セカンドライフはハッピーエンドがいいからさ。
日生 千裕
第1話 「プロローグ」
小さいころから、何のために俺は生きているのか考えることがある。
何をするにも努力がいるし、お金もかかる。なのにどんな原動力でみんな生きているのかと思う。
テレビで自衛隊のドキュメントをやっていた時に無意識に呟いた「正月でも出動するなんてかわいそうだなぁ」という言葉に一緒に見ていた母親は「お国のために誇りをもってやってるんだから、お仕事できてうれしいんだよ。」と、言っていた。
確かに自ら自衛隊に入るってことは、そうなのかと思いつつ自分には縁のない感情だとも思った。
母
なら、なぜ人は自ら命を絶つのか。なぜ精神を病んでしまう人がいるのか。
結局みな自己暗示なんだと思う。生きるためにはお金が必要だから、好きなことをするのにはお金がかかるから、周りに合わせるためにお金がかかるから、お金が必要だから仕事をする。何かをするためには何かを犠牲にしなければならない。
日本人は簡単に時間や体、精神を捨ててしまう。だからこんな考えが真っ当な意見として通ってしまうのだろう。
「じゃあここはぁ…
差された瞬間に周りの生徒が一斉にこちらを向く。
「あ、えっと…わかりません…」
「だろうな。授業中によそ見すんなよぉ。」
えーここはぁ…と黒板へ振り返り解説を続ける教師。ぼそぼそと喋る周りの奴。はぁもう全部が嫌だ…そんなことを思っていると隣から二の腕をシャーペンでつつかれる。横を向くと隣の女子の顔が目の前にあった。
「なに見てたの?」
と、だいたい予想ついてるけどみたいな顔で訪ねてくる
「そ、外だけどなに?」
少しうつむきながらボソッと呟くと
「ふーん。」と少しにやけながら黒板に目線を戻す。
何なんだよ一体。
放課後。二階多目的室。着々と集まる生徒。
「とりあえずここに居る人たちは集まってー」
部長の一言で部屋に居た生徒たちが円形に並び始めた。
「ロングゥー」
掛け声とともに腹に手を置き発声を始めた。
「あああああああああぁー」
3,4回繰り返した後「スタッカートォー」と掛け声をかけると発声の仕方を変えまた発声する
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、あ、」
これも3,4回繰り返したらそこで発声は終わり。
この後は2人組になり、腹筋と背筋を鍛える筋トレをして、終わり次第早口言葉の練習をする。部長含む2年生の数人が筋トレを終えるとパソコン室に向かう。パソコン室では、来年の夏にやる公演の台本を探したり、制作したりしているらしい。
「篠田君」
隣に座ってきた
「どうしたの?」
「特に理由はないけど、嫌だった?」
「べつにそんなことはないけど。」
彼女は言わば才能がある側の人間だと思う。俺が思うに、演技というのは役になり切れて初めて三流。役に感情が重なるのが二流。役と自分に境目が無くなるのが一流。
彼女は一流に限りなく近い存在であるがゆえに、居場所がないのだ。
時に人は、平均をとりたがる生き物である。劣る者には蔑みを、優れる者には軽蔑を。彼女もそんなくだらないものの餌食になってしまい、入部したては周りからはぶかれ、一人部屋の隅に座り込んでいた。
俺はそんな彼女に声をかけたり、積極的に協力したりしていた。
今思えばなんでそんなことやったのかわからないし、下心があったわけでもない。
ただ何もしないのは違うと思ってしまったからというのはわかっていた。
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