閑話2 怪異の作り方

 陣さんと出会ってから一ヶ月が経った。休みの日に喫茶店に一緒に行ったりして怪異について話しているうちにかなり仲良くなった。そして、今日も陣さんとお茶をしに行く。陣さんを待っていると急遽用事ができてしまい遅れるという主旨のメールが来たので先に喫茶店に行って待っていることにした。喫茶店につくと

「いらっしゃい、今日は一人かい?」

と喫茶店のマスターである尾花大輔さんが話しかけてきた。大輔さんは陣さんの古い友人で、最近喫茶店に一緒に来るようになった俺にも話しかけてくれるようになった。席につきコーヒーを頼む。少しして大輔さんがいつも通りコーヒーとクッキーを持ってきてくれた。大輔さんが経営している喫茶Hanaではコーヒーを頼むとコーヒーにあう手作りのクッキーをサービスしてくれるのである。とても美味しいのでサービスですのは勿体ないのではないかとたびたびそう思ってしまう。コーヒーを一口飲み今日も美味しいなと思っていると、大輔さんが

「涼くんはさ、怪異が作れるって知ってる?」

とすごく興味をそそられることを言われたので

「えっ! 知らないです。そんなことできるんですか?」

と少し興奮気味に言うと

「ちょっと落ち着こうか」

と笑いながら言われてしまった。もうすぐ30になるというのに子供っぽいところを見せてしまい少し恥ずかしかった。

「内緒だよ」 

と言い大輔さんは作り方を教えてくれた。


「一番最初にすることは怪異に名前をつけることだよ」

と言った。名前はシンプルでもいいし複雑でもいいが一つルールがあるのだそう。そのルールというのが干渉するものに関する単語を入れないといけないというものだ。例えば『時喰らい』はそのまま時間に干渉してくるので『時』という単語が入っているし、『心の声』は音に干渉するので『声』という単語がついている。このように干渉するものに関する単語を入れるのが絶対に守らなければいけないルールらしい。

「その次は怪異の対象の設定だよ」

対象の設定とはいわゆる怪異に狙われる条件らしい。深夜の何時から何時の間とかそういう感じだ。対象の条件を広くすると怪異の危険度が下がり、逆に条件を狭く設定していくほど危険度が上がるらしい。時間帯での設定は危険度が上がっても3止まりだが特定のものを拾うなど一見簡単そうだが少し複雑なものだと簡単に危険度が5になってしまうらしい。

「この次が一番大事な怪異が何をしてくるか決めることだよ」

と笑顔で言った。何をしてくるかとはつまりその怪異の起こす異常現象のことだ。見てくるだけや囁いてくるなど色々だ。何をしてくるかが危険度を一番左右しその怪異の特徴を決めるものであると教えてくれた。

「じゃあ、最後に怪異の対処法だよ」

と言ったところで、喫茶店の扉が開き陣さんが入ってきた。

「遅れてすまないね」

と俺に謝ってきたので

「大丈夫ですよ」

と返すとありがとうと言い隣に座った。

「いつものでいいか?」

と大輔さんが陣さんに聞くと頼むとだけ返し大輔さんは準備をしている。

「大輔と何か話していた様子だったが何を話していたんだい?」

と陣さんが聞いてきたので、素直に言って大丈夫かなと考えていると

「怪異の作り方について教えてた」

と大輔さんが言った。すると陣さんは、はぁとため息をついたあと

「どこまで話した?」

と大輔さんに聞いている。対処法のところだよと大輔さんが言うとそこからは私が説明しようと陣さんが話をしてくれた。

「対処法の設定として大事なのは危険度に合わせた対処法を設定することだよ」

と教えてくれる。危険度の低いものは簡単な対処法でよく危険度の高いものは対処法も難しくしないといけないらしい。例外として危険度の低いものの対処法を難しくしても問題はないそうだ。そして、この設定を間違えると怪異が存在できなくなるのだと言われた。

「なんでなんですか?」

と聞いてみると

「矛盾が起きてしまうから」

と言われ細かく説明してくれた。

 大前提として怪異の危険度というものはその怪異が起こす異常によって変わってくるのだそうだ。命を奪うなどの取り返しのつかないものは当然5。逆にちょっとうざいなくらいであれば1。このように怪異の特性によって変わる。そして対処法にも1から5までのレベルがある。そしてそこが同じまたは危険度よりも対処法のレベルのほうが高くないといけない。仮に危険度が5の怪異の対処法が1だったとすると危険度に合わせようとする作用と対処法に合わせようとする作用によって怪異が崩壊するのだそうだ。なるほどいまいちよく分からないがとりあえず危険度と対処法のレベルは同じにすればいいことはわかった。

「一応以上で怪異の作り方の説明は終わりなんだけど何か質問はある?」

と聞かれたので、最初から疑問に思っていたことを聞いてみた。

「大輔さんと陣さんは何で怪異の作り方を知ってるんですか?」

俺の質問は想定外だったのだろう。二人して見るからに動揺している。

「もしかしてまずいこと聞いちゃいましたか?」

と聞くと、

「いや、そういうわけじゃないんだけど」

と陣さんに言われる。すると大輔さんが

「俺達で一体だけ怪異を作ったことがあるからだよ」

ともしかしたらと思っていた答えが返ってきた。

「どんな怪異を作ったんですか?」

と気になったので聞いてみると

「『天井の目』だよ」

と陣さんが言った。

「えっ! あの怪異ってお二人が作ったんですか!」

と言うと、二人とも俺が怪異に襲われたのを知っていたので揃ってごめんねと謝ってきた。

 俺は怪異に襲われた日陣さんに連絡をしたことでお茶をすることになった。そのおかげで今こうして大輔さんとも話ができている。なので俺は二人のことを許した。二人ともありがとうと言った。その後俺達はまたコーヒーと雑談を楽しんだ。

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