一般通過JK、D級岩山ダンジョンへ挑む②

 ・次からプチゴーレム出てきても余裕だな

 ・またしてもワンパンw

 ・D級もあっさりクリアしちゃいそう

 

「んー慣れてないことしちゃったからあっさりはきついかも」

 

 右手をドローンの前に掲げる。


 舞夜の右手はプチゴーレムを殴った衝撃でひどいありさまだった。


 グーにすることもできず指はだらんとさせたままだ。


 ・うわっめちゃ痛そう…

 ・え!?大丈夫?

 ・切り上げて帰ったほうがよくね?


「治癒があるから見た目ほどひどくはないよ。

 ただ同じ手段で倒すのは厳しそうかな」


 ・無理しないで

 ・見た目ほどひどくないって血だらけなんだけど!?

 ・でも次からどーすんのさ

 ・スキル使おうぜ


「あともういっこ試したいことがあるから、そしたらスキル使って攻略してくよっ」


 勾配のある道を進んでいると、散発的にモンスターが襲いかかってくる。


「うわっ2匹も出てきた」


 舞夜の前に立ちはだかったのは2匹のゴブリンだった。


 通常種ではなく灰色の姿をした岩山ダンジョンに生息するストーンゴブリンである。


 ・D級から連携して襲ってくるから注意

 ・気を付けて!

 ・たしかに知性を感じる瞳をしてるな

 ・ほんとかよE級ゴブリンと同じ顔だろw


 リスナーが心配する中、ストーンゴブリンが動き出す。


 1匹は直線で突進し、もう1匹は舞夜の背後に回り込もうとしている。


「なるほどっ、挟み撃ちってわけだ!」


 舞夜は素早く状況を判断すると、正面のストーンゴブリンに自ら接近する。


 接敵距離を誤ったゴブリンがほんのわずかに怯むのを見逃さず、舞夜の蹴りが炸裂する。


 勢いを乗せた脚が鞭のようにしなり、ストーンゴブリンの頭部を捉えた。


 吹き飛ぶのを確認することなく、振り向きざまの蹴りがもう1匹に直撃した。


 仰向けになったストーンゴブリンの首目掛けて体重を乗せた踏みつけで、頚椎をへし折る。


 死角から石が投げつけられるも舞夜は危なげなくかわす。


 1対1では相手になるはずもなく、戦闘を終えた。

 ・すげええええええ

 ・余裕じゃん

 ・複数体相手って初めは戸惑うもんなんだけどなw

 ・ないす!


「ありがとっ! この調子でどんどん進んでくよ!」


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「はぁ……はぁ、だいぶ登ったね……」


 舞夜は息を切らせながら勾配のきつくなってきた岩山の道を奥へと進んでいた。


 道中ではプチゴーレム、ストーンゴブリンの他にも岩山に生息するモンスターとの戦闘を繰り広げ体力も消耗している。


 ・舞夜ちゃん大丈夫?

 ・もうそろそろボスの扉見えてくるはずだけど

 ・がんばって!


 リスナーたちの心配そうなコメントが流れる中、舞夜は意識して明るい声を出した。


「大丈夫、このくらいなんてことないよ!」


 天御心流の呼吸法を乱さないよう意識しつつ、先へ進むとついにボスの扉が姿を現す。


「ついたー!」


 ・まだボス戦が待ってるぞw

 ・おつかれー!

 ・終わった感あるけどねw


「よし! ちょっと休んで体力も回復したし応援よろしく!」


 ・がんばれ!

 ・いけるいける!


 扉を開けた先に待ち構えていた光景に舞夜は呆けた声を上げた。


 巨大な岩が山のように積み重ねられている。


 舞夜が近づくと、岩がゆっくりと動き出し人の形を作り出す。


 目が赤く輝き、重々しい足音を立てながら歩みだした。


 それは、プチゴーレムとは比べ物にならない大きさのゴーレムだった。


「でっかぁ……」

 

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