03 封じられた道
木々の間を抜ける風が、落ち葉をかすかに揺らす。
踏みしめる足音だけが、森の静寂を切り裂いていた。
あれから
――もう一度『基地』に行こう。あの場所なら、
その言葉に、
おそらく――
「今日、
あとで戻ったら、ちゃんと報告しよう」
道中、
冷静で正確な判断を下せる彼の落ち着きは、やはりこのような状況では頼もしい。
やがて濃い緑の向こうに神社の鳥居が見えてきた。
鳥居をくぐった瞬間、ふっと空気が変わる。
森とは別の静寂が三人を包み込み、まるで薄い霧が境内を漂っているかのような感覚に、自然と肩がすくんだ。
地中から冷たい空気が立ちのぼり、かつての記憶を呼び起こす。
三人は地下へと続く階段を慎重に下り、暗闇の中に足を踏み入れた。
あの日と同じ、湿り気を帯びた土の匂い。
誰かが触れた痕跡すらない、変わらぬ闇。
けれど、今日はひとつだけ違うものがあった。
石組みの地下室――その壁際に、ひっそりと鏡が立てかけられている。
「……ほんとに、あった」
階段を上がって地上に出ると、陽光を受けて鏡がきらめく。
「これが――『未来鏡』……」
これで――二枚の鏡がようやく揃った。
あとはこれを使って過去に飛ぶだけだ。
手記はイザナミによって焼かれたものの、
二枚の鏡を向かい合わせ、未来鏡から過去鏡へと光を反射させる。
そして放たれた光を照射させると、それが “入口”になるのだという。
「ここじゃ、ちょっと無理か……」
神社の周囲は鬱蒼と茂る森に覆われ、太陽の光はほとんど届かない。
実行には、日の当たる場所が必要だ。
「一度戻ろう。前に休憩したあの場所――あそこなら開けてる」
山道を引き返し、光の届く場所を目指す。
鳥のさえずりや風に揺れる枝葉のざわめきが、緊張を少しずつ解いてくれる。
あと少し――そう思った矢先、
「……どうしたみっこ、疲れたか?」
「もう少しだよ、
ただ青ざめた顔で、前方をまっすぐに見つめている。
「――?」
二人はその視線を追った。
木立の隙間。
ゆらぐ影の中に、ありえないものが見えた。
そこにいるはずのない人影。
――
深い黒の上着と長い黒のスカートをまとい、胸元にはブラウスの白が冷たく浮かび上がっている。
肩に垂れた黒髪が風に揺れ、その両手は脱力したように垂れ下がっている。
遠くて表情は読み取れないが、その視線は――確かに三人を射抜いていた。
森の空気が一瞬で凝固する。
葬儀の最中のはずなのに、どうしてここに――
隣で
「……見つけた」
囁きにも満たないほど小さな声。
しかしその声は風の音を乗り越えて、耳の奥に鋭く刺さった。
胸の奥で、何かが激しく警鐘を鳴らしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます