独り立ちしました。

 何もかも初めてな私には新鮮でとても楽しく思えた。

 外回りの後の処理も一通りできるようになり、私は1ヶ月で一人立ちした。

 この会社では研修が短く、すぐ一人立ちして色々覚えさせていくというスタンスらしい。

 一通りこなせるようになり、課長からたくさん回れと言われた。

 私にたくさん経験させたいのかもしれない。外回りが多くなると、外回りから戻ってきた後の処理も量が多くなる。

 日によっては、夜に一人で残って残業することもあった。


 それと、先輩から

「ごめん、私、保育園の迎えがあるからこれやっといてくれないかな?」と言われることもあった。

 それはしょうがないよな……。

 でも、おかげで仕事の経験値が増えると思ってポジティブに考えていた。


 ある日、私はある営業先に行った。

 その日は問題なくこなし、帰社しようと営業先の会社を出た。

 すると、後ろから

「そこのお嬢さん。ハンカチ落としたよ。」

「え?」

 後ろから青い作業服をきたおじさまが私に近づいてきた。おそらく、この営業先の清掃員をしていると思われる。


「あ、ありがとうございます……。」

 私はおじさまからハンカチを受け取った。

 ただ、ハンカチを普段から落とすようなことは今までなかったのだが……。

 受け取るとおじさまが話しかけてきた。

「あなた、取引先の人?」

「はい。そうです。」

「そうなんだ、頑張ってね。」

「ありがとうございます。」

 おじさまは話終わるとトイレの方に向かった。トイレ掃除するのだろうか。

 清掃員の人が優しいなんていい会社なんだろうなー。


 なんて思いながら、私は帰社した。

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