第4話 任務完了
「『執事もどき』、さっき団長から連絡が入った。」
洞窟を出たところで『闇影のダン』さんから声がかかる。
「現在ゴミ共の死骸を集計中。並行して探索魔術実施中だとよ。斥候役がうちで良かったな。あっという間に終わるぜ」
ニヤリと笑う『闇影のダン』さん。 傭兵らしい笑いが様になってる。
「斥候士総勢23名は伊達じゃないですね」と笑って返す。
『闇影のダン』さんと雑談していると空に青色の信号弾が上がった。
任務完了の合図である。
「任務完了っと。お疲れさん『エマグリーンファミリー』。俺たちは救助者の護送と、害獣狩りして帰ることになった。団長が活躍者にボーナス出したいんだとよ。ついでにゴミ共が湧かねぇかな」
『闇影斥候団』の懐事情について少し。
任務報酬は参加者均等割り。今回23名で割るから一人一人の報酬が少ない。
だから追加で報酬の出る救護者護送任務を請け負ったり、常設任務である害獣を狩りながら市に帰る。
害獣とは、前世の記憶で言えば魔物である。他国ではちゃんと魔物と呼ばれ恐れられており、思いつく魔物はだいたい存在する。
そして定番であるが、魔物の肉に皮や骨などは素材として売れる。
総じて雑魚なゴミ共に対して、魔物は強弱があり死者も度々出る。
しかしそれでも我が国家は
「何が魔なる物か。我々は殺せるのだ。所詮は害ある低能な獣なり」
との建国時からの認識の上で害獣と呼ぶ。
この森には死者が出るような強い害獣は出ない。安心安全。
斥候士は害獣を見つけることにも特化している。
扱う武器は素材を傷つけにくいので、ちょうど良い任務だ。
我がファミリーの場合、素材目的の害獣狩りは相性が悪い。
討伐任務なら得意なのだが。
姉君様は真っ二つにし、妹様は消し炭にする。
親友様には丁度良いのだが、害獣狩りは面倒なので嫌いとのこと。
「お疲れ様でした。『闇影のダン』さん。狩りに幸運を。
『闇影のカーチス』団長によろしくお伝えください」
「ああ、またな同胞」「ええ、また後日お会いしましょう同胞」
『闇影のダン』さんは救援者達を連れ、森に消えていった。
「僕達も害獣狩りながら帰りますか?」とお三方に聞いてみる。
「愚弟、その冗談は嫌いだわぁ」
「愚兄、つまらないんですの」
「愚友、くだらない」
僕なりの冗談は不評であった。
「では、帰りましょう」
こうして僕達も森を後にした。任務完了。
『闇影のダン』は帰りがてらに思う。
役割をこなせるパーティってなぁいいもんだ。
その点、我らが『闇影斥候団』はきっちり仕事をこなせたな。
斥候士の矜持を存分に発揮できた。
『血と臓物のスープ』もいい動きだった。
もうちっと人数増やして中級パーティになっても余裕だろうな。
『エマグリーンファミリー』は相変わらず見てる分にゃ面白れぇ。
作戦開始からの吶喊めっちゃ速かったなぁ。
よくもまぁ全員あの速度で突っ込んでいけるもんだ。
「我らは傭兵、恐れるものは無し」だな。まさに爽快。
ただ会話するとなるとな…『執事もどき』の坊主しか会話できねぇもんなぁ。
『
軽口叩いても微笑んだ顔で無視だ。それでも話しかけ続けたやつがいたが、
徐々に能面顔になっていくんだぜ。怖え怖え。
『執事もどき』が駆け寄って間に入ってたわ。
『
なるわけじゃないんだよなぁ。突っ込みてぇなぁ。
『執事もどき』よ、せめてちゃんとしたお嬢様言葉を教えてやれ。
話しかけると「愚兄に聞くんですの」しか言わねぇ。会話の意思ゼロだ。
『
この前『執事もどき』に伝言頼んでたやつがいたわ。
『エマグリーンファミリー』の女どもは綺麗どころの集まりだ。お近づきになりてぇ野郎も多いだろうがありゃ無理無理。
家族と認めたやつしか話さないタイプだ。うちにもいるな。
俺たちは同胞だ。無碍にされたからって敵意や悪意を持ったりしねぇ。
個性だよ個性。我が国家は性格如きでうだうだと言わねぇ。
第5等級も持ってんだ。外ではちゃんと仮面を被るんだろうよ。
それに『執事もどき』の坊主。『エマグリーンファミリー』の窓口役。
あいつがいるからこそ『エマグリーンファミリー』と楽しく仕事がやれる。
『執事もどき』は性格も格好も実力も面白れぇ。
よくもまぁ癖の強い3人と、扱いはひでぇのに上手くやってるもんだ。
任務で見かけると、いっつもでっけぇバッグ背負ってる。
中身は3人の為に準備したものだけって話だったな。
前にちぃと心配になって「辛くないか?精神的な意味で」って聞いたら、
「家族に尽くせて、僕は幸せですよ」と綺麗な笑顔だったなぁ。
まぁ、そういう奴だ。本人が幸せなら周りがとやかく言うことは無ぇ。
しかし救助者達を引き継いだ時は面白かったな。
分かってなかったようだが、救助者達はお前らに怯えてたんだぜ、坊主。
ゴミ共に攫われて絶望してるところによ、
全身血塗れで大剣担いだ『縦横一閃』。
対して妙なドレスが全く汚れていない『一言発魔』。
ぶかぶかローブで目元までフードを被った『白狐穴熊』。
そんな恰好で怖え笑顔の3人。
そこに微笑んでいる似非執事服の男。
得体が知れなさ過ぎて、怯えねぇ方が無理ってもんだ。ハハッ。
…坊主、俺の擬態にすぐ気付いていたな。眼がいいのか勘がいいのか。
なんにせよ、『執事もどき』はいい斥候士になれると思うんだけどなぁ。
団長も気に入ってるな。今度会った時にでも、臨時で斥候の仕事に誘ってみるか。
お、一角兎がいるじゃねぇか。ちゃっちゃと狩っちまおう!
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