第12話 ヒロインは身体能力高いほどいい
階段を飛び降り、靴を履き替えぬまま生徒用玄関を飛び出すは黒いツインテール。
彼女ーー神無月ヒカリは武道の究極を求める由緒ある結月家の中でも特異な存在だった。
彼女の身体能力は生まれつきである。
つまり、彼女は初見の人の名前を殆ど第一印象でしか覚えられないなどの記憶力がカスカスな代償として、高い身体能力を得ているいわばフィジカルギフテッドである。
勿論、勉強を覚えるのでさえ苦労しているのに、多くの技を必要とする武術を覚えられるわけもなく、父親に見限られ、用無しとして神無月家の養子にむかえられた。
だが、それでも。烈人は近くにいてくれた。
なら、この身体を彼の為に使えるならばーー
「た、助けてぇぇぇ!」
『フハハハ!我ハ求ム!膨大ナ力ヲ!ソノ為には
「スポーツ女子」ノエネルギーコソ至高ヨ!』
ゼクリフォスがその尻尾で女子生徒を拘束する。
『サァ、ソノエネルギーヲ寄越セ!』
「待ちなさい!」
『ヌッ!』
驚いた隙を狙い、尻尾に飛び蹴りを入れる。
『ヌグォッ!』
飛び蹴りのダメージで尻尾を緩めたのを見逃さず、拘束されていた女子生徒を抱きかかえる。
「大丈夫?」
「え……あ、はい……ありがとうございます」
女子生徒を地面に立たせると走って逃げていった。
なんかめっちゃ顔赤かったが、気にしてはいられない。
『貴様ァ……「スポーツ女子」デハナイヨウダ
ガ、中々ナエネルギーヲ持ッテイルヨウダナ。
アマリ気ハ乗ランガ、貴様ノセイデ折角ノ「スポ
ーツ女子」ヲ逃シタノダ。セメテ貴様ノエネルギ
ーヲ吸収シテヤル!』
「そんなのお断りよ!」
突き出された尻尾を躱さず飛び乗る。
2つ目の尻尾を飛んで躱し、空中一回転からの逆立ち着地。
そこから再び襲いかかる2つ尻尾を両手を捻りながら更に飛び、2つ目の尻尾を飛び越えながら勢いを空中スピンで勢いを付けながら蹴りを側頭部に食い込ませる。
「はぁぁぁぁぁ!」
だが。
「ッ、硬い……!」
蹴りの勢いが通らず弾き飛ばされる。
『ソノ程度、効カヌワ!』
(しまった、躱せない!)
受け身をとれず巨大な右腕のストレートをモロに食らってしまう。
「ぐッ……ぁ゙、」
木に打ち付けられ、地面に倒れ込む。
無駄に頑丈な身体のおかげか、骨も内臓も壊れてはいない、とは思う。
だが、痛いものは痛い。
意識がはっきりしているのに、身体は言うことを聞かない。
(ク、そ……まだ、死ねない……)
『少シハ驚カサレタガ、ココマデ我ヲ戰ワセタノ
ハ貴様ガ初メテダ。デハ、ソノエネルギーヲ頂
クゾ!』
(っ、烈人……!)
その時。
「ちょっっとまっったぁ!」
舞い降りるのは炎獄の焔。
『ナ、何ダ貴様ハ!コ、コノエネルギーハ!マサカ
貴様ガ!』
「そうだ!俺がバーンレッドだ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます