第21話 適正者 その②

ヒカリは体育館二階の更衣室で着替えながら、昨日の出来事をかろうじて思い出していた。

あのあと、確かレニアによって烈人は追い出され、自分とレニアのみが秘密基地に残った。

「ヒカリちゃん。どうせあなたのことです。次烈人

 君が押されたら、自分から助けに行こうとするで

 しょう。なのでその前にあなたに釘を打っておき

 ます。」

そのあと、暫くの沈黙の後にレニアは言い放つ。

「……あなたに適正はありません。正直、自分から

 巻き込んでおいてなんですが私は烈人君には無理

 して欲しくはありません。そしてそのためにヒカ

 リちゃんにも傷ついて欲しくは無いんです。」

流石に、キレた。

これかとばかりにキレ散らかした。

無理をさせないために自分が傷つくならばまだ理解はできる。だが、その為に自分も何も出来ないというレニアの甘さに、そして揺るがず、通してきた意志が全て否定され、自分には何の力もないという事実に。

(……適正なし、かぁ。)

「どーしーたのっヒカリィー?」

「……まさか、ジャージの着方わすれた?」

「いや違うからぁ!」


女子の体育の内容は跳び箱とマット運動だった。男子とは思春期的な理由で一緒にできないので、男子は校庭で100メートル走らしい。

ヒカリは跳び箱の順番を待つ間、校庭に目を向ける。

100メートル走を走っている男子の姿がちらほら映っては消える。恐らくその中には烈人もいるだろう。

(烈人……アンタに助けてもらったのに、何も出来

 ないなんてーー)

「次、ヒカリさん」

「は、はい!」

一瞬の思考を無理やり止め、息を整えてラインに立つ。

「よーい、スタート!」

先生の合図とともに走り出す。

そのまま勢いを強め、踏込板を全力で蹴り上げる。

結果、飛んだのは10段までだった。

いつもならばもう少し飛べただろう。

(心の力が……自分に繋がるーー)

はっ、とヒカリは首を左右に振る。

まさか自分がそんなことーー

そのとき、校庭を極大の光が包んだ。

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