一般通過JK、D級岩山ダンジョンへ挑む③
目の前に立ちはだかる巨大なモンスター、ゴーレムの圧倒的な存在感に舞夜は思わず声が漏れてしまっていた。
・マジででかい!
・さすがボスなだけあるな
・こんなのに殴られたらひとたまりもないだろ
舞夜はコメントに無言で同意した。
脱力を駆使したところであの巨体の質量から繰り出される衝撃を受け流し切る自身はなかった。
ゴーレムは巨大な腕を振り上げ、舞夜目掛けて真上からの振り下ろした。
舞夜は着弾点から身をかわすも、地面が大きく揺れてあたっていないのにもかかわらず衝撃を舞夜を襲う。
ゴーレムはその巨体からか一撃は凄まじいが、隙は大きい。
懐に入り込んで、道中のモンスターを次々に撃破した蹴りがゴーレムの脚に直撃する。
「……っ! だめか!」
プチゴーレム相手には通用した蹴りも、その親玉にはほとんど通用していない。
表面にかすかに傷がついた程度だった。
舞夜は距離とって、深呼吸して気の操作を使う。
丹田に意識を集中し全身に行き渡らせると全身を赤いオーラが包んだ。
・硬すぎるw
・満を持して気の操作キター
・これで勝ったな
再びの攻防により、舞夜の蹴りがゴーレムへ直撃。
先ほどとは違いずしん、と重みのある衝撃音が響く。
が、ゴーレムの体勢を崩させるほどではなかった。
・強化された舞夜ちゃんキックでも効かないのかよ!?
・いやまじで硬いな
・ハンマーとかの打撃武器なら弱点補正でもっとらくらくなはずだけど…
・武器装備不可の弱みがでてる
リスナーたちの困惑とは異なり、舞夜自身は手応えを感じていた。
気の操作を使いこなせば勝機はあると。
だが気の操作は体力をかなり消耗させるのだ。
舞夜のステータス値があがれば解決する問題ではあるが、今この場においてはタイムリミットがあるようなものだ。
体力を使い切る前に倒さなければいけない。
ゴーレムとの戦闘は一進一退だった。
舞夜の得意としているのは相手を崩してからの連撃により致命的なダメージを与えることである。
ゴーレムのような無機物には生物が持っているような急所がほとんど存在しない。
だから、相手の攻撃をかわして一発入れて下がるという立ち回りを強制されてしまっていた。
ゴーレムの脚の振り下ろしが、舞夜の直ぐ側に叩きつけられる。
飛び散る岩石の破片が舞夜の肌を傷つける。
直撃はもらっていないものの、軽微なダメージがじわじわと舞夜を苦しめた。
・大丈夫!?
・うわあああ推しがやられるとこなんて見たくない…
・流血が痛々しい
舞夜は攻撃を休めることなく果敢に攻め続けた。
その末についに光明が見えた。
膝の関節を狙い集中的に攻撃していた箇所がついに砕けた。
ゴーレムは自重を支えることができず、地面に腕をついた。
「きたっ!」
ゴーレムの腕を駆け上がる。
狙いは首元、人で言う頚椎の箇所だ。
気配察知のスキルによって、その箇所の気配が色濃いことを知っていた。
荒くなる呼吸を抑え込み、渾身の蹴りを放つ。
直撃の瞬間、巧みな気の扱いによって凝縮された赤いオーラがインパクトの部分に集中している。
そして、見事に弱点を見抜いて打ち砕いた。
ゴーレムはただの岩の塊に戻り、人の形を形成できず岩山と化した。
「よっし、やった……! 勝ったああぁぁ!!」
舞夜は息を切らせて、ガッツポーズを決める。
・うおおおおおおおおお
・おめでとう!
・ナイス!
・おめええええええ
・最後の蹴りかっこよすぎた
・もうだめかと思った
祝福のコメントが勢いよく流れるのを眺めて、舞夜は笑みを浮かべた。
「みんな応援ありがとう!!」
激闘の末に掴んだ勝利。
スキルを用いて全力で挑んでも一筋縄ではいかない相手に、舞夜は心の底から充足感を得ていた。
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