英雄とは名が残る者だけがなるのでは無い
ブレスが放たれる
魔法障壁と土の壁が破壊されていく
覚悟は決まっている、騎士として戦場で死ぬならば本望と
剣を握りしめ大きく振りかぶる
後ろの2人に届かないように
ブレスの威力を落とす
「加勢します! 魔力よ刃となり我が敵を斬れ! オーラブレイド!」
1人の騎士が声を上げる
魔法を使う
魔力の刃が生成され骸龍目掛けて飛んでいく
騎士がよく使う魔法で本来は剣に纏わせる魔法
弱くは無いが良くも悪くも使用者の魔力に依存する
加勢した彼は一般の騎士、一般の騎士が使うオーラブレイドでは骸龍にダメージを与える事は難しい
龍種の鱗は硬い
しかし、全身を完全に鱗が守っている訳では無い
そこを狙うのは難しいがこの騎士は飛び道具の扱いに長けていた
恐怖に蝕まれながら飛ばした魔力の刃は骸龍の目を貫く
目を貫かれた骸龍は苦しみ集中が途切れ魔力が霧散する
ブレスが途中で止まった
……ブレスが……目に当たったのか
そしてそのタイミングで骸龍の背中から飛び上がる者が1人居た
「壊!」
狙うは頭、頭も鱗に守られているが強度は同じ
勢いよく振り下ろす
そして鱗を砕きすぐに追撃する
「無刃」
高速の突きを繰り出す
肉を貫き脳を貫く
龍程の魔物であっても頭、脳は弱点となる
骸龍は動きを止める
そしてゆっくりと倒れる
……おろっ
クロナは体勢を崩す
しっかり骸龍の鱗を掴んで振り落とされないようにしがみつく
……やばいやばいこれは死ぬ、落ちたら死ぬ!
地面に倒れ突風が起きる
「騎士団長ご無事ですか!」
オーラブレイドを使った騎士が現れる
急いで騎士団長に駆け寄る
「あぁ無事だ。助かった」
「力になれて良かったです。確か副団長とあの二人居ましたよね。皆どこに」
「私達はここに居ます」
土の防御を解除する
2人が土の障壁の中から現れる
「クロナさんがトドメを刺したみたいですね」
「そのようですね」
「アルト副団長に確かメメト家のご令嬢ではありませんか。よくご無事で」
「クロナさんは何処に」
ユイラが周りを見渡すと骸龍の頭があるところからクロナが現れる
「危なかったなぁ……死ぬかと思ったよ」
「クロナさん!」
「あぁ、ユイラやっぱ来てたんだ。助かったよ」
「やっぱりあのブレスはクロナさんの方へ」
「クロナ、良くやってくれた」
騎士団長が声をかける
「騎士団長の魔法も凄かったよ! 流石は最強の騎士」
「あれは特殊な魔法だからな。一般的な魔法とは違う」
「そうなんだ」
「騎士団長はこの国唯一の精霊魔法の使い手ですからね。あれも精霊の力を借りた魔法」
「その通りだ」
骸龍が死に縛り付けていた恐怖が消え皆解放される
魔物も自由になる
「そうだ、まだ魔物が……」
「問題ない」
「それってどういう……」
魔物は人々を襲う事無く5人の居るところに向かってくる
「いやいや来てるじゃん!」
クロナは剣を抜いて待ち構えるが魔物はクロナを素通りして山へ走って帰っていく
「骸龍のせいで生息地から離れていただけだ。元凶が居なくなればここに居る理由はもう無い」
「……な、なるほど? 流石に骸龍の後に魔物と戦うのは厳しかったから良かったぁ」
「ですね。私も魔力がもうなくて」
「骸龍が倒れた」
「まじか、すげぇ!」
「やったのは誰だ!? 騎士団長とアルト副団長の二人?」
「もう1人居たろ。副団長より先に駆け出した子が」
人々から歓喜の声が上がる
骸龍が討伐されスタンピードが終わった
「すげぇ防御魔法だったな」
「あれブレス防いでたよな?」
