第5話 3人のディナー

4人揃って自宅に帰り着く。森からまっすぐ直帰である。

愚かなる僕はディナーの準備。

早朝に仕込んだ料理を温める。

サラダにパンに野菜スープ、メインは一角兎のステーキにした。

任務の後だからちゃんとタンパク質を取らないとね。

僕達はまだ若い。栄養はしっかりと。

準備の間、お三方はお風呂に入ってもらっている。


配膳が終わる頃、お三方がお風呂から上がってきた。

4人でテーブルに着き、料理を口に運ぶ。

僕達の好きな、蜂蜜酒を合間にはさみながら。

今日は4人全員での任務だったので、あまり会話は無い。

普段の別行動の時は、報告もかねてぽつぽつと会話する。

食事が終わり、食器を洗い、僕の本日の仕事は終了である。

任務のあった日は、お三方の夜のお着替えは免除となっている。

お三方は遅くまで蜂蜜酒とおつまみをリビングで楽しむからだ。

「では、お風呂いただきます」

一礼し風呂場へ。任務後のお風呂は最高だなぁ。

明日の朝食はオムレツにして…雑貨屋に行って…ギルドに行って…

ゆっくり明日の予定を立てながら、じっくり湯に浸かり体を温めた。

ああ、気持ちいい。

湯から上がり、寝巻に着替える。

前ボタン5つに脛丈長さの1枚着。着やすく、脱ぎやすい。

前世の記憶に当てはめれば、ビジネスホテルの寝巻と同じ作り。

これもお三方から頂戴したものである。


リビングにて就寝の挨拶をしようとしたら

「愚弟、軽く飲んで寝なさぁい」

と姉君様より少量の蜂蜜酒を頂戴した。

任務があった日は、お風呂上りにどなたかが寝る前に1杯進めてくれる。

愚かな僕に、ありがとうございます。一口にいただいた。

「明日はオムレツの予定です。それではお三方、おやすみなさい」

朝食の予定を伝え一礼。

自室のベッドで横になる。ああ、今日も良い日だった。ぐっすり眠れそうだ。


… … …

「飲んだわぁ」

「飲みましたの」

「飲んだ」

「ウッドリア、1時間後には効いてるかしらぁ?」

「問題ない。アイリスで検証した。ビンタしても起きなかった」

「…聞いてないんだけどぉ。一昨日なぜか頬が腫れてたのそのせいねぇ」

「アイリス姉さま。理由があるのですわ。姉さまが愚兄に一番背が近いですわ」

「まぁ、いいわぁ。次はイルミナちゃんでお願いねぇ」

わたくしの場合はビンタ以外でお願いしますの…」


「今日のお着替えの時の愚弟の視線は良かったわぁ。ほんの少しの劣情が混じっててぇ。やっぱり胸の時が一番感じたわぁ。視線もぉ私もぉ。でもぉ、体が触れてる事実もぉ、たまらないわよねぇ。いずれ、お互い視線を絡めたまま、溶け合うわぁ」

「姉さま、目が淫欲に染まってましたの」

「それでも視線は愚友に固定」


「アイリスは現実と妄想を行ったり来たりだったわねぇ」

「ですわ。今回は足を拭いてもらっている時に『ああ、ここで踏みつけたらどんな顔をするんですの?』と思ったんですわ。ふふっ、とても良かったですわ。目の前の愚兄は情欲を隠した冷静の目で、妄想の愚兄の目は苦悶と悦楽でしたわ。いずれ、現実であの顔をさせるんですの」

「愚友を見てるのに見てない。面白い」


「ウッドリアは背中がよね。今回こそ理由がわかるといいわぁ」

「リア姉、理解に努めるですの」

「うん、説明する。まず君たち同様に、愚友の親愛に欲情が紛れる顔と目はとても好き。そこに背を向ける。それまであった愛しい顔が無くなる。とても悲しい気持ちになる。しかし、しかし!それは一瞬!すぐに愚友が髪を束ねる!背中を拭くため!この瞬間確かに背中から愚友の存在を感じる!高揚感!しかしこれはまだ序の口。背を向けるということは何をされるか予測できない!心の準備など意味をなさない、全ては突然!うなじ!肩!背中!腰!お尻!どこかに触れられるたび高鳴る!これがもしタオルでなく爪なら!?鞭なら!?ナイフなら!?愚友自身なら!?痛み!快感!交互に続け…て…」

「途中で力尽きたわぁ」

「理解できませんですの」

「いずれ、実演する」


「ところで思うんですの。愚兄は股まで拭いてくれますの。気付かないんですの?」

「精神的には童貞だからぁ分からないんじゃないかしらぁ」

「精神童貞」


「さてぇ、そろそろいい時間ねぇ」

「パーティ任務後のディナーですわ」

「寝てるけど寝かさない」


「愚弟、私達の愛がなにか気付かない愚かな弟」

「愚兄、私達に穢されたことを知らない愚かな兄」

「愚友、僕達の本当の願いに気付かない愚かな友」


あと2年…体だけで我慢してあげるわぁ

2年経ったら心も穢しますの

2年後、僕達は本当の家族に


『逃がさない』

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