覚醒は伝播する

恐れているのは死


……本能が訴えてる死にたくないと


身体が重い

しかし、勇気を出して一歩足を前に出す


「死にたくないけど死なせなくない! 命の恩人を命を使って助けるんだ!」


詠唱をする

自身が持つ最大の防御魔法の詠唱をする

ブレスが放たれると同時に詠唱が終わる

魔法障壁が展開される


ブレスを魔法障壁が防ぎ切る

ユイラは動けるようになった

まだ身体は重いが構わず援護に向かう


……動けるのですか


アルトはユイラを見て驚く

アルトも動けていない


……どうやって……いえ、そうですよね


無詠唱で地面から土の棘を作り自分の片腕に傷を付ける

血が流れる


「ぐっ……恐怖など……副団長である私が何故動かないで居られるのですか。彼女は立ち上がったなのに立ち止まり続けられる物ですか!」


痛みで無理矢理恐怖を断ち切る

身体に重さはあるが動けないほどではない

そして騎士団長の元へ向かう


「貴方は」

「助かりました。貴女のお陰で私も振り切れました」

「そうですか。他に動けている人は居ない……行きましょう」


2人は骸龍へ向かっていく

その姿を騎士や冒険者も見ている


「なんで動けるんだよ」

「意味がわからねぇよ」

「なんて言うほど強い人達だ」

「あれを見て動けるのかよ」

「副団長が……冒険者の方も……なら俺も向かわなければ……この国を守らなければ……」

「アルトの奴が動いて……クッソが」


近くに居る骨の軍勢を切り伏せる

素早く切り裂いて落ちた骨を踏み砕く


……ブレスはどうにかなったけど数が多い。今の魔法はユイラかな?


