第15話 2人目の適合者

「2人目、かぁ」

烈人は考えていた。

確かに前回の戦闘では自分の心の迷いで追い詰められてしまった。だからこそ、心の迷いを消さなければならないし、そういうときのための2人目が必要になってくるだろう。

だが、2人目などそうそうみつかるのだろうか。

そして、彼らは知ることになる。

2人目って、簡単に見つかるんやで、この世界。


「烈人。一緒に帰ろ?」

「え、今日ヒカリ部活は?」

「え?……あ、忘れてた。ごめん烈人ありがと!」

という次第で、週に一度だけの1人帰宅タイムである。

「1人になると、色々思い出すな。」

思い出せばいろんなことがあった。

突然自称異世界から来た天才美少女を窓から投げ飛ばし、その日のうちにバケモノが現れ、幼馴染が誘拐され、助けるために変身したかと思えば何故か女になっていた。

「いやまともな記憶ねぇな!?」

自分のここ数日の記憶の濃さに絶望していると。

ピリリピリリピリリピリリピリリピリリ!

ザックの中に入っているマテリアルレイカーがアラームを鳴らす。

「このアラームって、ゼクリフォスか!」

その時だった。

『誰か、助けて、っ!』

短く、最悪な悲鳴が烈人を突き動かす。

「誰か襲われてるのか!?」

その声を辿って行くと、ショッピングモールからけたたましい悲鳴が聞こえた。

「あそこか!」

烈人はそこへ向かいながら、小型通信機を耳に装着しレニアに通信をかける。

「レニア!レニア!聞こえるか!?」

『…………』

応答が無かった。

おかしい。いつもならあちらから通信が来るはずなのに。

だが、通信出来ないからとクヨクヨしていられない。

ショッピングモールに到着すると、入口は人でごった返していた。

「入口は駄目か……なら!」

駐車場を半周して、後ろに回る。

そこにあったのは商品用搬送口。

「行くしかないよな……よし!」

搬送口を突っ切り、奥へ入るが通路を行ったり来たりしてしまう。

「どこかに扉はないのか!」

広大なバックヤードをあちこちを走り回り、遂に扉を見つける。

勢いよく開くと、丁度ゼクリフォスから最も近い場所を引き当てたらしい。

近くに逃げ遅れたであろう客の姿と、それに近寄るゼクリフォスが目に映る。

『我ガ愛スルモノハ「ロリ」ノミ!「ロリ」コソ至 

 高、「ロリ」コソ神ヨ!』

(また思想強い奴が……)

息を潜め、柱に身を隠してみていると、1人の少女が前に出た。

背丈は低く、少女とは呼ぶには難しい身長。

つまり、格好の的である。

「私を好きにして構いません!ですが、その代わ

 り、ここにいる皆さんを傷つけないでくださ

 い!」

(っ、不味い!)

『ホォ、良イ心意気ダ、神ナルロリヨ。デハ、ソノ

 エネルギーヲイタダクゾ!』

気が付くと烈人はゼクリフォスの攻撃から少女を庇っていた。

『ナニ!?』

「いくらロリコンでも、手を出すのは駄目だ、ろ

 ッ!」

ゼクリフォスはその大きな腕を振り回し、烈人を突き飛ばす。

「ぐぁっ!」

「お兄さん!」

グフフフ……と悪役の笑みを浮かべながらゼクリフォスは少女に一步、また一步と近づいていく。

(マテリアル、レイカーは……)

烈人は視界の中から必死にザックを探す。

ザックは数メートルはなれた場所にあった。

だが、ここに人がいる以上、まともに変身できるはずがない。

ここに来るまでに時間はあった。だが、何故変身し忘れたのかを悔いている時間はない。

(思考を回せ、回せ、回せ!)

今できる最善策を全力で見つけるしかない。

『サテ、ソノエネルギー、イタダクゾ!』

「っ!」

(これだ!)


ゼクリフォスが少女に手を伸ばしたその時

「うぉぉぉぉ!」

横から声が聞こえた。

先程ゼクリフォスが突き飛ばした、烈人本人が誰かが落としたであろう杖を持って突撃するのが見えた。

『シツコイゾ、貴様!』

振り下ろされた杖をあっさり折り曲げ、烈人を再び突き飛ばす。

だが、烈人は諦めず、再度突撃する。

が、やはりあっさり突き飛ばされる。

「う、うぉぉぉぉぉぉ!」

『ッ゙!シツコイ、シツコイゾ貴様ァァァ!』

ゼクリフォスが烈人を殴り飛ばす。

そして、まともな動きが出来なくなった烈人にゆっくり近づいていき、腕を振り上げる。

『コレデ終ワリダァァァァァァ!』

「ッ」

「お兄さんっ!駄目っ!」

少女の静止も虚しく、ゼクリフォスの腕が振り下ろされーー

「ちょっっっとまっっったぁ!」

舞い降りたのは焰の渦柱。

その渦がゼクリフォスの腕をはじき飛ばす。

『グゥッ!貴様ァ、ヨクモ我ガ腕ヲ!何者ダァ!』

焰の柱が形を成す。

そこにいたのは、紅き鎧を身に着けた、1人の戦士。

「俺の名はバーンレッドだ!」



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