第3話 お着替え回
「承知しました。それでは、あちらへ」
バックパックを片手に持ち、お三方を伴って洞窟中に死角に入る。
お三方も傭兵とはいえ女の子。他人に肌を見せたくない。絶対に。
荷物の中身はお菓子が2割、茶葉や茶器で3割、残り5割がお三方の衣類である。
水やお湯は魔術で出せる。魔術は便利。
ポケットから取り出した新しい手袋に替え、
バックパックからテーブルクロスを取り出す。その上に、お三方の着替えを準備。
脱ぎ終わった服を入れる麻袋も用意。
「どなたから着替えます?」と普段からの微笑を持って問いかける。
僕のデフォルト顔。
「私からよぉ」
穏やかな笑みで僕の傍へ近づく姉君様。
1年ほど前ことを思い出す。
初めてパーティ全員で任務に出た折、着替えの順番で揉めた。
家での順番は起きる順なので揉めたことはなかったのに。
「私からに決まってるわよぉ」
「
「僕から、当然」
お三方は1番を譲らず、5分睨みあい10分の話し合いの末、順番を決めていた。
傭兵とはいえ女の子。
返り血や汗などの不快感を少しでも早く解消したかったのだろう。
計15分、お三方がそれぞれに殺気を飛ばすあの時間。
家族が険悪になる様は辛く、それでも愚かな僕は間に入ることは出来ず、
顔に出ないよう目を伏せることしかできなかった。
今は事前に話し合われてるのだろう。
ありがたいことだ。
何はともあれ、まずは姉君様の正面に立ち、
「では、失礼します」と取り掛かる。
靴、ジャケット、パンツ、Tシャツそれから下着。
いつも通り決まったルーティンで脱がしていく。
返り血はほぼ全身。ブラどころかショーツまで赤が滲んでいる。
吶喊役で、あれだけのゴミ共を斬れば血に塗れるので当たり前である。
姉君様の全てが空気に晒される。全裸である。
右手から、熱めの湯を絞ったタオルで全身を拭っていく。姉君様の拘りポイント。
一通り拭き終わり「気になるところはありますか?」といつも通り確認。
「胸をもう少し拭いなさぁい。ねぇ愚弟、帰ったらブラを調整してねぇ。今のはちょっと苦しいわぁ。」
親愛なる姉君様の大きく綺麗なお胸を再度拭いつつ、
「戻ったらすぐに手を付けますね」と返す。日々1個づつ調整していこう。
拭い終わったら脱がす順番と逆に着付けを行い、髪を梳いてお着替え完了。
「さっぱりしたわぁ」と満足気な姉君様。うん、今日も姉君様は美しい。
「次はどな…」言い終わる前に
「
「では、こちらへ。失礼します」
一言付け加えて取り掛かる。
返り血どころか土埃も見当たらない。魔術士としての技量がすごい。
正面から脇下に手を回し、ドレスの後ろボタンを外していく。
最後に蝶結びの縛り紐を解くと、パサリとドレスが地に落ちる。
あとは靴に下着を脱がせば、妹様の全てが露わになる。全裸である。
右足から、温めの湯を絞ったタオルで全身を拭っていく。妹様の拘りポイント。
一通り拭き終わり「気になるところはありますか?」といつも通り確認。
「足をもう少し拭うのですわ。そうだわ愚兄、ドレスを新調する時に採寸するのですわ。お尻も胸も窮屈ですの。ああ腰回りは問題ないですの。」
親愛なる妹様の可愛らしい足を再度拭いつつ、
「はい、しっかり測りましょう」と返す。妹様は成長期である。
下着からドレスを着付けて、縦ロールには触れないよう髪を梳いてお着替え完了。
「普段通りですわ」とすまし顔の姉君様。うん、今日も姉君様は愛らしい。
「では親友様、こちらへ。失礼します」
親友様は正面に立ち「ん」と万歳する。
暗器の類は先にご自分で取ってもらっているようだ。
右袖口に僅かな返り血。後は少々土埃。暗殺士の腕前の高さが伺える。
跪いて靴を脱がしてから、厚手のローブの裾を持ち、
くるくると上へ上へと巻き上げる。
腕とお顔に注意しながら持ち上げれば、ローブが脱ぎ終わる。
その下は下着のみ。その下着を脱がせば親友様の全てが露わになる。全裸である。
首元から、常温の水を絞ったタオルで全身を拭っていく。親友様の拘りポイント。
一通り拭き終わり「気になるところはありますか?」といつも通り確認。
「背中、もっと」と小さい背を向けてくる。
「愚友、帰ったら下着作って。デザイン考えた」
背を拭いながら「お任せを」と返す。親友様はお洒落な下着が好きである。
下着を付け、ローブを頭からズボっと被せる。
フードの中の髪を整えてお着替え完了。
「ん」と頷く親友様。うん、今日も親友様は可愛らしい。
お三方に「お疲れさまでした」と一礼し、脱がせた衣服は麻袋の中に。
片付けをしながら思う。
幼い時からお三方のお着替え着付けを当たり前に行っているせいなのか、
異性である僕の前で、全裸になることに羞恥心が湧いた様子はない。
お年頃のはずなのに。
異性関係なく家族と思ってもらっているからなのか。
はたまた、異性以前に召使いあたりにカテゴライズされているのか。
前者ならとても喜ばしいことだ。
後者でも問題ない。僕は親愛なる家族に尽くすのみだ。
しかし、なぜ正面から着替えさせるのか。普通後ろに立って着替えさせると思う。
着替え中に背を見せるのは親友様だけだよ。体を拭うときだけだけど。
女性の象徴達が目を伏せていても入ってくるし、タオル越しだとしても特有の柔らかさに触れるのである。
親愛なる家族に欲情などしない。愚かな僕とてそこまで愚かではない。
子供の成長を嬉しく思う親心というか、いや前世で子供はいなかったから、
「〇〇ちゃん、大きくなったなぁ」と親戚の子を見る心境である。
それでも体は15歳。普通なら誰のおっぱいであろうと大興奮出来る年齢であろう。
視覚と触覚により高まるその生理的欲求を、前世と今世で培った精神で抑え込む。
甘いのだよ性欲君。僕の親愛なる家族への想いにひれ伏したまえ。
ひれ伏してください。愚かなる僕はまだまだ家族に尽くしたいのです。
などと、愚かな思考をしながら僕も手早く自身を身綺麗にする。
ほどほどの返り血は濡らしたタオルで拭き、土埃を軽くはたくだけ。
ちゃんとした執事服ならみっともない。
が、執事服っぽい何かなので、別に良いだろう。
「お待たせしました」とお三方に声をかけ、洞窟を出た。
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