ミラ・クルース

視線を感じる

複数の人がじっとこちらを見ている

クロナの服装は冒険者、アルトの服装は平民寄りの服装だが関係ない

テリトリーに入ってきた者を襲うのが無法者


「見られていますね」


アルトは聞こえないように小声で言う

クロナが静かに頷く


「狙われてる」

「魔法の準備をしておきます」

「襲ってきたの殺しても罪にはならないよね」

「相手が殺す気で来てるならそれは仕方ないので」

「ならOK」


そのまま2人は進む

警戒しているように見えないように歩く


「酒場はこの辺のはずだけど」

「もう少し先でしょうか。先行してみます」

「分かった」


アルトが先行する

単独行動をするのは本来危険

だがこの行動は敢えてやっている

情報を集めるには新鮮な情報の方が良い


……さて引っかかる馬鹿は居るかな。それとも賢いか?


適当に待つ

警戒している素振りは見せない

すると囲むように男達が現れる


「女1人でこんな場所にとはな」

「誰ですか?」


演技をする


「何、ちょっとお前さんの持つ物全部置いていってくれれば何もしないさ」

「全部?」

「剣も防具も服も全部だ」

「ふざけないで、彼が帰ってきたら貴方達なんて」

「その彼が帰ってくるとは限らないけどな」

「それはどう言う……」


無法者達は武器を取り出し魔力を込める


……見た感じ魔法使いは居ないかな。見事に馬鹿だ


「身ぐるみ剥いで遊んでやるか」

「来ないで」


弱腰で剣を抜く


「震えてるぜ」

「う、うるさい」


無法者達はゆっくりと近付いてくる

勝った後の事でも考えているのだろうか下卑た笑みを浮かべている


……もっと近くに来たらやるかな


どんどん近付いてくる


「今なら許してやるぞ」

「ふざけるな」

「強気だな。いつまで持つか分からないがな」

「くっくく」


アルトはまだ帰ってこない。酒場を見つけるのに時間がかかっているのかそれとも別の理由か


……もうすぐ帰ってきてもおかしくないんだけどな、まぁあの人なら大丈夫か


強い事を知っている

骸龍の動きを封じられるほどの魔法を使える魔法使い

剣を持っている事から剣術も出来るだろう


丁度そう考えていた時無法者達がクロナの間合いに入る

隠れている人間が居ない事を確認する


「もう良いか」

「あ?」

「何いってん……え?ぁ」


視認出来ない程の剣撃が無法者に襲いかかる

クロナの前方に居た無法者は首を両断され首が地面に落ちる

切られた無法者は切られたことに暫く気付かなかった


「え? な、何をした」

「1人……いや2人かな」


素早い剣撃が複数回放たれる

胴体を首を腕を足を切り裂いていく

無法者達は為す術なくやられる

片足を切り裂いた2人を残す

片足を切られた為逃げられない


「さっきのは演技だったのか」

「スラム街で単独行動する馬鹿居る訳ないじゃん。情報を吐け」

「情報だと?」

「スラム街の元締め居るだろ? そしてその元締めはどこに居る?」

「教える訳が」

「指から順番に切り裂かれたいか。足はなくとも生きたいか、返答は情報で」


真剣な声音で言う

無法者達にその言葉は真実だと教える為に


「わ、分かった教える。元締めってのはつまりリーダーで良いのか?」


2人は情報を吐き始める


「そう」

「ならリードロが元締めだ。2mはある大男で魔物の毛皮を身につけてる」

「そ、それと魔剣を持ってて……多分今は酒場に居る」

「あの人は酒場に入り浸ってる」

「その酒場は?」

「この道を真っ直ぐ行った先にある」

「そんな遠くねぇはずだ」

「仲間が戻ってこないんだけど何故?」

「他の無法者が襲ってるがあんた程の実力者の仲間なら返り討ちに出来ると思うんだが」

「彼も強い。君ら如きなら余裕だけど」


アルトが戻ってくる様子は無い


「新人が入ったとかは?」

「新人? あぁあいつがいるな」

「あいつ?」

