第3話
彩菜は一人で考えていた。久々に幼馴染と話すことができた。嬉しかった。しかし小学生の頃は感じなかった「壁」というものがあるように思えたのだ。勘違いなのかもしれない。勘違いであって欲しかった。しかし彩菜のこういうときの勘は大体合っていたのだ。心当たりがないと言っては嘘になるかもしれない。中学生になってからは忙しくなってあまり関われなかったのだ。高校生になり一区切りが着いたところで、今までがむしゃらにやっていた仕事を調整するようになった。だからこれからは巧と遊んだり一緒に帰ったらできると思っていた。だが、そうじゃないのかもしれない。うちの学校は芸能コースと一般コースは校舎が違うため、学校で出会ったりすることも難しい。そのため、せめて登下校だけでも失われていた彼との時間を取り戻したかった。
(ッハ!!私また巧のことを考えてる。高校に入って仕事の量を調節してからずっと彼のこと考えてる。)
大抵の人はこれを恋と呼ぶが彼女は仕事のことばかりでそう言う分野に関しては疎かった。それに彩菜がその気持ちを認めたくなかったのもあるかもしれない。もしその気持ちを意識すれば仕事にも身が入らないだろう。今はまだこれでいいんだ。とにかく今度映画に誘ってみよう。このままではきっと進展はない。何を考えているのか分からないが、巧の方から彩菜に関わることはないだろう。なぜなのかそれは分からない。しかし彼は感情で動くタイプではないため、何かしらの理由はあるはずだ。なぜなのか知りたいが直接聞けばはぐらかされるだろうし、共通の友人もいない。非常にムズムズする。(もうこうなったら力尽くで吐かせるしかないわね。)
その日の夜、彩菜は早速巧に電話をした。
「もしもし巧、一つ聞きたいことがあるんだけどさ、」
「明日の小テストの勉強してるから早く済ませてくれよ。」
「なんで、私のこと避けようとしてるの?」
単刀直入過ぎたがまあいいだろう。
「なんでそう思ったかだけ聞いてもいいか?」
「なんとなくの勘なんだけど私の勘ってよく当たるからさ。」
「そうなのか、まあ避けてるというより時間が合わなかっただけなんだよ。だから、また時間があったときにじっくり話そうぜ。お前も仕事が忙しくなるだろ。」
「ほんとのこと言ってよ、、、それは嘘でしょ?私わかるよ?ずっと巧と関わってきたから。なんで嘘つくの?」
巧はしばらく黙ったままだった。
「芸能界で活躍し続けられる人ってどんなひとか知ってるのか?プライベートの延長線に仕事がある人なんだ。最近多いキャラでやってるタレントはいずれ本性であるプライベートを週刊誌とかに撮られてしまうことがあるんだ。お前なんてどちらかというと本性ってよりキャラでやってる方だろ?だからそのプライベートに俺がいるとなるとお前のファンは減るだろう。そうして仕事が減っていってしまうのはお前なんだ。俺にお前の人生は担えない。だから避けていこうと思ったんだ。もし傷ついたのなら謝る。だけど俺はお前のために避け続けようと思う。」
「そうだったんだ。でもなんで今まで言ってくれなかったの?私じゃないのに私のためなんて言わないでよ!確かに仕事は減るかもしれない。だけど私も人生に一度の青春がしたいの!それに私はこの仕事あまり好きじゃないんだ。幼い頃に初めてそれから次もお願いしますの繰り返し。やめ時がわからなくなったんだ。そうやってやめろムードになってくれるのはありがたいんだけどね。」
巧は今まで笑顔でやり続ける彩菜のことをいつの間にか作り笑いに変わっていることに気づかなかった。
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