第2話
「巧ー、おせーぞーー」
友人である伊藤大地が大きな声で言った
「うるせぇよ」
大地は中学生の頃からの親友であり巧の良き理解者であった。
「集合時間に遅れるとはお前は礼儀がなってないな。」
「そんなこと言うお前はこの前1時間遅れただろ。」
「む、お前もなかなか言うようになったじゃないか。」
俺はこんな大地との会話が好きだった。ある友達とならどんなことをしても面白い学生のアレだ。
「そう言えばお前、あの鈴本さんと一緒に帰ってたな。」
よりによってコイツに見られていたとは、、、
もしかしたら1番見つかりたくない人だったかもしれない。もうコイツにバレたのなら誤魔化さずに白状した方が早いだろう
「それがどうかしたのかよ。」
「なんだ、開き直るとはお前としては珍しいな。まあそんなことはいいんだ。お前鈴本さんと仲良かったか?」
「まあ幼馴染と言うやつだよ。でも中学の時くらいから関わることはほとんど無くなったからな。今日話しかけられて正直びっくりしたよ。」
「いいなぁ、俺もカワイイ幼馴染が欲しいぜ、、、」
「相手が売れっ子だといろいろ大変なんだよ。」
巧は異性との付き合いがほとんどなくデートなどもしたことがなかった。久しぶりにカワイイ幼馴染から話しかけられたら勘違いしてしまうだろう。しかし、幼馴染が芸能界にいるので巧もいろいろな芸能人を調べていた。そこではたった一つのスキャンダルによって、人生が壊れてしまった芸能人をたくさん見てきた。彩菜のことを大切に思っている巧だからこそ、巧から彩菜に関わりに行くようなことはほとんどなかった。もし彩菜がファンの人に男の人といるのを見られるとどうなるだろう。少なくともファンは増えることはないだろう。例えそれが同じ学校の同級生だとしてもだ。いつも彼女の活躍を近くから見てきたのだ。彼女が辛いことや苦手なことがあってそれを乗り越えてきたのを知っている。だからそんな彼女の今までの努力を、水の泡にさせたくなかった。それにこの気持ちは気付いてはいけない。彩菜は業界の人と沢山関わっている為、きっと人付き合いも良いのだ。それに俺は異性との関わりは授業のときに考えを話す程度だ。自分に優しく話しかけてからという理由で勘違いをするわけにはいかない。きっとそれは彩菜にも迷惑だ。
「少なくとも俺はこんな話をするためにここに来たんじゃねー。」
「そうだったな。これから学校も始まるし、部活も始まるんだ。今みたいな遊べるときに沢山遊んだかないとな!こうしてる時間はねぇ!早く行くぞ!!」
「お前のせいなんだろ!!」
俺が彩菜にできることは彼女が困ったときに、"幼馴染として"支えてあげることだ。いつもそばにいて隣で支えるのは俺の役割ではない。ただもう少しだけ幼馴染として近くで彼女を支えていこうと思った。
「何笑ってんだ?気持ち悪いぞー。」
「うるせーよ。なんでもないわ。」
(そうだ。この近くには美味しいと話題のケーキ屋があるんだ。最近まで春休みで学校がない為、仕事をこなしてきたんだ。甘いものを買ってあげよう。俺の役割はこういうのなんだ。)巧は自分が彩菜の役に立てるという自分の存在価値を嬉しく思うと同時に、こんなことしかできないと、子供である自分の無力さを実感したのだ。
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