話しカギを貰い部屋へ。
「ちょっと暗くてなんだから凄いね。こういうホテルを選ぶなんて和也くんってエッチだよね」
「いや、此処が特殊だから、話しの種に一度来てみたかったんだ。美沙姉も気にいると思う」
「まぁ、私は和也くんの奥さんだからエッチなのは別に良いんだけど」
「部屋に着いたよ……はいどうぞ!」
「なんだか……緊張するね……わっ、凄い、これ……嘘みたい。だから水着を買ったんだ」
「どう、凄いでしょう? ちょっとテレビで話題になっていたから、美沙姉と一緒に来たかったんだ」
美沙姉が驚くのも無理ない。
部屋の中に大きなプールがあって、その横にジャグジーもある。
どう見ても他には考えられない部屋だ。
「本当に凄いね、プールもあるし泡が出るお風呂もあって」
「そうだよね、なんでも日本一らしいよ、どうかな気に入って貰えた」
「気にいるも何も、お姉ちゃん吃驚だよ……こんな凄い所があるなんて」
赤坂キングホテルも考えたけど、ただ豪華な部屋に泊るより面白いかなと思ってこれにした。
ちなみに泊りで1泊8万円。
それを2泊予約した。
「それでね、美沙姉……」
俺は美沙姉の手を取り覗き込む様にして目を見つめる。
「すぐにしたいのかな? シャワー一緒に浴びようか? 私の方はすぐに……」
「それもあるけど、先にしたい事があるんだ」
「なにかな? 和也くん、凄く真剣な顔して……どうしたの?」
もう、籍は入れているし、明後日には結婚式……それなのに緊張する。
「美沙姉、結婚してくれてありがとう……」
「あの、和也くん、どうしたの? お礼を言うのは私の方だよ……私なんかと結婚してくれて……本当にありがとう」
「それでね、順番は逆になったけど、これ受け取って欲しいんだ」
「和也くん……それって」
「うん、婚約指輪。村じゃ用意できなかったから、空港にあるブランド指輪を扱っているお店に予約入れて……さっき取りに……うんぐっ」
美沙姉が俺に飛びつくように抱き着いてきてキスしてくれた。
「ぷはぁっ、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん、和也くん……大大大好きーーっ」
「美沙姉、俺も……」
「和也くんが行けないんだよ……ううっ、こんなにこんなに、お姉ちゃんを……ううっ感動させるから……」
泣きながら美沙姉は俺を押し倒すと、手早く俺の服を脱がし馬乗りになった。
「美沙姉、シャワー……」
「要らない、和也くんの汗嫌いじゃないから、それに今は一杯、和也くんを感じたいから……」
話しながら、美沙姉は服を手早く脱ぎ捨てた。
「美沙姉……」
「大丈夫、切ない顔しなくてもお姉ちゃんが愛を込めて沢山、沢山気持ち良くしてあげるからね、ハァハァ、ちゅっ」
ただ、凄かった。
それしか言えない物凄い体験をこの日俺はした。
◆◆◆
「美沙姉、落ち着いた?」
「うん……なんだか凄く恥ずかしい……ゴメンね、和也くん、あとこれ凄く綺麗、本当にありがとう」
そう言いながら美沙姉は俺のあげたダイヤの指輪を左薬指につけてうっとりと眺めている。
「俺も美沙姉の物になった感じがして嬉しいよ」
美沙姉は感動して興奮したからか、行為の際中、吸い付き、俺の体中にキスマークをつけていった。
「そう言ってくれると助かるよ、興奮しちゃって……だけど、この指輪高かったんじゃないの?」
「婚約指輪だから給料3か月分だよ」
「私、貰ってばかりだね。何も和也くんにあげてない……」
「もう貰っているから気にしないで」
「私、何かあげたかな?」
「美沙姉を貰っているから」
「え~と私?」
「そう、いつも言っているけど、小さい頃から大好きで、俺にとって美沙姉以上に欲しい物なんて無いもの。 例え美沙姉と同じ大きさの金だってダイヤだって比べられない宝物なんだから……」
「和也くん!」
「お店もお金も俺の全部とだって美沙姉とは比べられない位だよ。 俺にとっての宝物は美沙姉だから、美沙姉は何も気にしないで……」
「和也くん本当に、そんな事ばかり言って……ううっ、本当にありがとう……私にとっても一番の宝物は和也くんだよ」
「俺も……」
その後、疲れが出たのか、美沙姉は俺にしがみ付いたまま寝てしまった。
寝顔が凄く嬉しそうに見える。
プールやジャグジーを楽しむのは明日だな。
※バブルの頃の話ですが本当に渋谷で1泊8万円高級ラブホテルの部屋がありました。
今はそこ迄高い部屋は無いみたいですが、そのソースから書きました。
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