一般通過JK、スラミー王国へ挑む with 美桜③

「じゃあ次は純魔力を攻撃に応用できないか、考えてみようか。

 私が思うに美桜ちゃんの純魔力操作って可能性の塊なんじゃないかな」

 

 舞夜は楽しげに瞳を輝かせ、弾んだ声で提案する。


 美桜は幼馴染パーティでのダンジョン探索を思い出すように言った。


「もちろん、攻撃に使えたらって考えたことは何度もあります。

 仲間が怪我したり、大変な目に合うたびに力不足を感じるんです……」


「頑張らないといけない理由ができたねっ! それじゃあ私の思いつきに付き合ってもらっちゃおうか!」


「はいっ!」


 ・いい返事!

 ・できた後輩だあ

 ・舞夜ちゃんみたいな先輩がほしい


 舞夜が試してほしいとお願いしたのは、美桜が先ほど見せた純魔力の塊を放つ行為だった。


 標的は、無邪気にぽよぽよしている赤スラミーだ。


 美桜は頷いて赤スラミーへ向かって魔力球をぶつける。


 舞夜はその様子を気配察知を用いてじっと観察していた。


 魔力の感覚に集中することで魔力の気配ともいうべきものを、捉えることが可能になっているのに気づいたのだ。


 純魔力は透明なため視認するのは困難だが、気配としては圧倒的な存在感を放っていたのだ。


 赤スラミーのもつ魔力とは桁違いの魔力量が、美桜の魔力球に内包されていた。


 観察のために何度かお願いしても、美桜に疲弊した様子はない。


「ありがと、一旦ストップ。

 うーん……。純魔力が赤スラミーに当たると体表で弾かれるように流れて霧散してる感じがするね」


 舞夜は気配察知で感じ取ったものを、言語化して伝えながら赤スラミーのもとへすたすたと歩み寄った。


 両手で赤スラミーをすくって腕の中に抱きかかえるように持ち上げた。


 赤スラミーは攻撃されているとは認識していないようでプルプルしているだけで、抵抗らしい抵抗は見せない。


「えっ、大丈夫ですか?」


「へーきへーき。この子に魔力譲渡してみてくれる?」


「で、できるでしょうか……」


 不安げにしつつも、言われた通り赤スラミーに手を当てて意識を集中する。


 赤スラミーの持つ魔力に、純魔力の質を溶け合わせるようにイメージしていた。


 すると、赤スライムが嬉しそうに振動し始める。


「……できたみたいです」


 美桜は戸惑いがちに告げる。


「これってもっと強く流せたりする?」


 美桜が流し込む魔力の量を増やすと、赤スラミーの振動が激しくなりついにま舞夜の腕から飛び出してしまう。


「あっ……!」


 舞夜と美桜の声が重なる。


 地面に降り立った赤スラミーはでたらめな動きで跳ね回り、ぴたりと不自然なくらいに静止した。


 次の瞬間、水を叩きつけたような音とともに赤スラミーは爆散してしまった。


 周囲には赤いゼリーが飛び散っている。


 ・突然のグロ

 ・ワロタwww

 ・さっきまで元気にぽよぽよしてたのに…

 ・赤いから余計にえぐいわw

 ・美桜ちゃんがやったの?


「あはは、思ってたよりすごいことになっちゃったね」


 舞夜の乾いた笑いが虚しく響く。


 美桜は今の出来事がすぐに飲み込めなかったようで呆然としていた。


「今の感覚忘れないうちに次行ってみよう!」


 舞夜に言われるがまま、あたりにいたスラミーを次々爆散させていった結果、視界にはスラミーはもう一匹もいなかった。


 ・さびしい風景になったね…

 ・途中から慣れてきてあっさり爆散させてて草

 ・かわいい顔してるのに美桜ちゃん怖いよ


「慣れてきたみたいだしもう一歩進みたいんだけど……。いなくなっちゃったねー。


 しょうがないから奥まで進もうか~」


「いまのでも十分すぎるくらいの攻撃手段だと思うのですが……」


「スラミー相手だから通用したんじゃないかなーって思ってね。

 もっと効率よく効果的に破壊できるように追求したら、もっともーっと強くなれちゃうよ?」


「舞夜様みたいに……」


 ・お目々ぐるぐるでかわいい

 ・洗脳されちゃった…w

 ・結果的に本人のプラスになるしそっとしとこう…


 舞夜のささやきにそそのかされた美桜は、新たな獲物を求めてスラミー王国の奥地へと突き進んでいった。

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