「昨日なんだがスラム街に現れた黒いローブの奴なんだが」


……黒いローブ……呪使い? いや昨日現れたなら違うか


「そいつが?」

「この近くで昨日活動していたから一緒に襲いかかったのかもしれない」

「そいつは強いのか?」

「わからない。ただ不気味な魔力を纏ってた」

「なんか魔物に似た魔力だった」


……魔物に似た……まさか


1人思いつく

本人だとしたらマズイ

アルトでも勝てない可能性がある

そしてその人物はアルトを狙う理由がある


「殺さないでやるから失せな」

「は、はい!」

「ひぃぃ」


すぐにアルトが向かった方へ向かう

目の前で砂が舞う

そして剣が地面に突き刺さる


「アルト下がれ!」

「……!」


クロナの声を聞いて後ろに飛び退く

クロナが前に立ち剣を構える


「その貴族の知り合い?」

「彼女は一体」

「1番会いたくなかったなぁ」


黒いローブは付けていない

前回会った時と同じ服装をしている


「邪魔をするなら殺す」

「ちょ、君とやる気は無い。後見逃して欲しいんだけど」

「貴族はダメ」

「貴族を恨んでいるのはなぜですか」

「何故? 何故って私は貴族が嫌いだから」

「絶対それだけじゃないよね?」

「教える気は無い。知る必要も無い」

「流石に止めるけど」

「魔力出力50パー」


異様な魔力を放出する

悪寒が走る


……いきなり本気か。不味いな


アルトを庇いながら戦える相手では無い


「これは魔物の魔力……貴女は何者なんですか」

「教える訳が無い!」


異様な魔力を纏った赤黒い剣を振るう

無詠唱で土の魔法で壁を作り出す

土の壁を真っ二つに切り裂く


「ミラ・クルース」

「その名前は!」

「何故知ってる」


ミラはクロナを睨みつける

確信は無かった

しかし、ユイラの話からして共通点はある


「あくまで知り合いが君がミラであると予想しただけ」

「貴族殺しですか。それは捕えないと」

「無理だよ」

「無理とは」

「戦って分かったでしょ?」

「……確かに私では勝てません。しかし大罪人を逃す訳には」

「殺した理由あるでしょ? ユイラから聞いた情報だけどおかしすぎる」

「おかしいとは?」

「何故君は処刑されなかった? 家族は処刑されたのにたった1人だけ生き延びてる」

「それは確かにおかしいですね。両親と弟は処刑されています」


両親だけ処刑で子供はならば分かるが弟も処刑されている

たった1人だけ処刑されなかったのは違和感がある


「本当なら死んでいた。私は魔物の森に捨てられたのだから」

「捨てられた?」

「処刑されなかった理由? さぁ? 私が女だからかなぁ? まぁそのお陰であのクソ貴族を殺せたから寧ろ良かったけど?」


……これは踏み込んじゃダメだな


間違いなく地雷を踏んだ

これ以上下手に踏み込めば話をしてはくれないだろう


「確か殺された貴族はクルース家の罪を暴露した貴族」

「それで復讐……普通ならまぁそれで済むんだけどなんかなぁ」

「どうかしたんですか?」

「なんかただの罪人が貴族を恨んでると言う感じではなく怒りはあるけど恨み憎しみが強い感じがする」

「知らない癖に!」


赤黒い剣を振るう

剣で受け止める

ジリジリと押される


……やっぱり重い。力は圧倒的にあっちが上


ジリジリと押し合う

そしてギリギリで弾く

ミラは後ろに飛び剣を構える


「あんまり時間かけたくないんだよね」

「ならその貴族を見捨てればいい」

「はいそうですかとはなら無いんだよねそれが」

「なら貴女も殺す」

「はぁ仕方ない。君はもしかしたら不遇な人間なのかと思っているんだよ。私とは事情は違うだろうけど」

「だとして貴女に関係ある?」

「……無いね。仕方ない話し合いが無理なら殺し合おう。アルト下がっていて」

「……はい、お気を付けて」


対峙する

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