第11話 学生⇒変身ヒーロー

「そんな怯えてると逆に疑われるわよ、烈人」

昼休み、1人怯えながら席に座っている烈人に半ば呆れながらヒカリが話しかける。

「いやだってさぁ……」

「まぁ、気持ちはわからなくもないけど、余計怪し

 まれるって。でも変身すると女の子になるんだか

 ら気にすることないわよ」

「そ、そうかなぁ……」

「そうそう。気にしない気にしない……あれ?」

ヒカリが烈人の右腕に視線を移す。

そこには今朝まであったエレメントレイカーがなかった。

「あの右腕のやつは?」

「え?あぁ、エレメントレイカーはザックの中。

 まだ調整中だけどいつでも変身できるようにっ

 て」

そういうと烈人はザックを少し開ける。

その中には今朝見た通りのエレメントレイカーが入っていた。

「確かに入ってるわね……というかそんな毎日毎

 日ゼクなんたらも襲ってこないでしょ」

「そう願いたいよな……」

まぁ案の定というかお約束というか。

こういう台詞のあとはこうなるべきというか。

当たり前のように再び閃光が街を包んだ。

ピリリピリリピリリピリリピリリピリリピリリ!

それと同時にアラームが鳴り響く。

アラームというよりガラケーの着信音だという意見があるだろうが、異論は認めない。

「きゃぁぁぁぁぁ!」

「た、助けてーーッ!」

聞こえたのは女子の悲鳴。

どうやら、校庭でスポーツをしていたときに襲われたのだろう。

「な、なんだあの化け物は!」

「女の子たちが!」

「芽郁!柚子!」

次々と生徒が窓にあつまり、絶叫する。

「くそ!誰か!助けてくれー!」

こうなれば、こなければならない。

一方、烈人バーンレッドは。

「くっっっっっそぉ……」

廊下で絶望していた。

いきなりアラームが鳴ったため、驚いてマテリアルレイカーを抱えて廊下に逃げ込んだのだ。

「なんで……なんで来るんだよ連続で……!」

「ま、まぁ、こればかりは私達も手を出せない

 し、ね?」

「ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙……」

その時。

『烈人君、ゼクリフォスが現れました!場所はすぐ

 そこです!出撃を!』

小さなレニアが窓枠に現れ二人に叫んだ。

「それどうやってんの!?」

『え?あぁ、烈人君の腕時計をちょちょいといじく

 って……』

「オメェなんちゅうことしとんやゴラァァァ!せっ

 かく誕生日にヒカリからもらったものやぞ!」

「べ、べべ別にありがとうとかいらないんだから

 ね!……まったく……」

「いや、今ツンデレ発動しないでくれ戦う前なのに

 疲れる……」

烈人はしぶしぶマテリアルレイカーを装着しようとする。が、レニアがそれを止める。

『待ってください、烈人君』

「な、なんだよ……まだいうことがあんのか!?」

『いえ……その、実は……』

「早く言えこのロリコン」

『マテリアルスーツが今調整中でして……出撃と言

 ったものの、まだ出来ないんです。』

「嘘だろ!?どうするんだよ、」

「……レニア、それ、どのくらいかかるの?」

『……7分、いや、5分もあれば余裕で』

「分かった。」

そういうなりヒカリは廊下を駆けていく。

「お、おい!ヒカリ!」

「私が時間を稼ぐ!そのうちに早く終わらせなさ

 い!」

「そんな無茶……!」

「分かってる!でもこれ以外にやりようがない!」

ヒカリは階段を飛び降り、すごい速さで生徒用玄関から校庭まで突っ切って行く。この速さにはかのウサイン・ボルトも驚くだろう。

「……あの野郎!」

『でも、時間を稼いでくれるのはありがたいです。

 烈人君、今のうちに最上階へ!指定した座標にデ

 ータを送信します!』

「わ、分かった!」

そのまま烈人は階段を登っていく。

3階から4階へ。

更に階段を登っていき、最上階の扉までたどり着く。だが、その扉には侵入防止の為の南京錠がかかっていた。

「そ、ういや……っ゙!カギ、しまっ……て!」

『大丈夫です!腕時計の細工にピッキングも入れて 

 おきました。南京錠に向かってかざしてくださ

 い!』

言われた通り腕時計をかざすと、時計のカバーが開き、分針が南京錠の鍵穴へと入っていく。

そのうち、カチャンと気味いい音と共に南京錠が落ちる。

「よし、あいた!」

扉を開け、屋上の座標へと向かう。

「ここでいいのか、レニア!」

『そこで大丈夫です、あと少し、あとはこのデータ

 をまとめて……飛ばす!烈人君、マテリアルレイ

 カーを掲げてください!』

ピィンという音とともに細い光が掲げられたマテリアルレイカーに落ちていく。

その光はマテリアルレイカーの表面を焼くかのように広がり、その色を変えていく。

以前までの色褪せた灰色ではなく、燃え盛る情熱の如き朱に。

「よーし、これでいいんだな!」

『はい!それでは改めまして、出撃です!』

マテリアルレイカーを右腕に装着する。

〘マテリアルレイカー!〙

どこぞの変身ライダーの変身アイテムのように機械に収録された音声が流れ、待機音が再生される。

「おい、なんだこれ」

『気分が上がるでしょう!』

もうどうでもよくなってきたな……

マテリアルレイカーにバーンレッドのマテリアルコアをセットする。

〘バーンレッド!〙

再びの音声とともに待機音が猛き炎のようなものへ変わる。

「いくぞ……フレイム、クロスッ!」

セットしたマテリアルコアを左手で以って押し込む。

〘Flame 01 Red Transformation Completed〙

やたら発音のいい英語音声が再生されたと同時に、烈人の身体をエネルギーが包む。

マテリアルレイカーから放たれたのは焰。

それは烈人の身体を飲み込み、身体を変えていく。

華奢な身体に髪を赤く燃やし、焰は焼け走るように身体を走り、ボディスーツを形成し、焰の渦は頭部、肩部、腰部、脚部のアーマーへと姿を変え、緩やかな胸部に最低限しか守る気が感じられないプレートを装着する。


それは焰の渦。

彼の者を皆が呼ぶ。

その焰は人を成し、そして敵を燃やして悪を討つ!

その名はーー


「ちょっっとまっったぁ!」

屋上からヒカリを追い詰めたゼクリフォスの前に飛び降りる。

『コ、コノエネルギーハ!ソウカ、貴様ガ!』

「そうだ!俺がバーンレッドだ!」

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