一般通過JK、サンドバッグと戯れる③

「はい、こんまよ。またまたスライムに質問たまってたので答えたり答えなかったりするよ」


 ・あれ?外?

 ・てかここって…

 ・親の顔より見た風景

 ・もっと親の顔見ろ


「平原ダンジョンに来ちゃいました」


 ・しってた

 ・だろうねw

 ・エリゴブくんしばきにきたん?

 ・舞夜ちゃんエリゴブ殴ってるとき生き生きしてるもんね


「いやいやっ人聞き悪いな~。私だって好きでやってるわけじゃないよ?


 あ、そうそうこの腕輪面白い機能が生えてきたんだよっ」


 ドローンに向かって腕輪を見せびらかすように腕をひらひらと動かす。


「裏でエリゴブ倒してたんだけど……」


 ・やっぱり普段からいたぶってるじゃんw

 ・化けの皮が剥がれたな

 ・舞夜ちゃんがエリゴブいじめ好きでも気にしないよ!


「ちょっとちょっと早とちりだってそれ。天御心流の技法を練習するのにめちゃめちゃちょうどいいんだよ。

 人型で手加減しなくて良くて、何度でも復活させられて……。

 そんな便利なの使わないほうがおかしいよ!」


 ・なるほど

 ・人相手にやったらもう殺人だよ

 ・うーんまあ言わんとしてることはわかる


「そんなわけで、腕輪の模様に合わせて指を添わせるとほら! ウィンドウが出てくるの」


 ・え?

 ・舞夜ちゃん幻覚みえてない?

 ・なにも変わらんが


「あれ? ほんと?」


 舞夜の指が腕輪から飛び出しているウィンドウを操作する。


 リスナーにとっては何も見えてないらしく、舞夜の指は空をさまよっているようにしか映っていなかった。


「まあいっか。これをこーしてこうするとー……はいっ!」


 次の瞬間、舞夜の姿はぶれて、先程までいた草原とは別の場所に移動していた。


 ・なんだこれw

 ・ワープした?

 ・これボス部屋じゃん


「正解! なんとボス部屋までワープできちゃうだ! すごくない?」


 ・すごい

 ・効率よくエリゴブしばけるね

 ・かわいそう…

 ・ちなみにこの機能いつ使えるようになったの?


「んー20匹くらい倒してからかな気づいたのは」


 ・めっちゃ倒してて草

 ・裏でどんだけ倒してんだよw


「今回来てた質問で多かったのが"衝鳴"って何? だったので、今回もエリゴブで実演しちゃおうかな、と思うよ」


 ・わーい

 ・新技きちゃあああああ

 ・待ってました!


「これも衝芯と同じでスキルじゃなくて天御心流の技になるね」


 リスナーと会話を続けながらも、背後から何度も攻撃を繰り返すエリゴブの攻撃をすべてかわしていた。


 気配察知の極まった使用方法である。


 ・エリゴブくん必死で草

 ・その場からほぼ動いてないのになんで当たらないんだ…

 ・ひょいっひょいっ


「じゃあまず普通に使ってみせるね、"衝鳴"!」


 振り向いた舞夜は無造作に拳を振るう。


 直撃の瞬間、雷鳴のような音が響く。


 エリゴブは吹き飛ぶでもなく、その場に立ち尽くし静かに崩れ落ちた。


「こんなかんじー」


 ・音が衝芯とはぜんぜん違うな

 ・あー衝芯のときはもっと重い音だったかも

 ・殴るってより叩いてる、のか…?


「おっ! 見抜いてる人いるじゃん! ほぼほぼ正解かも。

 じゃあゆっくりやってみるね」


 ドローンに向かって、誰の目でもわかるようなゆっくりとした動きで衝鳴を実演する。


 舞夜はほとんど手を握らず力の抜いた状態で腕を振るう動作を見せる。


「この拳を握らないのがポイントなんだ」


 ・なるほど

 ・力を入れすぎないのがコツなのか

 ・でもそれだと痛くなさそう


「でね、相手に当たるギリギリまでこの状態でインパクトの瞬間だけキュッと拳を締める。

 そしたらすぐに引く。まとめると弾くように打ってるんだ」


 今度は素早い動きで実演する。


 ・ゆっくりやってもらわないと違いわからん

 ・たしかにw

 ・同じに見えるw


「うん、それも狙ってるからね。同じ挙動で異なる攻撃が来るってイヤでしょ?

 モンスター相手だとそこまで考えないのかもしれないけどね」


 ・理にかなってるな

 ・てか構えてないのに威力出てるのがやばいんよ


「ま、やり方はこんなところ。実際どんな効果の違いがあるかっていうはね。

 衝鳴は波紋、衝撃だけを相手の内部に伝える技なんだ。だから、威力的にはたいしたことないの」


 ・でもエリゴブやスラミーは即死してるけど

 ・信用ならんなw

 ・わかるようでわからん


「スラミーで言うと核だけに衝撃を与えてて、エリゴブで言うと心臓を狙ってる感じ。

 内蔵って鍛えられないじゃん?

 当てる場所や浸透させる向き、深さをしっかりイメージできてれば必殺の一撃になりうるんだよ」


 舞夜が腕輪を操作してエリゴブを蘇らせる。


「いまのを踏まえてもっかいやってみるね」


 湧いてきた次のエリゴブにも容赦なく衝鳴を叩き込む舞夜。


 今回の一撃も寸分たがわず、急所を捉えているようでエリゴブは出現から数秒で命を散らした。


 ・これが天御心流の真髄か

 ・理屈はなんとなくわかった

 ・こんなあっさりできるのやっぱおかしいわw


「最初はイメージするの難しくて全然だったよ。ひたすら練習あるのみ!次第にイメージも無意識にできるようになるしね。

 今回は"衝鳴"って技法についての解説でした!

 説明下手じゃなかったか心配だったけど楽しんでくれたようでなにより!

 それじゃあ今日はこのへんで終わろうかな。また次の配信で会おうねっ! おつかれさまー!」


 そう言って、舞夜は手を振った。


 ・おつ!

 ・天御心流セミナー開いてほしい!!

 ・お疲れ様ー

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