文例②について ―心の中と映像的描写で分ける―
ここからは敢えての一人称表現と三人称表現の混在だ。
冒頭の数行は主人公を「伊織弓弦」と表現しており、三人称小説の体裁をとっている。
しばらく読み進めると、
先生、マイクなんてないんだけど、と俺は思った。
という文が出てくる。
先生、マイクなんてないんだけど。
としておけば内的独白として三人称小説の中に入れてもおかしくはない。
しかし、「と俺は思った。」と付け足されている。
これによって「俺の語り」になってしまうのだ。
よって、この部分は一人称小説の表現。
以降も三人称小説の表現と一人称小説の表現が混じった文が続く。
「俺」が出て来たり、「伊織弓弦」が出て来たり。
一応、両者には違いを設けている。
動作や状況など映像的な表現には三人称表現「伊織弓弦」
心の中で思ったことは一人称表現「俺」
と区別している。
違和感で物語に集中できないだろうか?
まだ、どうにか許せるだろうか?
次は、動作・状況や心の中など関係なくランダムに三人称表現と一人称表現が混じったらどうなるかやってみた。
文例③につづく。
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