一般通過JK、スラミー王国へ挑む with 美桜⑤

「あっスラミー城が見えてきましたね」


 美桜が指差す先に、カラフルな城が姿をそびえ立っている。


 しばらく進むと、その様相がはっきりしてくる。


 城門に踏み入れる前に二人は思わず立ち止まった。


 城は巨大なゼリー状の物体だった。


 外壁は青いゼリーで作られていて、太陽の光を受けると反射して輝いてる。


 お城の屋根はピンクのゼリー、その上には白いクリームのようなゼリーの尖塔が立ち並んでいる。


 ・ファンタジーの世界だ

 ・うおおすごいw

 ・現実じゃありえない建造物が平気で現れるよなw


「わぁ、すごい! 本当にゼリーでできたお城だ!」


「キラキラしててきれいですね」


「青の部分はソーダ味かな……」


「舞夜様、食べたらだめですよ!?」


「あはは冗談冗談。でもお腹空いてきちゃったな。あとでスイーツでも食べに行こうよ」


「ぜひお供しますっ」


 ・舞夜ちゃん腹ペコでかわいい

 ・スイーツデート配信はあるんです?

 ・ないだろw

 ・ここまで緊張感ゼロwww


 談笑しつつ立ち入ろうとした二人を遮るように現れたのは2匹のスラミーだった。


 道中に出てきたスラミーと違い、キリッとした目をしていてただものではない雰囲気を醸し出している。


 1匹は身体に盾を装備し、もう1匹は剣を装備していた。


 装備というか身体にくっついていると言ったほうが正しいだろうか。


 2匹のスラミーの前に舞夜が歩み寄っていくと、盾スラミーが警戒するように剣スラミーの前方に出る。


 舞夜の先手はスキルなしの衝芯。


 盾スラミーが舞夜の攻撃を受け止めた瞬間、剣スラミーが舞夜へと斬りかかる。


 咄嗟に身をかわすが、体勢が崩れた隙を狙って盾スラミーが体当たりを仕掛けてくる。


 舞夜は盾の衝撃を受けて、後方に吹き飛ばされた。


「大丈夫ですか!? やっぱり私もお手伝いさせてください!」


「後ろに跳んで衝撃逃がしたから、なんともないよ」


 言葉の通り、舞夜は平然としていて本当に体当たりの威力は完全に受け流していた。


 誰もいないところへ振り下ろされた剣の威力は地面が陥没するほどである。


「うんうん、物理耐性高いのはたしかだね」


 スラミーを物理的に倒すには、剣や槍などでスラミーの体内に浮かぶ核を一突きのうちに破壊するしかない。


 ただし、核はスーパーボールほどの大きさで、しかも体内を動いているので難易度は高い。


 今度は2匹のスラミーは同時に動き出した。


 舞夜の攻撃が致命的でないと察したためだろう。


 剣スラミーがぽよぽよではなくピュンッピュンッと素早い動きで、剣を振るう。


 意外、舞夜の選択は拳を剣に合わせたのだ。


 雷のような鋭く高い音が響く。


 美桜が息を呑んでその光景を見ていた。


「やったっ! できた!」


 舞夜がガッツポーズとともに喜びの声を上げた瞬間に、剣スラミーがぐずぐずに溶けて消える。


「えっ!?」


 ・なにが起きたw

 ・手は大丈夫そうでよかった

 ・気の操作使ったように見えたけど一瞬すぎてわからんな

 ・使ってたか?


 美桜とリスナーたちは今の出来事に戸惑っているようだった。


「おお、気付いた人いるねー。今、2つ新しいことしたんだ。

 もう1回やるからちゃんと見ててねー?」


 舞夜が盾スラミーとの距離を詰める。


 移動している間に拳を赤い気のオーラで纏っていた。


「衝鳴ッ!」


 スラミーは迫る拳の前に盾を入りこませる。


 舞夜の拳は盾を叩いた。


「はい勝ちー」


 少しの間をおいて盾スラミーも剣スラミー同様に核だけを破壊され溶けて死んだ。


 ・なるほど

 ・部分的に気のオーラ使ったのね

 ・2つ目は新しい技ってことかな?

 ・ぶっつけ本番でよくやるよw

 ・てか核だけ狙って砕くのやべーな


「リスナーさん当たり! あと前回の反省を得て一瞬だけオーラを纏えるように練習したんだー」


「さすがですっ」


 美桜が胸元で手を合わせ、尊敬の念を込めて舞夜を見つめる。


 ・消耗が酷いって言ってたもんね

 ・対策するの早くて草

 ・物理耐性高くても意味ねーなw

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る