骨を砕き進み骸龍に攻撃を仕掛ける

鱗を砕いて肉を切り裂き少しずつ削る

骸龍は再びブレスを溜める


……げっ、またか。いや信じてみるかな


防御魔法で防いでくれると信じて逃げずに骸龍の足に突っ込み鱗を砕き突き立てて切り上げる

大量の血が流れる

骸龍の足の1本はクロナによってもう血塗れになっている


……まだ足1本、全然削れていない。これは1人では無理だったなぁ


龍狩りを独りでやるのは無謀だったと理解する



「ブレス!」

「狙いはクロナさん!」


駆け付けている2人もブレスに気付く


「貴女は彼女の元に防御魔法を」

「はい」


再び詠唱を始める

アルトが無詠唱で土の礫を骸龍の顔に飛ばす

命中するがダメージは無い


……見向きもしませんか。ならば仕方ありません


「大地よ大いなる汝の力を貸したまえ、遍く生命の守り手よ」


アルトは詠唱を始める

詠唱の途中でブレスが放たれる

ユイラの魔法障壁が間に合いブレスを防ぐ

ヒビが入るがブレスを防ぎ切る


アルトは今の魔法がブレスには間に合わない事を承知で詠唱をしている

ブレスはユイラが防ぐ事を信じて

ユイラの姿を見て行方不明となったユイラ・メメトだと分かった

ユイラ・メメト、メメト家長女であり天才的な防御魔法の使い手

防御魔法の腕だけで見ればアルトを優に超える

若き天才にして未来有望な魔法使いの1人

先程のブレスを防いだ事を知っている為二度目も防げると踏んだ


「汝の意思に逆らえる者は居らず汝の力を阻む者は居ない、集いて我が敵を捕縛せよアースバインド」


地面から大量の土が複数の鎖のような形をして骸龍に襲いかかる

骸龍の身体を縛り上げる

詠唱をしている騎士団長は土の魔法を見てアルトだと気付く


……動けるようになったか。あの防御魔法は別の奴だな


「遅くなりました。援護します」

「招来せよ」


2人が着いたタイミングで詠唱が終わった

光が空に集まる

大きな陣が現れる、骸龍よりも大きな陣が

骸龍はこれを止めなければならなかった

危険を察知した骸龍が逃げ出そうと暴れ出す


「逃がすか……邪魔だ!」


近くの骸骨を切り伏せる

連続で切り刻み骨を踏み潰し頭蓋に剣を突き立てる


……多過ぎる


「クロナさん! 翼を!」


魔法障壁が足場のように現れる

ユイラの言葉を聞き何をすべきか即座に理解する


「無茶言ってくれるなぁ。でもそれが最善か」


クロナは笑う

魔法障壁を足場にして翼に向かう

向かっている間に思考する


……私は剣の間合いは拡張出来ない。つまり翼を切り取る事は出来ない。何処を狙うべきか。飛行能力を奪うなら膜みたいなところかな


龍の翼は大きすぎる

剣の間合いでは切れたとしても切り落とすのは不可能


「根元を!」


アルトが叫ぶ

土が翼の根元に命中する

そこを狙えと言う指示


……根元なら行けるかな。いや、行くしかないか


翼に乗る

今は暴れているがアルトの魔法で逃げれてはいない

そして根元目掛けて剣術 壊を放つ

鱗を砕いた一撃、硬い翼の表面も容易に断つ


「はぁぁぁぁ!」


翼を支える骨に当たる

ガキッンと音が鳴る

当然の事ながら骸龍の体を支える骨は硬い


……硬いけどこれなら!


もう一度剣を振りかぶる


「砕けろぉ!」


二撃目で骨を断つ

そして勢いよく振り切る

骨を絶たれた翼では飛べない、片翼を失った骸龍は飛翔能力を失ってしまった

拘束をなんとか破った骸龍は足を使って走って逃げようとする

魔法を使い大きな骨の牙を地面から生やして攻撃を仕掛ける

しかし、その牙はユイラの防御魔法で防がれる

動き出した時鱗を掴んでなんとか投げ飛ばされずに済んだクロナは背中を走る

狙いは頭


……鱗は砕けるなら頭に剣を突き立てる


騎士団長の使った魔法が漸く発動する

時間がかかるがそれ程までに強力な魔法


……これ巻き込まれない?


骸龍の背中に居るクロナは巻き込まれる事を心配する

しかし、この魔法は対象のみを狙う魔法

クロナには当たらない


「精霊雷魔法 雷鳴撃衝」


雷鳴が鳴り響く

無数の雷が骸龍に降り注ぐ

雷は鱗を貫き肉を焼き切る

身体中を貫かれ焼かれていく

骸龍は叫ぶ

魔法を行使して操っている骨で攻撃を防ぐ

雷は骨を砕く


……つっよ……これが魔法、成程これがこの国最強の騎士か


クロナは最強の所以を理解した

最強と言ってもと思っていた、一国の騎士に過ぎないと

だがこの魔法を見て嫌でも分かる

魔法を使えない身でも分かってしまう

そこらの騎士や冒険者如きとは格が違い過ぎると

クロナを魔力に嫌われた者であるなら

ワール国騎士団長フェネス・リーグローグラインは最も魔法に愛された者と言えるだろう


雷が止む

骸龍は操れる骸を失ったが一部の雷を防いだ事でまだ生きている

骸龍は耐えきった事で逃げるのを辞めた

そして3人に襲いかかる


……不味い!


ユイラが防御魔法を展開する

ボロボロの身でも龍種の魔物、全力の一撃は防御魔法を砕く

すぐに出した土の盾で防ぎ切る

そしてブレスを放とうとする

残った魔力全てを込めて


ぞくりと悪寒が走る


「防御!」

「はい!」


アルトは前に出て無詠唱で土の壁を何重にも展開する

ユイラも魔法障壁を何重にも展開する

2人はこれでは足りないと察する

手元にある魔力ポーションがぶ飲みで防御魔法を展開する


魔力を使い果たした騎士団長は血を吐き膝をついている

防御魔法を使う魔力が残っていない


……今から飲んでも魔法は遅いか。あれを使っても倒しきれないか。ならばやる事は一つだ


剣を引き抜いて2人の前に立つ


「お前達は全力で防御魔法で身を守れ。自分達の身を」

「しかしそれでは」

「団長命令だ」

「……は、はい」

「それでは貴方が」


アルトは自身とユイラを土で包み込む


「我々は生きなければなりません」

「……はい」


ユイラも土の上に防御魔法を張って防御を固める

範囲を狭めた方が防御能力は高くなる

少しでも範囲を狭めてブレスに備える


……これでも耐えれるかどうか……


魔力ポーションを飲んで少し魔力が回復した騎士団長は剣を構える


「精霊よ最後にもう一度力を貸せ」


魔力を剣に込める

真っ向からブレスに立ち向かうつもりで構える

何重にも張られた防御魔法では防ぎ切れない

そして例え魔力を込めた剣でも今の騎士団長では防ぎ切る事は不可能


死を覚悟して立ちはだかる

命をかけてブレスの威力を弱めれば後ろに居る2人は救える

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