第15話 二人の覚悟

日を追うごとに、薬草の芽は順調に育ち始め、リリーナのお腹も大きくなっていた。

夕飯を食べ終え、ハオルドがリリーナのお腹をさすりながらゆっくりとした時間を過ごしていた時、リリーナが静かに話し始めた。


「毎日毎日考えてもいつも同じ結論に辿り着く」


「何の話だ?」


「この子にはハオルドと出来るだけ長く元気に過ごしてもらいたい。10年おじいちゃんより、10年一緒に走り回ってほしいんだ。それを見ることは出来なくても、一緒に感じることは出来る。90歳のハオルドは耳も遠くて会話もままならないかもしれないからな」


リリーナが笑いながら話す。


「リリーナ…。目が見えないともらい手が少なくなる。俺が死んだ後、この子の為にも父親を探してやってくれ、頼む」


「ハオルドより、私より、将来があるのはこの子だろう?子供の10年は私たちが思っているよりも長い。その若くて逞しい体で、めいっぱい遊んで思い出を作ってやって。その思い出はこの子が大人になってからも、必ず宝物になるから」


こうなると絶対にリリーナは折れない。

元々強い上に、母は強しだ。

敵わないなといった表情でリリーナを抱き締める。


この村の冬はとても長い。

大雪が降った翌朝、ハオルドが畑へ行くとなんと薬草が収穫できるまでに一気に成長していた。

雪に埋もれているが大きな薬草になっているのが見てすぐに分かる。

それはまるで野菜のようで、一つ収穫するだけで幾人分かにも分けられるほどだった。

これならリリーナの村にも十分に配ることが出来る。

老人に分ける数もある。


ハオルドは以前から用意していた手紙を家に置いて、リリーナの村に向かった。

両手いっぱいの薬草を抱えて………。

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