第2話 作戦完了

作戦開始と共に姉君様が「やっほぉい」と可愛い掛け声で吶喊。

ゴミ共を一振りで2、3匹を縦に横にと真っ二つしながら駆け抜ける。

数歩後ろで妹様が「どーんですわ!ばーんですの!」と火球やら土球を飛ばして

ゴミ共の四肢は飛び散り胴に穴が開く。

親友様はゴミの急所を的確にナイフで差しつつ、慎重に救助者を探し出す。

僕は、姉君様に補助魔法を掛けたり、妹様に近すぎるゴミを片付けたり、

最後は親友様について行って救助者のフォロー。

親友様は口下手なので、僕が代わりに救助者6名に状況説明と誘導を行う。

今回、鞘の出番はなかった。良いことだ。

姉君様、妹様と合流してゴミが残ってないことを確認して洞窟出口へ向かう。

特筆すべき点は何もない。いつも通り。

あとは他パーティのお仕事である。


洞窟を出たところで、男女二人が立っていた。

回りにゴミが数匹転がっている。

「やあ同胞、楽しめたかい?」

「こんにちは同胞、ええ存分に」

話しかけてきたのはパーティ『血と臓物のスープ』のリーダー、『ロジャース』さん。

穏やかな雰囲気と優しい口調の好青年である。

返り血の跡は見られない。

『血と臓物のスープ』は物騒なパーティネームに対して、性格の良い人物達で構成されている。

7人パーティで剣技士3名、拳闘士2名、魔術士2名の構成。

以前、「なんでグロいパーティーネームなんですか?」と聞いてみた。

「パーティネームを考えてる時に出てきたおつまみ名を混ぜたんだ」

とのことだった。

酒場でお酒を楽しみながら、ああでも無いこうでも無いとパーティネームを考えていた所、目に入ったのがブラッドソーセージともつ煮込みと野菜スープ。

『ロジャース』さんが、それらをそれらしく混ぜた『血と臓物のスープ』を提案。

全員酔いが回ってたらしく、「もうそれでいいんじゃね」と爆笑して全会一致。

「じゃ、これで提出してくるねー」と千鳥足でギルドに向かい申請書を提出。

次の日、受理された申請書を見て全員で爆笑したらしい。

楽しそうに『ロジャース』さんは語ってくれた。

「や、同胞。『エマグリーンファミリー』は手際がいいね。こっちにはこれだけしか流れてこなかったよ」

「どうも同胞。お褒めいただきありがとうございます」

次に笑顔で話しかけてきたのは拳闘士の『マチルダ』さん。

高身長で姉御肌な気質の女性である。そして血塗れである。

「君たちが出てきたなら、他のところに行ってきていい?ちょっと物足りなくて」

片目を閉じ手を合わせてお願いしてくる『マチルダ』さん。

親友様へ目でお伺いを立てると頷き一つ返ってきた。

「構いませんよ。僕たちはここで待機します」

「ありがとう『執事もどき』君!今度1杯奢るわね。『ロジャース』!私は『テト』の方に行ってくるわ!あんたは『リグル』の方よろしく!」

言うや否や『マチルダ』さんは目標地点へ走っていった。

「すまないね『執事もどき』君。今度お礼するよ。ありがとう」

苦笑した『ロジャース』さんはこちらへ手を軽く振りながら、足早に目標地点へ向かっていった。

『ロジャース』さんも物足りなかった様子。


二人を見届けた後、親友様が呟く。

「作戦、完了」

僕達は満足げに頷いた。

お三方の顔も日常に戻る。

姉君様は穏やかな笑顔。

妹様はすまし顔。

親友様は無表情。

そんな顔のお三方もやっぱり素敵だ。


ゴミ共の死骸が邪魔なので遠くにぶん投げていく。

首が半分切れた死骸が半数。『ロジャース』さん、綺麗に斬るなぁ。

たぶん洗濯が面倒だから返り血を浴びないように斬ったんだろう。

胸当たりに穴が開いた死骸が半数。『マチルダ』さん、豪快だなぁ。

何も考えず手足で風穴を開けたんだろう。

ゴミ共の死骸の片付けてから、救助者達に出てきてもらう。

死骸があると落ち着かないだろうからね。お茶を準備し救助者達に配った。

少しは落ち着いたかな?だいぶん怯えていたからなぁ。ゴミ共のせいで。

森に目を向け目標の人物に手を振る。少し待つと斥候装備の男性が出てくる。

「よぉ『執事もどき』。よくも見つけてくれたな。しっかり擬態してたのによ」

「たまたまですよ。出てきてくれてありがとうございます。『闇影のダン』さん」

作戦開始前に通信魔術で話した『闇影のダン』さん。

鋭い目に髭面で強面だが、頼れる雰囲気をもつおじさんだ。

「で、何の用だ?」

「お願いがあります。救助者の聴き取りです。僕達よりも『闇影のダン』さんの方が安心してもらえると思いますので」

僕達の年齢は10代半ばだ。救助者達は10代半ばから30代。

頼りなく感じるだろう。

対して『闇影のダン』さんは斥候装備を解けば傭兵団服である。

傭兵団服は我が国の象徴の一つ。安心してもらえるだろう。

「ああ?…あー了解した。まぁ、これも任務か。茶の1杯でも出してくれよ」

「ありがとうございます。お茶、喜んで準備させてもらいます」

『闇影のダン』さんは救助者達をみて、状況を察してくれたのだろう。

「ああ皆さん、災難でしたね。俺はレオパルドン傭兵国家所属…」

救助者達に己の身分を説明し、所在地や名前等の聴き取りを開始した。

良い茶葉を使ったお茶を飲んでもらおう。


『闇影のダン』さんにお茶を出し、僕が一息ついたところで、

「愚弟、返り血が気持ち悪いわぁ。着替えさせなさぁい」

「愚兄、汗が気持ち悪いですの。着替えさせるのですわ」

「愚友、着替え」

お三方からのいつもの・・・・命令を頂戴した。

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