第52話 ラウンジ

空港の近くには長期間預かってくれる駐車場があり、あらかじめ予約していた駐車場に車を預けた。


そして、空港に向かうと……


「凄いよ、和也くん、飛行機だよ! 飛行機!」


「美沙姉は飛行機って乗った事が無いの?」


「うん、お父さんもお母さんも倹約家だったから、しみな村に来る時もフェリーで来たんだよ……これから飛行機に乗るんでしょう? 凄く楽しみ! 」


「そう、それより、まだまだ時間があるからラウンジに行かない?」


「ラウンジ?」


「うん、少し贅沢してファーストクラスにしたんだ。搭乗までの時間寛げるラウンジがあるから、そこで休まない?」


「和也くんは運転で疲れているものね、少し休んだ方が良いかな」


「流石にこれ位じゃ疲れないけど、ラウンジは結構楽しめるから行ってみない?」


「そうね、和也くんがそう言うなら行ってみようかな?」


きっと美沙姉、驚くだろうな……


◆◆◆


「和也くん……此処凄い……お酒にお寿司に、ラーメン、なんでもあって凄いね。ソファも凄く豪華そう」


「本当だ、凄いね……」


仕事で飛行機に乗った事は数回あるけど、いつも乗るのはエコノミー。


だから、ラウンジに来たことは無い。


「和也くんも、もしかして来た事が無いの? 」


「はははっ、流石に無いよ! ここはファーストクラスの人が休憩する場所だから……普段はエコノミーだから」


「あの、和也くん、結構高かったんじゃないの?」


「ちょっとね……だけど、今回は結婚式とその後の新婚旅行を兼ねているから、特別にしたんだ。 新婚生活に移ったら少し引き締めるつもりだよ! だから今回は美沙姉も気にしないで大いに羽を伸ばそうよ」


その気は無いけど、こう言っておかないと美沙姉が気を使いそうだからね。


「うん、そうだね……今回は特別だから、和也くんに甘えちゃおうかな? 」


「うん、そうしよう」


美沙姉も俺も成人しているから、お酒を飲んでも良いんだけど。


美沙姉は16歳からあんな状態だったし、俺も仕事ばかりしていてお酒は殆ど飲んだ事が無い。


結構、沢山のお酒があり、豪華そうに見える物もあるけど、飛行機で酔う可能性を考えてやめた。


飲み物は美沙姉はオレンジジュース、俺はウーロン茶をチョイスした。


「和也くん、お姉ちゃんラーメン貰って来ようと思うんだけど食べる?」


お姉ちゃんになっているし……凄く楽しそうだ。


「それじゃ食べようかな? それじゃ俺の方はお寿司を取ってこようと思うんだけど、食べたいネタとかある?」


「う~ん、あればサーモンとイカ」


「解った、サーモンとイカだね」


気がつくとテーブルの上にはラーメンやお寿司、サンドウィッチにローストビーフ等が所狭しと並んでいる。


まるで、何処かのビュッフェみたいだ。


「どれも美味しそうだね、和也くん」


「そうだね」


周りが少し白い目で見ている気がするけど、美沙姉が嬉しそうだから、気にする必要もないな……


「それじゃ、食べようか? いただきます」


「いただきます」


美沙姉は美味しそうに笑顔でラーメンを食べている。


こんな笑顔が見られるならファーストクラスなんて安いもんだ。





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