第5話帰郷
「エル?」
村に帰った僕を見て、持っていた荷物を全部落とす女性。
「エル!」
僕は突然抱き着いてきた、少し年をとった女性を胸で抱きしめる。
「よかった、、よかった、、エル、、、」
「ごめん、お母さん。ただいま」
僕は小さくなった母親をそっと抱きしめていたのだった。
「ほんとうに、よかった」
5年も行方不明になっていた僕を本当に心配していたのか。
食卓には、この村の主食であるイモの煮込みから、ふかし、あえ物など。
凄い量の料理が並んでいた。
「まったく、そのまま王都に行って庭師でもしてるのかと思ったぞ」
少し赤い目で笑う兄。
さっきまで散々泣いていたので、嫌味を言っても全然締まらない。
「まったくだ」
珍しく、エールを呑んでいる父は、絶対にまだ泣いている。
「本当に、、ごめん」
僕は、そんな家族の顔を見ながら、少し微笑んでいたのだった。
「まあ、、飲め」
エールを差し出してくる父親。
この村では成人なんて言葉は無い。 体が大きくなって、大人だと判断できれば、大人だ。
僕は、エールを受け取り。
一気に飲み干す。
「おまえ、、何処にいたんだ?」
そんな僕に少しびっくりした顔をする父親。
「酒、、強くねぇか?」
顔を真っ赤にした、兄と、父親の横で、僕はちびちびとエールを飲み続ける。
だって、竜酒って、とんでも無く濃いんだよ。
しかも、竜の主食でもある、黄金実は、その酒を分解してくれるから酔わないしいくらでも飲めてしまうし。
竜は、全長30メートルにもなるくらい大きいけど、竜の主食は、黄金実という果実だったりする。
そして、それは、3個食べれば、2日はお腹が空かないくらい不思議な食べ物だ。
「これは、、竜の秘宝の一つだ。魔力と大地の恵みの全てが詰まっている」
ガルドウルムは、そう言って笑っていた。
完全万能食。
手のひらサイズの果実を思い出して僕は小さく笑ってしまう。
甘くておいしいんだよな。
ただ、、絶対に人・に食べさせてはいけないと言われているけど。
今までと同じように。
畑を耕して、家族と食事をして。
時折、村の庭ともいえる庭を整備する。
そんな生活に戻って数日後。
「おい!聞いたか!」
兄が血相を変えて、家に飛び込んで来た。
僕は家で少し休んでいたのだけれど。
「とんでもない美人が、村に来たらしいぞ!」
兄の顔が、すさまじく緩んでいた。
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