第4話

彩菜のことを思っていた巧にとってこれは辛かった。それに加えて幼馴染として彼女を支えることができなかったことに後悔していた。彼女にとって支えになることができるのならば、彼女が望んでいる通りに相手をするのがもっともいいのかもしれない。でもそれは何年も後に彩菜に影響が出てしまうのかもしれない。いや、こんな考えはダメなのだ。自分の好きな俳優や女優、アイドルなどが結婚をしたからファンを辞めるというのは本当のファンとは言いづらい。そんな人は所詮外見や声などで好きになったような人だろう。本当のファンというのはその人の中身を含めて好きというものだろう。どんな人気芸能人である彩菜とはいえ少なからず外見だけのファンはいるだろう。しかし、それ以上に本当のファンもいるはずなのだ。さらに彩菜はずっと自分の意思ではなく仕事をこなしてきた。それが何か吹っ切れたようになればさらに人気者になるかもしれない。しかし、未来のことなんて誰にもわからないんだ。誰かがどうなるとか他人の目なんていうのはどうでもいい。その時自分たちが何をしたいかだ。それがどんな失敗に終わったとしても後悔さえしなければいいのだ。やらなくて一生消えない後悔より、やっていずれ消える大きな後悔の方がいい。いずれ忘れるのだから。それに自分はこれまでの16年の人生で一度も常識からはみ出したことはないのだ。だからたった一度はみ出したっていい。はみ出さないと後悔してしまうだろうと直感でそう思う。彩菜が巧のことを気にかけてくれることなんてこれから先ないかもしれない。ならば今のうちに彩菜に関わっておこう。そう思うと巧は電話を手に取り彩菜に電話をかけた。

「今度会えるか?」


巧から電話がかかってきた。嬉しかった。要件と言えばいつ会えるかと言うことらしい。正直巧のためならいつでもスケジュールを空けられる。とりあえず今度の週末に会うことにした。なんで彼から誘ってきたのだろう。このところ彼は私に対してあまり関わろうとはしなかった。でも彼から誘ってきたのだ。彩菜にとってはそれがとても嬉しかった。彼は全ての行動に理由がある。感情で動くタイプではない。そんな彼が二人での遊びに誘ってきてくれたのだ。何かの理由があるのかもしれない。でもこれはどんな理由にしても彩菜のことを拒絶したり嫌いではないということだ。彼は自分が苦手な人とは非難をするのではなくただ単に関わらない。でも今は週末のことで頭がいっぱいだ。どんな服を着て行こうか、彼の好きな服装はどんなのだろうか。

ああ、楽しみで仕方がない。


他人の目なんて気にする必要はない。ただ、今彩菜に対して抱いているこの気持ちを真っ直ぐに彼女に伝えるだけで良い。それだけなのにこんなにも緊張するし不安な気持ちになる。もとの幼馴染の関係に戻れないかもしれない。でも今のままだとずっと幼馴染のままなのだ。人な常に変化を求める生物だ。より良い明日を求めて今日何をするか。他人の目なんて気にしてる場合じゃない。俺は俺のやりたいようにやる。一度でもそう思えたことで昨日とは一味も二味も違う自分になれた気がした。後悔だけはしない。無くせるものは無くそう。これからは彩菜を巧が支えたいように、彩菜が支えられたいように支えていくのだ。そこに他人の入る余地なんてない。そう決心してまた明日も生きていくのだ。

         


                 終わり

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君のこころの振り向かせ方 星数卜ト @hoshikazu

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