怪しい貴族
騎士団本部の扉の前に門番が立っていた
「ユイラ様クロナ様どうぞお通りください。騎士団長であれば執務室に居ます」
何も無く中に入れる
騎士達が忙しそうに廊下を駆ける
……スタンピードの後始末かな
スタンピードの後始末で騎士はずっと駆り出されている
中に徹夜をしている者も居る
「身分証とか要らないんだ」
「騎士団長が門番に伝えているんだと思います。2人は自由に通して構わないと」
「成程、それは楽だね。執務室らしいけどどこ?」
「私も本部内に入ったのは初めてなので分かりません。案内板でもあればいいんですが」
「あれじゃない?」
壁に張られている地図を見る
騎士団本部の内部地図であった
文字を見て執務室を探す
「階段を登ってすぐにある扉が執務室」
「わかりやすい」
「ですね」
……迷子になる人がいるから分かりやすいところに執務室があるのかな。騎士団長が迷子になりやすいとか
近くにある階段を登り2階に行く
案内板通りに近くに扉が1つある
扉をノックする
中から声がする
「入れ」
2人は部屋の中に入る
大きな机と椅子があり椅子に座って何かの資料を見ているフェネスが居た
周りを見ると左右の壁には棚が置かれ大量の本が並んでいる
……凄っ、本が一杯ある
「お前達か何用だ?」
「貴族の中に裏取引をしている怪しい貴族の目星はついていますか?」
フェネスはその言葉を聞き魔法を使う
「断絶空間」
直感で空気が変わった事を理解する
……魔法、嫌な空気では無いけどなんの魔法?
「空間を隔離した。これで外に声は聞こえない」
「そんな魔法が……でもなんで?」
「聞かれたくないからでしょう。貴族絡みとなれば騎士団の団員とは言え直接的でなくとも間接的に関わっている者も居るでしょう」
「そうか、騎士は貴族が多いから裏取引してる貴族の関係者が居る可能性あるのか」
「あぁ、居るぞ。まぁあいつらは関わっている訳では無いが下手に聞かれたらまずい」
貴族が犯罪を起こしても金や権力で揉み消す事もある
しかし、騎士団が担当する場合一家纏めて貴族階級から追放する
騎士団には怪しい貴族の子息も居る
もし怪しんでいる事が子息にバレたら証拠もみ消しに動くだろう
そうしなければ貴族の立場を失う
「成程」
「では話しましょう」
「あぁ、怪しい貴族は複数人居るが呪使いと繋がっているであろう貴族は1人だ」
「1人なんだ。もっと何人かで集まってかと思ってた」
「大抵の奴は仲間を増やすが証拠を残したくない徹底したい人間は単独行動をする」
「そんなに徹底している貴族が呪使いと関わっているという証拠を残したんですか?」
「正確には違う。奴の名はコットー・イルキリス、階級は男爵こいつの周りには不自然な死が多い」
「不自然な死? それが呪いが原因と?」
「あぁ、両親、そして長男が病気で無くなっている」
「3人が病気で、まぁおかしくは無いのでは?」
「それだけならな。一番最初に長男が死んだ後1年以内に2人が病死、そして3人とも同じ症状で死んでいる。そしてこの3人は死ぬ少し前まで健康で病気を患っているようには見えなかったそうだ」
「それは不気味だねぇ」
……だから呪いか。少し前まで元気で急激にってのは病気には幾つかあるけどたぶんそれらとは該当しない症状なんだろうね
「成程、それで彼に怪しい動きは?」
「監視した所、週に1度貴族区から外出している事がわかった。そしてその行先はボロボロの酒場、貴族らしい貴族が行くような場所では無い」
「酒場は情報交換に使われる。誰かと接触してた?」
「黒いローブの人間と残念ながら声や姿形は分からなかったそうだ」
「黒いローブかぁ。その酒場どこ?」
フェネスは地図を取り出す
そしてある1箇所を指差す
「ここはスラム街ですね」
「スラム街?」
「無法地帯です。強盗、殺人など日常茶飯事、無法者が集まっている危険な場所です」
罪人やホームレスが住むエリア
王都の中で最も危険な場所、貴族どころか平民もほぼ近寄らない
「そんな場所に?」
「ここは貴族が寄り付かないからな」
スラム街には殆ど人は寄り付かない
故に秘密の取引にはうってつけな場所
「いや、なんで狙われないんだろって」
「狙われない?」
「貴族なら襲って身ぐるみ剥げばいいのになんでこの人は狙われないの? 魔法が強い?」
貴族の服は高く売れる
売れば平民なら一生分の金が手に入るだろう
装飾品なども身につけているであろう事から狙われないのはおかしいとクロナは考える
……なんでかな? 無法者が近寄れない理由がある? 誰かの繋がってる?
「強さは貴族の中では平均的だな。確かに何故か襲われない」
「無法者すら近寄らないのかもしれません」
「と言うと」
「スラム街を牛耳る人間と関わりがあるか」
「可能性はあるかと」
「牛耳る人間なんて居るんだ」
「噂程度ではあるがな」
「なるほど、つまりそいつぶっ叩けばいいってことかな」
「はい」
「殺すなよ。殺人は流石に騎士団は動かざるを負えない」
スラム街とは言え殺人となれば騎士団が動いて調査をしないといけない
「殺さないよ。殺したら情報を吐かせられない」
「そうか」
フェネスの背中にゾクリと悪寒が走る
手が震えている事に気付きクロナを恐れていると理解する
……恐ろしいな。敵でなくて良かった。今戦って……五分か
体の震えを止める
「コットーの行動は数回確認したが日は適当だろう。恐らく悟られないようにする為に」
「成程、まぁ貴族の方と会うのは後だから良いけど」
「それでは行きましょう」
「いや待て」
「何?」
「ユイラ、お前はダメだ。大貴族であるお前が動けば悟られる。だが1人で行かせる訳には行かない。行くならアルトを連れて行け」
「副団長を? 良いの?」
「構わん。協力すると言った以上アルトも承知している筈だ。今は訓練場に居るはずだ」
「分かった!」
「わかりました。では失礼します」
魔法が解除される
2人は執務室を出る
「訓練場行こう」
「ですね。訓練場は……案内板見ましょう」
「そうだね。その方が確実だ」
階段を降りて内部地図を見る
……ええっと、訓練場は何処だ……あれ無くない?
「ありませんね」
「だね。これは困った」
「おや、お2人が何故ここに?」
声がする
そこには1人の男性が立っていた
その顔に見覚えは無いが声は聞き覚えがあった
「あの時の騎士か」
骸龍戦で一般の騎士唯一動いた騎士
あの時は鎧を付けていて顔が見えなかった
「あぁ、あっ、リンド・レーリスと言います」
「ユイラ・メメトです」
「クロナ・ヴァイス」
「お2人は……あの件ですか?」
呪いの件を知っている数少ない人物
「はい、それでアルト副団長を探しているんですが訓練場とは何処にありますか?」
「訓練場ですか。であれば向かう予定でしたので案内しますよ」
「助かる」
「助かります」
「いえいえ、俺ではこのくらいしか出来ませんから」
リンドの案内を受けて訓練場へ向かう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます