閑話1 天井の目

 怪異と関わるようになってから少したった土曜日。ピピピピッという目覚ましの電子音で目を覚ました。時刻を確認すると8時30分。せっかくの休日だしもう少しのんびりしようと思い手を伸ばし目覚ましの音を止めた。そうしてしばらくベッドで横になったまま天井を見ていると、天井の模様が大きな一つ目に見えてきた。模様が顔に見える現象ってたしかなにか名前がついていたよなと思い横になったまま考えていた。数分が経ち、顔パレイドリアだと思い出したとき、ちょうど目に見えていたものがゆっくりとまばたきをした。俺はその光景に唖然としてしまい、動けなかった。いやこれは夢だ、そうに違いない。と、そう自分に言い聞かせ目を閉じる。再び目を開けたときにはもう消えていると信じ目を開ける。俺の望みも虚しくそこにはまだ目があった。

「うわぁーー!」

と大きな声を上げる。土曜日の8時30分過ぎ。まだお隣さんは寝ているかもしれない。そんなことを考える余裕は今の俺にはなかった。急いでベッドから飛び出した。そのせいで足をぶつけて痛めた。痛みを我慢しつつ急いで陣さんに電話をした。有り難いことに陣さんはすぐに電話に出てくれた。なので今起こっていることをそのまま伝えた。すると

「多分それは『天井の目』じゃないかな」

と陣さんは言った。

「この怪異って何してくるんですか?」

と聞いてみると

「ずっと見てくるだけで特に何もしないよ」

と言われた。ずっと見てくるのか。それはそれでなんだか嫌だなと思い

「対処法ってあるんですか?」

と聞いてみると

「放置してたらそのうち消えけるけど、今すぐ消したいなら長いもので目を突けば消えるよ」

と教えてもらったので、ありがとうございますと言い電話を切った。すぐに家の中にある天井に届きそうな長さのものを探す。ほうきを見つけたので早速試してみると消えた。これでひと安心と思い、陣さんに退治できたことの報告そして、朝急に連絡した詫びと感謝をメールで送った。しばらくすると陣さんから午後お茶に行かないかという旨のメールが返ってきたので行きましょうと返事をした。陣さんとは駅で待ち合わせをした。陣さんが先に着いて待っていたので

「お待たせしました」

と言い駆け足で近づく。大丈夫だよと言ったあと

「それじゃあ行こうか」

と言い陣さんが歩き出したのでついていった。どこに行くのかなと思いながら歩いていると喫茶店に着いた。喫茶Hanaと書いてある。陣さんが店に入って行ったので俺も続いて店に入る。すると

「いらっしゃい」

と男性が声をかけてきた。

「おぉー、陣いらっしゃい」

と陣さんに声をかけている。陣さんもいつものと言って注文をしている。どうやら知り合いのようだった。

「お兄さんは何にする」

と笑顔で聞かれたので

「おすすめってありますか?」

と聞いてみると

「おすすめって言われると色々あるけど、やっぱりうちはその日によって変わるブレンドコーヒーかな」

と言われたので、それでお願いしますと言うとはいよと言い準備を始めた。

「ここってよく来るんですか?」

と陣さんに聞くと

「結構来るよ。普通にコーヒー美味しいし。それに大輔は古くからの友人だからね」

と笑っている。そうなんですねと言ったところで

「古くからの友人だなんて照れることを言ってくれるじゃないか」

とさっきの話を聞いていたのだろうコーヒーとクッキーを持ってきてそう言った。クッキーは頼んでないんだけどなと思ったが

「クッキーはうちのサービスだから」

と言われた。なるほどと思い早速いただくことにした。コーヒーは香りもよく苦味が強くなく飲みやすくてとても美味しい。次にクッキーもいただいてみる。サクッとした食感に甘すぎずちょうどいい甘さでとても美味しい。コーヒーと合わせて食べるのにちょうどいいなと思っていると

「美味しそうに食べてくれるね」

と嬉しそうに笑っている。そして

「そういえばまだ自己紹介してなかったね。俺はこの店のマスターの尾花大輔です。今日は来てくれてありがとう。よろしく」

と笑顔で手を差し出されたので

「高橋涼です。よろしくお願いします」

と返し握手をした。ちなみに喫茶店の名前は名字が尾花なのでそこから取ったらしい。

 話していると意外なことに大輔さんも怪異のことについて理解のある人だった。なので、コーヒーを楽しみながら陣さんと大輔さん、そして俺の三人で怪異などについて色々な話をして休日を楽しんだ。


怪異レポート

 天井の目:朝起きてぼーとしていると天井に現れる怪異。対象の人にのみ見える。上から視線を感じるだけの珍しく無害な怪異。全く実害がないので危険度は1。対処法はしばらく放置しているか長いもので目を突こうとすると消える。

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