コナサセ唄いて童泣く
飯田太朗
あらすじ(結末まで、選考向け)
※選考向けのあらすじです。ネタバレ注意。
僕、小説家飯田太朗は高校時代の恩師、
僕と先生は一路岩手県は遠野、
しかしその寒村にふさわしくない巨大な西洋館が丘の上に一つ。どうもこれが先生の生家らしい。
果たして時曽根家家長、時曽根宗一郎の臨終。その間際に宗一郎が口ずさんだ歌が一族に動揺を呼ぶ。
「ひねりこ、ひねりこ、ひねりこやあ」
それは村の産婆が死産だった場合に口ずさむ歌だった。
奇しくも時曽根家は産婆の家系。大正時代に一族の長男が副業で始めた事業が当たり、助産の仕事は減らしてしまったがそれでも「時曽根家の女」と言えば「十四を過ぎれば助産業に就く」とされていたものだった。
そんな時曽根家の西洋館は、明治時代にこの村を訪れた欧州人が建てたもので、かつてこの村では西洋人と村娘のロマンスが話題になったこともあった。時曽根家は事業が隆盛した際、この屋敷を買い取った。
そういう背景もあってか、村の中には異国の情緒が仄かに香っている。
村にもやはり座敷童の伝承というのはあるようだったが、しかしこの地域にとっての座敷童は必ずしもポジティブな存在ではなかった。
何でも産婆が未熟児や障害児を産後すぐに殺す風習があり、座敷童はその時産婆に殺された子供の精霊であるとされていたのだ。
家長宗一郎危篤に当たり集まったのは時曽根五兄妹。宗一郎の前妻、後妻は共に逝去。
一、前妻
二、前妻
三、後妻松子の子。時曽根
四、後妻松子の子。時曽根
五、後妻松子の子。時曽根
――未来に寄付せんと、遺産は孫に相続させる。子は遺産を管理し、孫の将来のために運用せざるべからず。
――遺産は瑠香に二割、静真に二割、動真に二割、登也に二割、千花に二割の割合で分配せざるべからず。
――回避しがたき理由により孫に相続権が発生せざる場合は長女ゑいか、長男恵、次女沙也加、次男利喜弥、三女楓花の順で相続権を有す。
このように遺産の相続が決まった。
「ま、俺は親父に嫌われてたからな」
先生はそう笑いながらも懐かしい隼峯村を楽しんでいるようだ。
しかし平和は長続きしない。
……ひねりこ、ひねりこ、ひねりこやあ。
時曽根の屋敷でどこかからそんな歌が聞こえると、事件は起こった。
「静真? 静真はどこ?」
先生の妹さん、沙也加さんの息子が屋敷の中で行方不明に。しかし見つからないまま夜が明け、まさかここには……と翌朝、長らく使われていなかった地下室へと赴く。
そこには全身を強打し、頸椎が折られた静真くんの死体が。
しかし地下室は窓もなく、ドアの鍵も厳重に管理されていたいわゆる密室状態だった。
あまりの事態に混乱していると第二の事件が。
またも同じく沙也加さんの息子、動真くんが屋根裏部屋から死体となって発見されたのである。
屋根裏部屋の鍵はどういうわけか部屋の中にあり、ここもまた密室状態だった。
立て続く不可解状況に追い打ちをかけるかの如く、第三の殺人が。
先生の弟、利喜弥さんの娘である瑠香ちゃんの死体が発見される。
次いで登也くん、最後に千花ちゃん。
皆同様に頸椎を折られ殺害されていた。
人里離れた村ということもあり、警察署から人が来るのにも時間を要する。
瞬く間に五人の子を殺された一族は絶望と混乱に陥るが、僕は第三者的視点から謎を解く。
死体の発見順番、兄妹・家族構成、時曽根家の家族関係、隼峯村にまつわる伝承、様々な視点から考察した結果、僕は先生の姉ゑいかさんが犯人であることに行きつく。
何と先生こと時曽根恵は前妻
「相続権を持つ孫たちが死ねば遺産は私に。そして私が相続権を放棄すれば遺産は恵に」
ゑいかさんはどうしても時曽根家の莫大な遺産を血を分けた子である先生に相続させたかったのだ。
事がバレては、と自殺を図るゑいかさんを先生が止める。
かくして時曽根家を襲った凄惨な事件は幕を閉じた。
僕は最後に生き残った、ゑいかさんが連れていた子供を探す。
だが先生は言う。
「姉さんは子供なんて連れていないが……?」
僕はふと気づく。
ここは、座敷童の聖地。
それは産婆が殺した子供の精霊。
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