第11話決意の王女

「あらためて、お願いいたします」

ゆっくりと挨拶をする、女の子。

「国王の4女で、レティシア・テラ・カライドと申します」

「私の母は、アレスお父様の従妹に当たるのです」

何、それ、、

「レティ様は、王族の血を強く引いておられるため、聖霊術とよばれている術を扱う事が出来るのです」

「ラッテルさんの口調が」

「私は、庭師であると同時に、王族の護衛隊でもありますから」

はは。もう笑うしかない。

「で、聖霊術と言うのは、、」

「癒しの水を出したり、雷を生み出したり出来る術です」

それ、、、もしかして、、

「もしかして、、雷木があるのですか?」

僕は思わず聞いてしまう。

「流石ですわ!私の話を聞いて、雷木が出てくるなんて!」

キラキラした目で僕を見て来る王女様。

「私の守護器は、雷木なのですよ」

わくわくした目でこちらを見ている。

「もちろん、魔法も多少はたしなんでいますけど」

「これから、よろしくお願いいたしますわね。エル様」


綺麗な金色の目が。

あまりにも整いすぎた顔が、にっこりと微笑むのを見て顔が赤くなる。



「で、、、、仕事に行って、女性を連れて帰るのですか?」

リーンが、すこぶる機嫌が悪い。

なんで、王女様が、僕たちの家に来るんだよ。

しかも、ここで暮らすとか。


「お嬢様のための私でもありますから」

にっこりと微笑むララノア。

「よろしくお願いしますね。ララノア」

「もちろんでございます。お嬢様」

「ララノアは、城のメイドの中で、1,2を争うほどのメイドなのですよ」

それって、国内最強メイドなんじゃあ。

「戦闘は一切できませんが、実の周りの世話は、私にお任せください」

改めて、頭を下げるララノア。


「で、あなたは、どういう理由で、エル様に近づいたのですか?」

「エル様とは、婚姻や、儀礼の関係なく、子供を作れと言われています」

姫様の目が、、笑っていない。

「だから、私。第4王女なのです。婚姻の話すらなくこの年まで過ごしてしまった、売れ残りの」

今、レティシアは、ドレスを脱いで、僕たちと同じような普段着に着替えている。

可愛いけど、どこか張りつめた空気を纏わせて。


「王女が、冒険者学校へ行くと言うだけで、気が付くでしょう。私は、王族の中で異端なのです。むしろ、生まれなくて良かった子なのです」

レティシアは、目をそらさない。

「私の母は、お父様が眠っている間に襲い掛かり、私を身ごもりました。自分には、婚約者がいたにも関わらず」

ちょっと待って。それ、めちゃくちゃ重い話なんじゃ?


「無論、お母さまは婚約を破棄され、幽閉され。亡くなりました。王族の王女が、皇太子を襲うなど。前代未聞ですから」

「私は、いらない子なのです。だからこそ。英雄の血を、王族に取り込むための駒として、ここにいます」

それは、全てを受け入れた目。

はぁ。

リーンが本当に深いため息を吐くのが聞こえた。

「人間って、、どういう思考回路をしてるのか、分からなくなるわ」

どれだけ辛い思いをし続けたらそんな覚悟が生まれるのか。僕には分からない。

「それとも、妹の方が良かったですか?お父様の血は受け継いでいないし、まだ11歳ですが」

もっととんでもない事を言いだすレティシア。

「だから、よろしくお願いしますね」

笑うレティシアの目が、泣いているように見えたのは、気のせいだったろうか。


「あなたは、隣の部屋です!」

「このベッドは私のお金で買った物です!」

夜。誰が僕の横で寝るかで喧嘩が始まる。


僕は、何も出来ないし、何も考えたくない。

レティシアの境遇は確かに可愛そうとは思うけど、それを僕がなんとか出来るわけもないし。

僕には、リーンがいるし。

そう思うのだけど、そのリーンは、レティシアと、添い寝の権利をかけて喧嘩をし続けるのだった。


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