第14話きっかけ

「そろそろ見ごろになるね」

僕は、庭の花を見ながら笑っていると、後ろから僕を見た生徒が噂しているのが聞こえて来た。

「あれ、あいつだろ?英雄をぼこぼこにした庭師って」

そんな声が聞こえる。


「当たり前です」

庭の確認をしていた僕に、リーンが近づいて来て、僕の手を取る。

「私の旦那様ですから。皆にもっと見てもらいたいくらいです」

そう言って笑うリーンは本当に綺麗だった。


その姿を見た数人の時が止まっているのが見える。

まあ、リーンは美人だから。


そんな事を思っていると。

少し暗い顔をしたミーアがこちらを見ているのが分かった。


何かあったのかな、、いや、シャイの事か。

派手な事をやってしまったからね。

ちょっとだけ、やってしまった事に恥ずかしさを感じながらリーンの手を握り返すのだった。





「ねぇ。知ってる?入り口にある、芝花、すごく綺麗でしょ?」

「うんうん。雑草と思えないよね」

「あれね、あの花の前で、告白して成功したら一生幸せに過ごせるんだって」

「えー!それって憧れる!」


そんな話が学園の中で流れて行くのを聞いて僕はなんとも言えない気持ちになるのだった。


告白スポットになってしまった芝花を確認しながら、周りの花も見ていると。


「あの、、ちょっとお願いがあります」

ある日の午後。

リーンが休憩していた僕の横に座って来る。

「ん?授業はいいのか?」

「今は、休憩中ですから大丈夫です。それよりも」

リーンの顔が少し赤い。

ああ。

「お腹減った?」

顔を真っ赤にしてうつむくリーン。

竜は、人間の食事も食べれるけど、本当にお腹を満足させようとしたら、一個しかない。

「はい」

こそっと、少し黄金色に光る実を取り出すと、リーンに手渡す。

「ありがとうございます!」

満面の笑みで、実をかじるリーン。

すごくうれしそうだ。


「あら、何を食べているのですか?」

「ナゼ、ワカルのですか?」

「未来の旦那様の居場所くらい、なんとなく分かりますわ。それと、リーン様から盗む気はありませんよ」

レティシアが笑って立っていた。

ゆっくりとリーンが座っている反対側へと座るレティシア。

少し警戒しながらも、果実をかじるリーンを見ていると、本当にお腹が空いていたんだなぁと思う。

「リーン様と、エル様は竜族なのですよね?」

リーンがむせる。


僕がレティシアを見ていると。

「誰からも聞いてはいません。というか、誰も知らないと思います。ただ、神龍剣は、竜のみ使えると、伝承があったのを思い出したのです」

違うと思う。最近、レティシアはよく図書館へと入り浸っている。


調べたな。


3人で並んで座っていると。

「レティシア嬢?」

「あら。アルゼン男爵様の所の」

「第4王女様が、なぜこんな所にいるのですか?」

「この学校に入学しただけですわ。有名になっていましたのに、知らないのは」

「ああ。私は、少し休んでいたので、知らないのですよ」

誰だ?

「アルゼン男爵家の、3男、ゲフェルド様です。爵位継承権はありませんが、昔から私に婚姻の申し込みを良くしていたのです。全て断っていましたが」

そう思っていると、レティシアが耳打ちをしてくれる。

「見知らぬ男だな。王宮では会った事無い奴だが、まさか平民か?」

「私が仲良くする相手が、平民だと何か不具合があるのですか?」

「我々は、別の生き物だろう。平民とか、ありえん」

見下した目をしているゲフェルド。


「私は、私の好きな人と一緒に過ごします。それを、あなたにとやかく言われる事はありません」

きっぱりと言い切るレティシア。


「そうか。ならば、、」

目の前に、白いハンカチが投げられる。

「決闘だ!平民!取れ!」

ああ。手袋じゃないんだ、、手袋?


「面倒ですから、辞めた方がよいかと」

レティシアが困った顔をしている。

「もし、僕が勝ったら、レティシアにつきまっとたりしないと約束してくれる?」

面倒そうな奴だから、なんとかしてあげたい。

「それは、、、」

「それとも、負けるのが怖い?」

「ありえん!平民に負けるなど!よかろう!ならば、私が勝ったならば、下賤な平民風情が、王族などに、二度と近づかないと言ってもらおうか!」

リーンが少しだけ体をこわばらせる。


「いいよ」

僕はそれだけ言うと。ハンカチを拾う。

「時刻は、今から3日後!場所は、ここで行おうではないか!」


胸を張るゲフェルドに、僕は苦笑いを返していた。




「あれは、、第4王女か、、偽の聖女が、、なぜこんな所に。ああ、王宮から捨てられたと言う事ですか」

ニヤリと一人の男が笑う。

「やっと、やっとです」

小さな光る石を握りしめる。

「やっと」

その男の顔は、耳まで裂けているように見えた。

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