第2話 ぱんだ娘紫音へ
「助けていただいてありがとうございます。わたしは東の国の姫、
少女は小さな頭をちょこんと下げて日本式のお辞儀をする。ふむふむ、このゲームがなんだかわかったぞ! ずばり、『遥かなる時の旅』だ! 中華風のファンタジー世界で主人公こと冒険者がさまざまな任務をこなし、異次元へと続くゲートに眠る宝物を集めながら最後には悪い道士、つまり魔法使いを倒すというシンプルなストーリー。この悪い道士こと
「そんなにじっと見つめられたら恥ずかしいですよ。ぱんだちゃん」
「ふふ、わたしの名前は
「宝貝ですか……それなら
あーあー、行った行った。元いた世界のゲームの中での話だけどね。紫音の都は港町で世界中から情報が集まってくる初心者から上級者までお世話になる街だ。
「助けていただいたお礼にご案内致します。わたしはどうしてもこの国の帝様にお会いして、東の国の建国を認めてもらわなければならないのです。そのためにはるばる船旅をしていた所を悪い商人に奴隷として捕まってしまいました」
「そうなんだね。じゃあ、一緒に紫音の都まで旅をしましょう!」
おーっと腕を伸ばしたところで少女から質問をされた。
「あの、知らない方にレベルを訊ねるのは失礼かと思いますが、あなたは一体何レベルなんですか? とてつもなく強いので……」
何レベル? どういう意味だろう。そういえば、こういう異世界転移ものって自分だけめちゃくちゃレベルが高かったりするのよね。
「どうやってレベルを調べるの?」
「両手の人差し指と親指をくっつけて、レベルが知りたいと魔力をこめれば見られますよ」
ふむふむ、いでよ! わたしのレベル!
着ぐるみなのでやりにくいが、指と指をくっつけて小さな四角形を作るとパチパチと魔力の薄い膜ができて、そこに数字が現れた。
「数字は2ね」
「まさか!? たった2レベルであんなに強いわけありません」
うーん、何回やってもレベルと思われる数字は2のままだ。後ろに0が隠れていたりはしない。
「あ、この着ぐるみのせいかも」
「ぱんだの着ぐるみですか?」
「うん、これは神様から貰った宝貝の一つなんだよね。だから、チート級の装備なのかも」
「ちーときゅう? なんですかそれは?」
「あはは、めちゃくちゃ強いって意味」
「ふむ、装備品の強さはどう調べればいいの?」
「先程と同じようにして、自分が身につけている装備品のことをイメージすれば良いのです」
むむむむむむ、イメージすると魔法の膜がバチバチと電気みたいにスパークしてイメージが頭の中に入り込んできた。
熊猫の宝貝……全てのステータスが装備者のレベルに応じて増加。自動体力回復量、自動魔力回復量もレベルに応じて増加。耐熱、耐冷、耐雷、耐風、耐打、耐斬、耐突属性、状態異常無効。
なんなんだこのチートすぎる性能は! ただ問題はわたしのレベルの低さにあるな。
そんなこんなで喋っていると、道が舗装された石畳になってきた。この先に都があるのだろう。さあ、森を抜けるぞってところで、ほむらちゃんが悲鳴を上げた。
「
なんですと? それはこの装備の強さを確かめるのにちょうどいい実験台だな。問題はレベル2でどのくらいステータス補正が働いているかだけど、最低でも鋼鉄の檻を曲げられるくらい力の補正があるらしい。
「ぱんだ娘の力をみせてやるーー!!」
と凄んだところで小鬼の斧が背後から私の頭にざっくりとぶっ刺さった。ふつうなら着ぐるみごと真っ二つになってしまうところだがちょっと痛いだけですんでいる。鉄製の斧の方が砕けてしまった。
「とりゃあー!」
拳法のまねごとの体術で、どんどんとわたしたちを囲む小鬼たちを一方的に殴っていく。小鬼たちは一撃で動かなくなった。
だが気を緩めない。相手はわたしたちを殺す気だからだ。わたしはともかくほむらちゃんに攻撃が当たったら死んでしまう。
一通り退治すると小鬼の残党は逃げ出してしまった。
「すごいです! 宝仙さん!」
「はるひでいいよ」
「はい、はるひさん。わたしのこともほむらと呼んでください」
「ええ、お姫様でしょ?」
「いいんですよ」
落ち着いたから、自分のレベルを調べてみる。レベルは3に上がっていた。すると、また電流が頭に流れてくる。
スキルを習得しました。
開始早々、わたしは手からビームを出せるぱんだ娘になったしまった。
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