「とんでもない魔法使いが……」
「倒したの3人じゃねぇの?」
「騎士団長の魔法すげぇ」
「あれが精霊魔法か。興味深い」
「まじかよ勝ちやがった」
「おぉぉぉ!」
「生き残った……まじか」
「まさか龍が討伐されるのをこの目で見れるとはな」
「こんなの一生に一度無いからな」
「丁度いいや、私いなかった事にして」
「は?」
「え?」
「何言ってるんですか!? 龍討伐の功績ですよ?」
「お前は何を言っている。トドメを刺したのはお前だろ」
「いやぁ、私そういうの要らなくてただ龍を切りたかっただけだから、目立つのは嫌」
クロナは目立つ行為はするが目立ちたい訳では無い
寧ろ自身に対する噂などは一切無いのを好む
骸龍の討伐に協力したというのは良くも悪くも目立ち過ぎる
「そうか、功労者の願いだ。お前の名前は省くが褒美は受け取れ」
必ず褒美は受け取らせるのが騎士団のやり方
「褒美? 大量の金とか?」
「それが望みなら用意するが」
「あっ、そうだ。骸龍の素材ちょうだい」
「龍の素材だと?」
「アレ無理?」
「いや問題ない。素材は討伐者に分け与えられる。しかし、何に使う気だ?」
「ユイラの杖に使う。なんか骸龍の魔力がユイラの魔力に合うらしいんだよね」
「骸龍の魔力ですか、特殊な波長なのですね」
「成程、わかった。騎士団専属の鍛冶師に作ってもらうか?」
「いや、作ってくれる人はいる」
「なら分かった。ユイラに杖に使う分の素材を渡そう。それでお前自身は?」
「私自身? ……それなりに金が貰えればいい」
「それならスタンピードの報酬で貰えるはずだ」
「……特に要らないかな。特に欲しい物あったからでは無いし」
「そうか、であれば何かあれば騎士団が協力しよう。それで良いか?」
「それは助かるなぁ」
「あ、あの杖の素材ではなく別の頼みでも良いですか?」
ユイラが騎士団長に声をかける
緊張している
「構わないぞ。いや骸龍の素材は別で受け取って貰って構わない。願いはなんだ?」
「魔法使いを探して欲しいんです」
「魔法使い?」
「魔法使いですか。名前は?」
「わかりません」
「何かそいつに繋がる物はあるか?」
「1つだけあります」
ユイラは首元を見せる
そこには模様が浮かび上がっていた
その模様を見てクロナ以外は驚く
……何この模様、魔法関連?
「呪い!?」
「静かに」
「は、はいすみません。しかしこの呪いは」
「えぇ、これはいつかけられましたか?」
「3週間前です」
「成程、その呪いを掛けた魔法使いを探し出して欲しいと」
「はい」
「わかった。騎士団が協力しよう」
「わざわざ今言ったのは何故ですか? 騎士団に相談しに来て貰えれば協力は」
「私に呪いを掛けた魔法使いを雇ったのは私の兄です。なので悟られる訳には行きませんでした」
……呪いって……それに兄って
魔法に詳しくないクロナでも知っている
掛けた対象に災いを振り掛ける魔法
解く方法は掛けた魔法使いが解除するか魔法使いを殺す事ともう1つ聖水と呼ばれる特殊な水を使う解除方法
しかし最後の1つは難しく聖水は都市伝説レベルの話でしかない
つまり掛けた魔法使いを探して解除させるか殺さないと行けない
「お前である事は伏せて捜索しよう。何か情報を得たらすぐに伝える。お前達はもう帰っていいぞ。後始末は我々がやる」
「はーい」
「分かりました」
クロナとユイラは城門に向かう
冒険者や騎士が魔物の解体、運搬をしている
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