第17話 ヒーローは1人はキツイって

「これでよし、だな。じゃあ後は……」

「あ、あのっ!」

帰還行動に移ろうとしたバーンレッドを、1人の少女が呼び止める。

「あ、ありがとうございますっ」

「え?あぁ、」

それは、先程身を挺して守った少女だった。

「私、霧崎鈴音きりさき すずねと申します。そ、そのありがとうご

 ざいました!」

鈴音と名乗った少女は深々と頭を下げた。なんというか、一つ一つの所作が細かく、そして丁寧the・お嬢様みたいな感じだった。

次々と拍手が重なる。

そうだ、ここは人前だ。あまり長居は禁物だ。

そんな事を今更思い出し、少し焦る。

「いや、礼を言うのはおr……ん゙ん゙っ、わたしじゃ

 なくて、君を守った少年の方だと思う。」

そう言って、烈人がいたところを指差す。

だがそこには誰もいなく。

「あ、あれ?あのお兄さんは?」

その隙に飛び去っていった。


「はぁァァァ……危なかった……」

転移装置(祠のよくわからないヤツ)で家に転移した後、変身を解除する。

そして、手のひらにはマテリアルコアが2つ。

一つはバーンレッドに変身するためのフレイムのマテリアルコア。そしてもう一つは、2つの人の模様が刻印されたマテリアルコア。

「初めて使ったけど、ちゃんと使えてよかっ

 た……正直、一か八かの賭けだったし……」

そう。烈人は先程、人前で変身できないため、このマテリアルコアを使って窮地を脱していた。

一番最初に戦ったゼクリフォスーー

その能力は「分裂」。

自分の命令をこなす分身を作る能力である。

そして、レニアがそれを回収、錬成したのがこのマテリアルコアである。

このマテリアルコアの能力で時間を稼いでいるうちに変身出来たのである。

「ってかレニアはどこにいったんだ?」

「さぁ、わからないけど」

「だよな……ってヒカリ!?」

思わず受け流そうとしたが、いつの間にかヒカリが部屋にいた。

「ど、どうやって」

「烈人が帰ってると思って寄ったらいなくてそのま

 ま居たら急に出てきてビックリしたのよ」

「さらっと人んち上がんなや!」

「いつもじゃない」

「た、確かに……」

最早慣れつつあるヒカリの瞬間移動に、烈人は言葉を無くした。

「あ、そういやレニアは?」

「え?知らないけど?」

そこはヒカリも知らないのか……と心でツッコんでいると、1枚の紙切れが目に入る。

「ん……?なんだ、これ」

その紙切れを拾い裏返すと、達筆(笑)な字でこう書いてあった。

『秘密基地建造中です。錬成が終わったら帰って来

 ます』

「……秘密基地?」

「……秘密基地」

二人揃って何度か言葉を反芻し、顔を見つめ合う。

そして暫く経ってから二人同時に言葉を発した。

「「……馬鹿なのか?」」

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