第51話 ドライブ
「東京までこんなに遠いなんて……久々だから忘れていたよ」
「そう思ってジュースやお菓子も持ってきているから、まずはドライブ気分でいこうか?」
「そうだね。ドライブって考えたらそれも楽しいね」
しみな村は田舎なんだ……東京は凄く遠い。
近くの空港までバスで乗り換え4回停留所の数は実に60を超える。
時間にして3時間位。
『これじゃ雰囲気が壊れる』
だから、自家用車でドライブがてら空港に向かう事にした。
空港の近くには有料駐車場があり長期間でも普通に預かって貰えるからそちらを選んだ。
それでも時間は同じ3時間掛かる。
そこから飛行機に揺られる事2時間でようやく羽田空港につく。
更に電車で1時間。
それでようやくお目当ての渋谷に到着する。
そこで2泊して翌々日の10時~表参道の式場で式をあげる。
そんな感じだ。
結構、遠い。
「ドライブなんて何年ぶりかな、結婚式も新婚旅行も楽しみだけど、これはこれで楽しいね」
美沙姉はほぼ軟禁状態だったんだ。
確かにドライブなんて出来なかったよな。
こんなに喜ぶならもっと早くにドライブに誘ってあげれば良かった。
「美沙姉とドライブ……本当に楽しい。失敗したぁ~もっと早くに誘えばよかった」
エアコンよりも風を感じたいからと美沙姉が言ったので窓を全開にしてのドライブ。
美沙姉はいつも綺麗だけど、白いブラウスを着て髪を風で靡かせている美沙姉は更に綺麗に見えた。
普通のドライブは都心から海や山に行くのが普通だが、俺達のドライブは逆。
走れば走る程、都心部に近づく。
「ねぇ、和也くん、音楽聞いても良いかな?」
「勿論、好きなのを聞いて」
「ありがとう」
俺は音楽すら聴く余裕が無かったからCDを持っていない。
今、車に積んであるCDは美沙姉の部屋から持ってきた物だ。
美沙姉が古馬本家に連れ去れる前の者だから凄く古い。
暫く待つと当時、凄く人気のあった男性アイドル三人組の歌が流れてきた。
「へぇ~美沙姉、こんなの聞くんだ」
「ちょっと恥ずかしいから、やっぱり、他のにする」
「いいじゃん、このまま聞こうよ……」
「全くもう……」
「それで美沙姉は、この三人組の中で誰が好きなの?」
「やっぱり……和也くんにそう聞かれると思って代えようと思ったのに……聞いちゃうんだ……」
「うん、美沙姉の好みが知りたくてね」
「私の好きなのは和也くん……これじゃ駄目なの?」
「うん、それは解っているけど? CDを買う位だからファンなんだよね? それで誰のファンなのかな?」
「もう、和也くんの意地悪……言わなきゃダメ?」
「出来たら……」
「もう仕方ないなぁ。西和のファンだったの。これで良い。全くもう……好きな人に芸能人の好きなタイプを言うのって恥ずかしいんだからね」
西和は三人の中で一番美形だし『女子高生がつき合いたい男ナンバー1』だった。
ああいうタイプが好きだったんだ。
「そう言うものなのかな?」
「そう言う物なの! そ.れ.で.和也くんは誰のファンだったのかな? お姉ちゃんに教えてくれないかな?」
「美沙姉だよ」
「それ答えになってないじゃない? 私の時は『好きなのは和也くん』そう言っても駄目だったんだから……ちゃんと」
「だって、美沙姉が初恋だし、他の女の子に目を奪われた事ないから、俺の部屋にもこの車にもCD一つ無いしアイドルのポスターとか見かけた記憶ある?」
「ない……」
「でしょう? 大体小学生の子供の時から美沙姉が好きで他の子に目を向けてないんだから、当たり前じゃないかな」
「言われてみればそうだね。だけど1人位私以外にも居るでしょう? 」
「どうしてもって言うなら小学生の時の話になるよ」
「それで良いよ」
「え~と、峰村不二子とかムーンライトハニーとかかな?」
「それアニメのキャラで子供なら一度は憧れる三大美女の二人じゃない?」
「そうだね、その後に好きになったのは美沙姉。 そう考えたら俺が三次元で好きになったのは美沙姉だけかも知れない。 これじゃ駄目かな」
「言われてみればそうだね。 あんな子供の時から私が好きだったんだから……ううっそう言われたら違うって言えないよ。だけどズルい気がする」
「なんで?」
「私ばかり恥ずかしい思いして、なんかズルい。そうだ、私の好きな所4つ言ってくれる?」
美沙姉の良い所なんて幾らでも言えるよ。
「優しい、可愛らしい、スタイルが抜群。天使みたいに綺麗で可愛い笑顔に、何時までも聞いていたくなる声……」
「もう4つ過ぎてるから良いよ……聞いていてこっちが顔が赤くなっちゃう……和也くんは私が好きなのが解ったからもういいや」
「そう言って貰えると助かる」
美沙姉以外好きになった事が無いから。応えようが無いよな。
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