第5話 ごめんね変身遅くって

凄まじい光が街を包む。

「な、なによあれ!」

「知らねぇよ!」

「づ……づぃ゙にぎでじまぃ゙まじだね……」

壁にめり込んだ状態のレニアが口を開く。

「なっ!アンタなんか知ってんの!?」

「ば……ぃ゙」

「早く教えなさい!さもないと……」

「まてヒカリ!その拳を退けないと喋れないだ

 ろ!」

「確かに……そうね」

そういうことじゃねぇよめり込んでんだよ、壁に。

さもないとも糞もない程ダメージを受けていたレニアは剥がれ落ちるかの如く道に倒れ込む。

「それで、なんなのアイツ等」

「……あれは、別次元……つまり私の世界から来

 た、『ゼクリフォス』と呼ばれる存在です」

「ゼクリフォス?何だそれ」

段々ダメージが引いてきたのか、ゆっくりと立ち上がり、機械を取り出し、ボタンを押す。

その機械からホログラムが現れ、動画の様に動き始めた。

「これは……?」

「私がいた世界です。ゼクリフォスに皆殺されてし

 まいました。」

「そんな……ひどい」

「えぇ……それに彼らの言葉を聞いてみてくださ

 い。」

レニアは機械の音声ボリュームを上げる。

すると、ゼクリフォス達の会話が鮮明に聞こえてきた。

『ナァ、アノ女ハドウダッタ?』

『サイコウダッタゼ!ナンテッタッテ「ロリコン」

 ダッタカラナァ!』

『俺モ久シブリニ「ダウナー」喰イテェナァ』


……は?

「「……は?」」

「そうです。彼らはあろうことか性癖やその人のい

 わゆる容姿に関する属性や性格を喰らうのです

 ッ!」

「いやただの変態じゃないの!」

「へ、変態だ……」

「変態ではありません!ゼクリフォスです!」

違う違うそうじゃそうじゃない

「……か、仮にそれらを喰われたとしてさ、どうな

 るの?」

「死にます。精神的に」

「なんでさ」

「だって心の活力だった性癖とか、自分と認識され

 るための性格とか容姿とか喰われると二度とその

 癖や性格に戻らないどころか、心が死んで実質植

 物状態になるんですよ!これほど恐ろしいものは

 ありません!」

レニアが機械を操作すると、場面が変わり、何人かが倒れ込んでいる映像が流れる。

「これを見て下さい!この目!この顔!生気ないじ

 ゃないですか!」

確かにその人は見たことがない程顔がやつれ、目も闇のように深い黒に染まっていて生気を感じられなかった。人ってこんな顔出来んだな

「で?こいつ等が来たってこと?」

ヒカリが聞き返すと、待っていたかのように笑みを浮かべながら先程烈人に着けようとしたバイザーを二人の前に出す。

「えぇ。ゼクリフォス達には現代兵器は全く通用し

 ません。ですが、この『マテリアルレイカー』を

 装着し、変身すれば話は別です。」

「変身〜?」

ヒカリが訝しげな表情でバイザーを見つめる。

「えぇ、変身です。この『マテリアルレイカー』は

 装着者のイメージを具現化させ、それを纏って戦

 うことが出来るのです!どうです、すごいでしょ

 う!」

えっへん、と偉そうなポーズをとるレニアを横目に烈人とヒカリは顔を合わせる。

「……どう思う?ヒカリ」

「ただの変質者……っていいたいところだけど、こ

 の光景が現実だし……」

ドゴォォォン!

爆発音が鳴り響く。

「な、何!?」

「思ったより早いですね……説明は後です!まずは

 転移します!」

レニアが機械を操作すると、三人は光に包まれた。

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