一般通過JK、スラミー王国へ挑む with 美桜④
美桜は数多くのスラミーの犠牲を乗り越え、純魔力操作をみるみる上達させていった。
舞夜はその様子に目を細め、優しく問いかける。
「魔力を流し込む感覚、だいぶ掴めたんじゃない?」
「純魔力もなんとなく、動かしやすくなった気がします」
「うんうん、それならよかった! それじゃ私にもガーッと魔力流し込むやつやってみてよ」
「え、ええ……?」
美桜だけでなくリスナーたちも驚きを隠せない。
・そんなことしたら舞夜ちゃんまでパーンて
・流石にヤバない?
・舞夜ちゃん冷静に!
「ゆっくりでいいよ」
舞夜の手に美桜が触れると、ゆっくりと魔力を流し込み始める。
数多くのスラミーの犠牲のおかげで、純魔力操作の熟練度は着実に伸びていた。
しばらくしてから、美桜は眉を潜めて申し訳無さそうに告げる。
「あの、すみません。これ以上もう送り込めないみたいです」
「おーそうなったか」
・爆散しないでよかった…
・怖い実験しないでw
「気配察知での感覚をざっくり言葉にしてみると、スラミーが爆散するのは魔力を受け入れる器が小さくて脆いんだと思う。
だから、器より多くの魔力を注ぎ込まれたとき爆散しちゃったんじゃないかな」
舞夜は気配察知によって感じ取った感覚を咀嚼するように、慎重に話し始めた。
「個人差あるだろうけど、人はもっと大きな魔力の器を持ってて、なおかつ器が頑丈なんだと思うよ。
で、器の強度は言い換えると魔力の抵抗力みたいな?
んー例えば風船とタイヤの違いってところかなあ。
空気が満タンなときに更に入れようとしてもタイヤだと押し返す力があるでしょ。
ただ、逆に言うと抵抗力さえも超える勢いで魔力を流し込めるなら人間でさえも……いけちゃうかもね」
・わかるようなんかんないような
・スラミー限定の技だったか
・柔らかそうな敵ならパーンできんのか?
・魔力抵抗率にもよるんじゃね?
「あっ……そういうことですか」
美桜は舞夜の説明が腑に落ちたようだった。
納得の表情の中には隠しきれない落胆の色もある。
舞夜の言葉の通り、これ以上入らないというところでさらに流し込めるような出力があれば抵抗力を突き抜けることも可能だったかもしれない。
だが、今の美桜にはスラミーを爆散させるのが限界であった。
せっかくの攻撃手段がスラミー限定というのはあまりにも心もとない。
「まだ手を離さないで」
離れようとする美桜の手を舞夜が繋ぎ止める。
「私の魔力感じ取れてるよね。
純魔力操作でゆっくりでいいから動かせるか試してみて?」
「はい、やってみますっ」
舞夜の体内魔力へと意識を集中させる。
他人の体内魔力を操作するのは、ただ単に魔力を流し込むのとは次元の異なる難しさがあった。
目をつむって魔力を操作しようと、必死な美桜の額にはうっすらと汗が浮かぶ。
尋常ではない集中力。
言われてすぐに実行できる行動力。
舞夜は美桜の才覚の片鱗を感じずにはいられなかった。
美桜の集中を乱さないように舞夜は静かに、優しげな瞳で美桜の頑張りを眺めていた。
・何を見せられてるんです?w
・これは、なんかいいな
・目覚めかけてるやついて草
「ッ!」
「おお! なんかくすぐったい感覚する!」
「はぁ……はぁっ……。
ほんの少しだけ動かせました。でも今まで感じたことないくらいの消耗が……」
息を整えながら美桜は達成感の滲んだ笑みを浮かべていた。
「すごいね! えらい! がんばった!」
舞夜に頭を撫で回されて、気恥ずかしそうにしながらも抵抗することなく素直に称賛を受け入れていた。
「自由に体内魔力を操作できるようになったらできること広がるねっ! あとは練習あるのみ!」
美桜の成長を自分の事のように嬉しそうに語って、舞夜は笑う。
「ありがとうございますっ。
あの、見当違いかもしれませんが、もしかすると舞夜さんの衝芯のように使えるんでしょうか……」
「気付いちゃったね? 使いこなしていけば同じことできるはず!
そしたらどうやって浸透させると効果的に破壊できるか教えてあげる!」
「お願いしますっ!」
憧れの人と同じ技を使えるかもしれないという可能性に、美桜の瞳に希望が満ちる。
そして、同時に自らのスキルへの自身も芽生え始めていた。
「そしたら次は私の番だね。美桜を見てて思いついただけでできるかわからないんだけど、試したくなっちゃった」
無邪気な笑みを浮かべる舞夜にリスナーが沸き立った。
・次は舞夜ちゃん覚醒ターンか
・更に強くなるのかよw
・脳筋ぽい行動ばっかなのに戦闘IQ高いのほんと草
・生まれながらの戦闘民族…w
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます