一般通過JK、天御心流セミナーを開催する①

「こんまよー。今日はみんなお馴染みのダンジョンでも、いつもの私の部屋でもないところへ来てます! ちょっと見てみて?」


 カメラを周囲に向けるとそこは広々とした体育館だった。


 ・体育館っぽい?

 ・結構広そうなとこだね


「そうなんだ。今日のために市の体育館をお借りしてます!


 ちょっと前にSNSで告知してたんだけど……」


 ざわつくリスナーの反応を楽しむように、舞夜は画面の外へ手を伸ばす。


 舞夜が取り出したのは自身のスマホだった。


 そのままスマホの画面をカメラに向けて映し出す。


 そこにはこんな告知が表示されていた。


 『天御心流セミナー開催! もっと強くなりたい人、武術に興味のある人、大募集! 参加希望の方は以下の連絡先までご連絡ください! たくさんの連絡待ってます!』


 ・そういえばつぶやいてたねー

 ・応募したけど抽選はずれた…

 ・気になってたけど遠かった

 ・どんまい


「そうなの! 反響が思った以上に大きくてびっくりしちゃった」


 舞夜はちょっと照れくさそうに頬を掻く。


 ・これまでのダンジョン探索見てたら興味出てくるよなw

 ・武術家系ジョブは気になってそう

 ・いや俺探索者じゃないけど応募したよw

 

「応募総数は、なんと100人近くになったんだよ。すごいよね! 天御心流に興味持ってくれる人がこんなにたくさんいてくれるなんて……!」


 天御心流を世に広めるのは舞夜の目標の一つである。


 目標へと一歩近づいたことによる喜びで舞夜の声は弾んでいた。


 ・100人ってマジかw

 ・すごい!

 ・まあ生の舞夜ちゃんに会える機会だしなw

 ・天御心流の未来は明るいな


「でも、せっかく応募してくれたのに全員に参加してもらうことができなくて本当にごめんねっ。


 今回は10人までに限定させてもらっちゃった。今の私の力量だと、あんまり大人数だと教えきれる自信がなくて……」


 ・10人までか

 ・狭き門だなw

 ・当選組かわってくれーーーー


「せっかくの機会だから今日の配信はそのセミナーの様子を配信を通してお届けするね。

 リスナーのみんなに、画面越しだけど天御心流を体験してもらえたらいいな!」


 ・配信してくれるだけで助かる

 ・外れた雑魚、おりゅ?w

 ・今コメントしてるってお前もハズレ組だろw


「というわけで参加者の皆さんです! 事前に配信で顔出し許可取ってるのでご心配なく~」


 画面には参加者の面々が映し出された。


 緊張気味の人もいれば、嬉しそうに手を振る人も。


 老若男女、様々な人が舞夜のセミナーに集まっていた。


 ・色んな人がいるね

 ・みんな探索者?

 ・羨ましいいいいいいいいい


「みなさーん、お集まりいただきありがとうございます!

 これから天御心流セミナーを開催しますので、よろしくお願いしますっ!」


 舞夜の宣言に参加者から大きな拍手が沸き起こる。


 その様子を見て舞夜は恥ずかしそうに笑みを浮かべながらも、期待感に胸を躍らせた。


 ・めっちゃ盛り上がっとるw

 ・そりゃ生舞夜ちゃんだからな

 ・美少女JK師範とか盛り上がらないほうが失礼だろ!


 リスナーたちの期待のコメント、参加者たちのわくわくした瞳。


 舞夜はちょっとだけ緊張しながらも、すぐに気を取り直す。


「えーと、まずは天御心流という武術についてちょっとだけお話させてくださいっ」


 参加者を見渡して、舞夜が静かな口調で語りだす。


「と言っても、今日の本題は天御心流を体験してもらうことなのでざっくりといくね。

 天御心流は数百年もの間、天野家の一族で脈々と受け継がれてきた武術なんだ」


 ・数百年ってすごいな

 ・そういえば一子相伝だったって話だよね

 ・漫画の世界じゃんw


「ただ、しっかり体系化を進めたのはお父さんの代なんだ。それまではずっと口伝だったから技の名前とかもなかったらしいんだよね。

 教える上でわかりやすくするために名前をつけたりしたみたいだね」


 舞夜の言葉に参加者もリスナーも真剣に耳を傾けている。


 文献に残されていない、口伝のみの武術。


「なぜ一般公開へ門戸を開いたか、って言うとね。今の時代じゃ考えられないくらい伝承の過程が厳しかったらしいの。まあ時代にそぐわなくなってきた感じだね。

 だからといってこのまま失伝させちゃうのはもったいないから、内容をマイルドにしてもっとたくさんの人に知ってもらおうとしてるんだ」


 そこには、天御心流を守り、更に発展させていきたいという舞夜の思いが込められていた。


 ・たしかに貴重な技術がなくなるとかもったいないもんな

 ・舞夜ちゃん立派!


「なので、今回みたいな機会ができてほんとに嬉しいの! なにか一つでも持って帰ってもらえたらなによりですっ」


 参加者たちの目をひとりひとり見つめ、舞夜はにっこりと微笑んだ。

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