一般通過JK、サンドバッグと戯れる②

「なんてねー今のはわざとやりました」


 ・すげえ目泳いでて草

 ・説得力皆無w

 ・ほんとかよww


「ほんとほんと! 腕輪の真価をお披露目したかったんだよ!」


 腕輪を付けた右腕が天高く掲げられた。


「復活してー!」


 舞夜の叫びに呼応したように光の粒子が、どこからともなく集まる。


 次第にエリゴブの形を描いてゆく。


 そして、光の粒子が凝縮してまばゆく輝いたとき、無傷のエリゴブが仁王立ちしていた。


 ・うおおおおおお

 ・演出おしゃれw

 ・すげええええええええ

 ・なにこれwww

 ・こんなん無限サンドバッグじゃんw

 ・コロして……コロして…


「いやーこれをね? 見せたかったんだよね~」


 エリゴブはなにが起きたのかわからないようで、自らの手足を見ては首を傾げている様子だった。


「そういえば新しいスキル覚えたんだけど試してみていい?」


 ・いいよー

 ・3つ目のスキルなんだっけ

 ・気配察知だったかな

 ・あーあれな…w

 ・言っちゃ悪いけど使い所すっげーむずいよ


「気配察知ー!」


 舞夜がスキル名を叫ぶ。


 気配察知はとその名の通り周囲の気配を察知するスキルである。


 効果だけ聞くと一見、有用なスキルに思えるが敵の正確な位置や数はわからず、おおまかに敵がいるかいないかが把握できる程度。


 ・索敵するならサーチでいいよな

 ・しっ言うな

 ・完全上位互換なん?

 ・サーチは使用中行動できない、そのかわり広範囲の敵の正確な位置までつかめる

 ・一応差別化されてるんだよな


「こ、これは……! めちゃつよスキル手に入れちゃったかも……!」


 ・なになに!?

 ・ソロ探索なら動きながら使えるし悪くはない、はず……恐らく

 ・言い切ってやれよw


「いいこと思いついちゃった~」


 舞夜は目を瞑っておもむろに歩き出し、エリゴブの間合いに踏み入れる。


 接近されたエリゴブは反射的に殴りかかった。


 リスナーたちは悲惨な未来を想像し、コメントは荒れに荒れまくっていた。


 しかし、エリゴブの攻撃が舞夜をとらえることはない。


 降りかかる拳や蹴りをすべて紙一重で当たらず、舞夜は一歩として止まることなく至近距離まで近づいた。


 そのまま軽く叩くと、警戒したエリゴブが弾かれたように後ろに跳んだ。


 ・え、なになに

 ・いま目瞑ってたよな?

 ・気配察知最強スキルやんww

 ・うーん俺の知ってる気配察知はそんなことできないはずだが…

 ・よくわからんけどすごい!

 ・敵の気配がわかるだけじゃないの?


「えへへ、どう? びっくりした?

 気配の濃淡と流れがわかれば正確な位置だったり次の動作が推測できるんだ~」


 ・マジ?有能スキルやん

 ・いやいや普通そんなことできないでしょw

 ・舞夜ちゃんしかできないやつ

 ・俺も気配察知持ってるから練習してみようかなあ

 ・うおおおおおおおお


「それじゃあ最後に試したいことやって今日の配信終わりにしようかな」


 すたすたと歩いていった舞夜は実験とばかりに、技をかけた。


 暴れるエリゴブを風のように受け流して、左手をエリゴブの側頭部に添える。


 それから右手を柔らかく握って、人間で言う頸動脈の辺りをコツンと殴る。


 たったそれだけの衝撃でエリゴブ崩れ落ち、意識を失ってしまった。


 しばらくしても起き上がることのできないエリゴブを満足そうに見下ろした舞夜は、流れるような動きで首を回して頚椎を破壊する。


「ふむふむ、人とあんま変わらない構造なのかな」


 ・……

 ・えっぐいこと唐突にするじゃん

 ・こわい

 ・蘇って即殺されるエリゴブくんかわいそう

 ・うおおお…

 ・コメントいきなり盛り下がってワロタ


「はい! みんな楽しんでくれたみたいでよかった!

 それじゃあ次回はD級に挑戦しよっかな?

 他になにかやってほしいことあったらスライムに送ってね~

 おつかれさまー!」

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