一般通過JK、後輩の美少女に配信者バレする
「あの、すみません。今お時間大丈夫ですか?」
放課後、教室で帰支度をしていた舞夜に話しかけたのは見たことのない少女だった。
「大丈夫だよ。1年生の子かな?」
緑ラインの上履きを見て舞夜が尋ねる。
「は、はい。あの、私、ファンなんです……!」
少女がばっと頭を下げると長い黒髪が舞った。
同時に片手が舞夜のもとに差し出される。
舞夜は差し出された手を見ておろおろと戸惑いながら、握手に応じる。
放課後の教室ということもあり、大半のクラスメイトはすでに帰宅か部活へ行っている。
とはいえまばらに人は残っているため、二人は変に注目を集めてしまっていた。
「これもういいかな……」
がっちりと握られた手を見て舞夜は疲れたように言う。
「あっ! ごめんなさい! 舞夜様の可憐な手につい夢中になってしまいました……。
想像よりずっと柔らかくて素敵です」
「うちの流派は拳硬めたりしないからね~。
ってやっぱり私の配信のリスナーさん、だよね」
「はいっ! 初回配信からすべての配信5周はしています!」
キラキラというよりキマりかけている少女の瞳を見て、舞夜は思わず身体を引いた。
「あ、ありがとう……。
私のファンなんていると思ってなかったからめちゃめちゃ嬉しいよ。
えっと君の名前はなんていうの?」
「本物の舞夜様に舞い上がってしまいました。
自己紹介すらしていないなんて本当にごめんなさいっ!
で、でも名前を認知してもらうとかいいのかな……」
どうしようどうしよう、とくねくね悩む少女に舞夜は名前聞かなきゃよかったかなと後悔しそうになる。
でもファンはファンだし、嬉しいのも本当だった。
舞夜のチャンネルの登録者はせいぜい500人くらいであり、同じ学校にいるなんてとんでもない偶然である。
しかも、かわいい女の子がこんなにも熱量高く見てくれているのは舞夜としても喜ばしい限り。
「愛川美桜、って言います」
舞夜がつらつら考えているうちに、覚悟が決まったようで美桜はぺこりと頭を下げて告げる。
「天野舞夜だよ。よろしくね美桜ちゃん」
「わッ、わァ……。舞夜様が私の名前を……。
はっ、そうじゃなくて、舞夜様にお願いがあるんです!」
「お願い?」
「切り抜き動画作らせてくださいッ!」
切り抜き動画とはライブ配信や動画のいち部分を切り抜いて、再編集し投稿した動画のことである。
長時間のライブ配信よりもとっつきやすく、面白い部分だけを楽しむことができる手段だ。
「してくれるの? 全然いいよ! むしろありがとう!」
「本当ですか! ありがとうございます!
舞夜様の魅力を余すことなく伝えられるように素敵な動画にします!」
「うん、楽しみにしてるね」
それから美桜はすぐさま取り掛かりたいと言い残し、風のように去っていった。
最初はあっけにとられていた舞夜も、笑みを浮かべて見送ってあげられる程度には打ち解けていた。
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