第16話 誓いの手紙

リリーナは机の上に手紙が置いてあることに気付き、中身を確かめる。

そこにはこう綴られてあった。


『リリーナへ。

すまない。

許してくれとは言わないが、どうか老いぼれた俺に愛想を尽かさないでくれ。

家に帰ったらいくらでも怒られよう。

この肉体が急に使いものにならなくなるのは少々厄介だが、俺は10年と言わず20年生きると誓おう。

その頃子供は20歳だ。

90歳の老いぼれでも、俺がいなくなった後も、お前の事を立派に支え続ける心優しい子に育てあげられると証明しよう。

若々しい体で一緒に遊んでやることは出来ないが、長く生きてきた知恵を授けよう。

お前と元気に走り回る姿をこの目に焼き付け、いつまでも見守り続けると約束しよう。

俺はリリーナと出逢えたおかげで笑顔を取り戻すことが出来た。

皺だらけの笑顔をその目で見続けてくれ。

本音を言えば、普通の体に生まれ、何十年も共に過ごしたかった。

ばあさんになったリリーナと手を繋ぎ、散歩がしたかった。

50年、60年お前と子供と過ごす事が出来たならどれほど良かったろうかと思うが、これが俺たちの運命だ。

老人なりに、俺が生きてきた幾年分の愛情で家族を守っていく。

天に召された後も必ず守っていく。

何度生まれ変わろうとも必ずまた出逢おう。

俺たちはずっと一緒だ。

孤独から救ってくれて本当にありがとう。』


手紙を読み終えたリリーナはその場で泣き崩れた。

居てもたってもいられず、畑に向かうと薬草が収穫され尽くされた跡が残っていた。

ハオルドの体は今どうなっているのか、こんな寒い中大丈夫なのか、心配で堪らない。

リリーナは泣きながら家に戻り、以前ハオルドが山賊から命をかけて自分を守ってくれた時の事を思い出していた。

あんなに強くて頑丈で、筋肉隆々の大男の老人姿など想像がつかなかった。

ハオルドはその日、家には帰ってこなかった。

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