第2話「出会いと別れ。」

人生とは、出会いと別れの連続であるとどこかで聞いたことがある。

この世には変わらないものは無いし、変わってほしくないと思うのは人間のエゴでしかないのだ。それでもなお、求めてしまうのが人間で、だれもが乗り越えていく壁である。

だから俺はそんな世界が嫌だ。


俺は「篠田しのだ 龍人りゅうと」中学二年のごく普通のなんの特徴もない拗らせ少年ってとこだ。子供の頃から物思ものおもいにふけることが多く、「なぜ自分は生きてるのか」、「なぜ生まれたのか」なんて、答えの無い疑問を考え込んでいた。


「篠田君?」

「なに?」

放課後、部室に行く俺を後ろから呼び止めた、同じ部活の「三宅みやけ 愛里あいり」彼女は子供の頃から演技に興味があり、演劇部かこの中学にあることを知った瞬間から入ることを決めていたという。俺はそんな彼女がなんだかまぶしく見えて、あまり得意ではなかった。

「部活行こ!」

そう言って俺を横目にそそくさと部室に歩いていく。

「行くよ…」

「ねぇ。テンション低くない?」

正直。俺はこの部活が嫌いだ。人前に出るのは苦手だし、周りは女子ばかり、特にオタク女子ばかり。缶バッチや、ストラップ型のぬいぐるみなど様々なグッズを筆箱やバックにジャラジャラつけていてこちらが恥ずかしくなってくるくらいだ。

さらに、みんなオタクということで校内での部員のスクールカーストは最下層。周りからこの部活に向けられた視線はいいものではなかった。

「ねぇ、聞いてる?」

「なんで戻ってくるんだよ!」

「だって、篠田君が遅いからでしょ?」

「部活なんか一人で行けばいいだろ?」

「え、私を一人にする気?篠田君サイテー」

「お前あんま調子乗ってるとほんとに一人にするぞ?」

「それは、勘弁してほしいです。」

ほんとに何なんだこいつは。正直今部活いる誰よりも演技がうまくて、それだけでも部活内のカースト上位に入れるんだから、新しく友達作ればいいのになぁ。


そんなこんなで部室につくと中には一年と、三年生数人がもうすでに集まっており、部長から「ほかの二年はまだか?」と、聞かれるが、正直知らん。同じクラスじゃないし、まぁそんなこと言えるわけもないので、「一応、学校には居たんでもうすぐ来ると思いますよ」とだけ伝え、壁際にカバンを置き、二人で向かい合って座る。

「ねぇ、隣のクラスの背の高いあの子さ、宮木みやき君のこと好きらしいんだけどさ」

「そうなんだ。」

まぁ女子との会話はこんな感じで恋バナが多い。だから、その辺の男子よりかは、他人の恋路こいじを知っている自信があるが、どこで使うわけでもないので、正直どうでもいい。

「でも、宮木君は、特に好きな人いないらしいんだよねぇ」

「まぁ、男子は女子より恋愛に興味ないんじゃない?」

「そういうもん?」

「そういうもん。」

「そうなのかな」と漏らしながら、考えこむ三宅さんの顔をぼーっと見ていた。

赤い縁の眼鏡に少しキリっとした目。少し小鼻が膨れた鼻に、中学生にしては少し大人びた唇、すこし日焼けした肌。

「ねぇ」

「…ん?」

「あんま見ないでハズイ」

「…ご、ごめん」

お互いに恥ずかしくなり、顔をそむける。

「あ、お取込みちゅうかなぁ」

不意に視界に入ってきた一足の上履きの持ち主を確認するようにゆっくり顔を上げるとそこに居たのは、「杉本すぎもと 夢菜ゆめな」さんだった。

「えっとー寝てもいいかな?」

「あ、どうぞ」

「じゃあお邪魔しまーす。あ、どぞどぞ続けて!」

「いや、無理だろ」

「全然気にしなくていいのに」と笑いながら自分の上着を掛け布団にして寝始める彼女は、演劇部の眠り姫「杉本さん」。いつ見ても寝ていることからそういわれるようになってしまった。特に悪さをしているわけでもないので基本注意されない。部活をしに来ているのか、それとも眠りに来ているのか、よくわからない人だ。

「あ、今日も寝てるの?早いねぇ」

「あ、お疲れ。来て早々寝始めたよ。」

「相変わらずだねぇ」と杉本さんの寝顔を覗き込んでいるのは「せき 絵里香えりか」さん。彼女は絵を書くのが好きで、去年一年生ながら、ポスターの絵を担当するくらい絵がうまい。さらに物語を作るのが好きで、将来台本を作りたいとまで言っていた。確かに彼女の作る台本の劇は一度見てみたい気もする。

「今日ほかの人たちは?」

他に二人「佐々木ささき 玲子れいこ」さんと「渡辺わたなべ 美鈴みすず」さんがいる。

佐々木さんは、基本的に学校には来ていないので、当然部活の出席率も悪い。

渡辺さんは、学校の三大美女として名が上がるほどの美貌の持ち主であり、毎日のように学年問わず告白されているらしい。そのため、たびたび部活を休んでまで相手をすることがあり、今日もそんな感じらしい。

美しいのはそれはそれで困ることがあるのかと、少し不思議な気持ちになりながら、三宅さんの方に目線を向けると眼鏡の奥のキリっとした瞳と目が合った。

「なんだよ」

「なんでもない!」と照れ隠しの肩パンを食らった。

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セカンドライフはハッピーエンドがいいからさ。 日生 千裕 @hinasetihiro

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