第9話 戦後処理と説明って面倒くさいよね

「……ん、」

目を覚ますと、そこは幾度となく見た天井だった。

「烈人!」

ベッドに横たわったままの烈人の身体をヒカリが抱きしめる。

「ヒカリ……そうだ、身体は!?」

「私は大丈夫。……それをいうなら烈人はどうな

 の?」

「え……いや、大丈夫だとは思うけど。」

ヒカリ曰く、あの変態爬虫類を倒してすぐに倒れ、ヒカリ達が運んでくれたらしい。自分の記憶には全くないのだが。

「そういやレニアは?」

「え?あぁ、ほらそこに。」

ヒカリが指差した方を向く。

だが何もない。

「え?どこ?」

「ほら、下、下。」

下を向くと、いた。

確かに床に頭が刺さったレニアだ。

……床に頭が刺さったことはもう触れないぞ、俺は。

レニアを引き抜き、床を直させてから事情を聞く。

「……それで、この一件の騒動はどういうこと

 だ?ちゃんと説明してもらうぞ、レニア。」

「分かっていますとも。と、言うわけで先ずはこれ

 を。」

プロジェクターのような半球の機械を床に置く。

操作すると、青白い光が空中でディスプレイになった。

「まずはゼクリフォスからです。彼らが人の活動力

 の源たる、精神エネルギーなどを狙っているのは

 理解していますね?」

「ま、まぁ。」

「彼らはそれ以外にも、人の容姿などからもエネル

 ギーを吸収できます。服装もファッションつまり

 モチベーションに繋がるものですからね。」

「それで?そのゼク……なんたらの目的ってある

 の?」

ヒカリの問いにレニアは機械の操作で答える。

「これを見て下さい。」

「これは……地球?でも色が……」

写し出されたのは地球。だが、明らかにおかしい。

色がない。いや、無機質な灰色に変色していた。

「これは、人の精神エネルギーを吸収され尽くした

 世界の地球です。」

「「!?」」

これが、人の精神エネルギーを吸い付くした世界線の地球だとは思ってみなかった。

「案外、星というものは精神エネルギーを核として

 動いているものです。この星には、まともな生命

 はおろか、植物一つありません。」

「そ、そんな……」

更に機械を操作すると、今度は烈人の右腕に装着されている、マテリアルレイカーと、変身したときに着ていたボディスーツが写し出される。

「ですが、それを防ぐ為の技術を世界の崩壊とほぼ

 同時に開発しました。それが、マテリアルレイカ

 ーとエレメンタルスーツです。」

烈人はマテリアルレイカーに目を向ける。

「これが、対抗策……?」

「確かに変身?はしてたけど……」

「マテリアルレイカーを使って変身することで、マ

 テリアルスーツを装備した、戦士になることがで

 きます。烈人君に渡したのはこれです。」

ゴソゴソとどこからともなくバーンレッドのスーツを取り出す。

「これは一番最初に開発した試作型のプロトスーツ 

 です。判別コードは『フレイム01レッド』で、名

 前の通り炎を……」

「待って。」

ヒカリがレニアの説明を遮る。

「どうしました、ヒカリちゃん?」

「ずっと思ってたんだけど、このスーツ、女物よ

 ね?」

「え?ま、まぁ」

「もしかして、最初から烈人を『そうさせる』気だ

 ったんじゃないの?」

ビックゥ!

レニアの身体が陸に上がった魚のように跳ねる。

「い、いやぁ、これには訳が……」

「へぇ……聞いてやろうじゃない」

その言葉とヒカリが裏腹にボキボキ、と拳を鳴らす。よっぽどいやだったんだな、あの長い説明。

「……わかりました。白状します。

 私はロリコンです!」

「開き直ってんじゃねぇぞボケェェェェ!」

ヒカリのジャーマンスープレックスが炸裂し、床に穴が増えたのだった。

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