一般通過JK、スラミー王国へ挑む with 美桜⑥

「よーし! 門番も倒したことだしさっそく中に入ろう!」


 舞夜の元気な声に促され、二人は城門をくぐり抜けて、城内へ足を踏み入れる。


 外側と同じくゼリーでできた内部。

 

 視界に映るものすべてがゼリーであった。

 

 玄関ホールに入ると、兵士スラミー二人を取り囲むように待ち構えていた。

 

 ・いよいよゴールが近づいてきたね

 ・美桜ちゃんも戦えるようになってきたなーw


 今回の戦闘では美桜も積極的に参戦する。

 

 舞夜が先手を打ち、体勢を崩したスラミーへ美桜が素早く手を伸ばす。

 

 純魔力操作で魔力を一気に送り込み、スラミーを内部から爆発させた。

 

 二人の即席のチームワークは良好で、順調に城内の探索を進めていった。

 

 ・近接でもスラミー相手に戦えるのすごい

 ・ここって魔法ジョブの配信者ばかりだからなw

 ・美桜ちゃんは魔法?だぞ

 ・あれ実質物理みたいなもんだろw

 ・舞夜ちゃんになんてストレートににぶん殴ってるしなwww

 

 3度目の階段を登ったとき、ひときわ大きく装飾の豪華な扉が二人の前に現れた。

 

「いよいよボスっぽいね。いける?」


「魔力はまだまだ余裕あるので大丈夫ですっ!」


「頼もしい! それじゃあいきますかー」


 舞夜はいつもどおりのテンションで扉に手をかける。

 

 美桜は少し緊張した様子でボスの扉を見つめていた。

 

 ・ボスはキングスラミーだっけ?

 ・そうでかいスラミーって感じのやつ

 ・こいつもちょんって触られて爆発四散するんだろうな…

 

 舞夜が勢いよく扉を開くと、まばゆいほどの七色の光が二人の視界を奪う。

 

「うわっ!」


「な、なんですかこの光……!?」


 眩しさに目を細めながら、二人は慎重に部屋の奥へ進む。

 

 光が収まるにつれ、その正体が明らかになる。

 

 王の間の奥、豪華な玉座に鎮座するのは巨大なスラミーだった。

 

 ただの大きなスラミーではない。

 

 全身をまばゆいばかりの虹色に発光させているその姿は、ゲーミング機器のようだった。

 

「こ、これってもしかして……」


 美桜が震える声でつぶやく。


「えっなになに」


 ・うおおおおおおおお

 ・キターwww

 ・レアボスだああああああ

 ・めちゃ光ってて草


「レアボスですっ! ゲーミングキングスラミーですよっ!」


「ほほう、確かにゲーミングカラーだっ。通常ボスとどう違うの?」


「すみません、私も噂に聞いただけで詳しくは……。でも、かなり手強い相手なはずです……!」


「そしたら慎重に行こう!」


 ゲーミングキングスラミーの輝く瞳が二人を捉える。


 雄叫びは生物それとは異なる、不気味な電子音として部屋中に響き渡った。


 二人は神経を研ぎ澄まし、相手の出方をうかがう。

 

 ゲーミングキングスラミーはその巨体をさらに大き膨らませると、虹色の輝きが一層増していく。


 次第に光は凝縮していき、全身の膨らみが収縮するのと同時に無数の光弾が放たれた。

 

 ・目がチカチカする

 ・弾幕シューティングゲー始まったw

 ・避けるの無理だろこの量…

 

 猛スピードで迫る光弾の雨。

 

 舞夜はとっさに美桜の手を取り、光弾をくぐり抜けるように走り出す。

 

 だが、あまりの物量にじりじりと壁際に追い詰められゆく。

 

「美桜ちゃんッ! 私の後ろに!」


 舞夜は正面に向き直ると、両手に気のオーラを集中させて、手刀で次々と光弾を打ち落としていく。


 その必死な姿を見て、美桜は思わず目を伏せた。

 

 結局、自分は守られてばかりなのだろうか。

 

 美桜の心に暗い影がさしそうになったそのとき、脳裏をよぎったのは舞夜の顔。

 

 美桜の力を信じて疑わない、そんな舞夜の姿が心に焼き付いている。


(そうだ、舞夜様は私を信じてくれている。だったら、私が、私自身が自分を信じなくちゃ……!)

 

 美桜は顔を上げると、全身全霊で純魔力操作に集中する。


「舞夜様っ!」


 美桜の純魔力が形作ったのは、魔力で織りなす障壁だった。


 実力があるなら、光弾と同じ属性の魔力を吸収できたかもしれない。

 

 あるいは、真逆の性質に魔力を変化させて弾き返せたかもしれない。

 

 だが、現在の美桜の技量ではどちらも夢のまた夢。

 

 今の美桜にできることは力任せに魔力を積み重ねて、分厚い魔力の壁を作るだけ。

 

 それでも、障壁に光弾がぶつかると、威力は大幅に削がれていく。

  

「おっ、やるじゃん美桜ちゃん!」


 舞夜はにやりと笑みをこぼす。


 ・新技キター

 ・純魔力のポテンシャルが垣間見えたな

 ・がんばれ!!!


 やがて、光弾の雨は止み二人は完全に乗り切ることに成功した。

 

 間髪入れず、舞夜は敵の懐めがけて飛び込んでいく。

 

 美桜も舞夜を追うように必死で駆け出す。

 

 しかし、舞夜が攻撃をしかけようと間合いに入ったそのとき。

 

 ゲーミングキングスラミーの全身から、凄まじい閃光がほとばしる。

 

 その輝きに思わず舞夜の足が止まる。

 

 そして閃光がおさまったとき、ゲーミングキングスラミーは2匹に分裂していた。

 

「増えたんだけど!?」


 ・ワロタw

 ・ボスのくせに分裂するのかよ!?

 ・レアボスだからってやりすぎだろw

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